東方美人

東方美人

東方美人とは台湾を代表する烏龍茶の一つです。海外でも有名で、オリエンタル・ビューティー、フェルモサ・シャンパンなどとも呼ばれています。

ここでは東方美人の特徴、名前の由来、歴史などについて紹介します。

東方美人とは

東方美人」は、台湾産烏龍茶の銘柄名です。産地は台湾北中部、桃園・新竹・苗栗で、海抜100~300メートルほどの高さにある茶畑で採れます。

海外で最も有名な台湾茶で、「東方美人」(オリエンタル・ビューティー)という名前もイギリスのエリザベス女王が名付けたと言われています。澄んだオレンジ色の水色(すいしょく…茶湯の色)、フルーツや蜜のような香り、まろやかな飲み心地から「フェルモサ・シャンパン」とも呼ばれています。「フェルモサ」は、16世紀この島を初めて見た時のポルトガル人の感嘆の声「フェルモサ!(麗しい!)」からつけられた台湾の美称です。

東方美人茶の歴史

ウイリアム・烏克斯(漢字名)は『茶葉全書』の中で、「東方美人」は台湾茶の代表だとほめたたえています。ちなみに中国では茶の本として、陸羽(中国)の『茶経』・栄西(日本)の『喫茶養生記』・烏克斯(アメリカ)『茶葉全書』が世界3大茶の経典とされています。

東方美人茶は台湾の烏龍茶の中では特殊な品目で、台湾ではこの茶をかつて「白毫烏龍」と呼んでおり、さらにさかのぼると「番庄烏龍」という名前も持っていました。ただし国際的な市場では「フォルモサ・ウーロンティ」という名をつけていました。

台湾北中部の新竹県北埔(ホッポ)は客家(はっか…漢民族。古代王族の末裔とも言われる。戦乱から逃れるために中原から南へ移住してやがて定住。地元の人ではないため「客家」と呼ばれた。台湾では多くが桃園・新竹・苗栗に住み、客家語を話す)の伝統を残す町で、この町ではかつて茶葉の生産が主要産業。日本統治下の大正末から昭和初期に茶葉は伝統的な手工業から機械化生産に移りますが、客家の姜瑞昌が北埔庄長となり茶葉産業の発展に力を尽くし、今も北埔では姜一族の家を見ることができます。

東方美人茶はまたの名を「膨風茶」とも呼ばれましたが、北埔産の茶が色艶も香りも飛び抜けて優れていたため、第13代台湾総督が日本に帰国する前に高値で大量に買いました。この話が伝わるや皆「膨風」(大ぼら)だと笑ったのですが、翌日の新聞を読んで事実であることが判明。そこで「膨風茶」(大ぼら茶)と呼ばれるようになったと言います。

東方美人茶の特徴

東方美人茶は柔らかな芽の一芯二葉(いっしん によう…「芯」とは枝の先端の芽のことでまだ葉は開いていない。この芯とその下に互い違いにある2枚の葉をこう呼ぶ)で作ります。ウンカが芽を噛むことで独特の香りや味になると言われています。

茶葉は細く、大きく曲がっていて白毫(はくごう…白いうぶ毛)があり、そのため「白毫烏龍茶」とも呼ばれます。茶葉の中には赤・黄色・白の葉が混じっています。

半発酵の烏龍茶(青茶)の中では最も全発酵に近く、紅茶に近い烏龍茶と言えましょう。

東方美人茶の現状と今後

東方美人茶の産地・北埔は昔から海外への輸出に頼っていましたが、コスト高などで次第に競争力を失い今では国内消費がほとんどになっています。また台湾では高地で作る高山烏龍茶が人気で、高度の足りない北埔地域の茶葉は競争力を失い、茶園が減っていると聞きます。

こうした中で今も高値がつく、茶の宝石とも言える東方美人茶をどう守っていくか、北埔の若い世代の茶農家に期待がかかっています。