ジャスミン茶

ジャスミン茶

ジャスミン茶は茉莉花茶とも呼ばれ、緑茶などを元にマツリカの花で香りを加えたものです。花茶の一種であり、工芸茶にもよく使われています。

ここではジャスミン茶が生まれた理由、作り方、伝説、入れ方、効能、カフェイン量、ダイエット効果、ジャスミンという植物などについて紹介します。

ジャスミン茶とは

ジャスミン茶

ジャスミン茶とは、緑茶にジャスミンの香りをつけた茶で、中国では「茉莉花茶」あるいは「香片茶」と言います。

中国茶の分類法では「花茶」の一種で、花茶とは「緑茶などに花の香りをつけたお茶」のこと。花を乾燥させたものを茶葉に混ぜたものなども「花茶」と呼びます。

中国の花茶の中で最も有名なのが「茉莉花茶」(まつりかちゃ・ジャスミンティ)ですが、花茶にはこのほか玫瑰花茶(めいくい はなちゃ・バラ茶)や桂花茶(けいかちゃ・金木犀茶)などがあります。

ジャスミン茶の製法

ジャスミン茶は、その日に摘んだ生花を、平らに並べる→積み重ねる→ふるいにかける→陰干しにするという工程を経た後、茶葉と一定の割合で均等にかき混ぜます。そのあと積み上げて置いておき、お茶に花の香りをつけます。

窨花とは

ジャスミン茶を作る工程に窨花(いんか)という工程があります。これは花を層にして茶の上に置き、その後かき混ぜて香りを均一に茶に移すことです。「二窨」とはこの工程をもう一度繰り返すこと。高級なジャスミン茶ではこの工程を7~8回繰り返します。窨の字は「薫」とも書きますが「香りをたきこむ」という意味です。

この過程で茶葉は花の香りだけでなく水分も吸収してしまいます。そこで「起花」(この工程で、数時間経過したら花を取り除くがそれをこう呼ぶ)した後すぐに余分な水分を飛ばし、茶の形と品質を安定させます。

花茶はなぜ作られたのか

花茶

中国の北方では茶は取れません。茶商人が苦労して南に買い付けにいきますが、交通の不便さ、治安の悪さ、戦乱などにより新鮮で美味しい茶はなかなか北方では飲めません。

花茶・ジャスミン茶を飲む習慣のある地域は中国北方地方、茶の取れない場所です。質の良くない茶をなんとかおいしく飲もうとして花茶は発展してきた、と考えられています。

ジャスミンとは

ジャスミン

ジャスミンはモクセイ科ソケイ属の植物の総称で、この植物は世界中で300種あります。

原産はアジア~アフリカの亜熱帯・熱帯地方で、イラン・エジプト・トルコ・モロッコ・アルジェリア・スペイン・フランス・イタリアなど地中海国家や東南アジアなどで栽培されています。

中国では花茶の香りづけの材料として蘇州・南京・杭州などで育てられています。

中国語でジャスミンは「茉莉花」と言いますが、これはサンスクリット語の「マリカー」に由来しています。 強い芳香を持ちますがこれは「ジャスモン酸メチル」といい、工業的生産法は確立しておらず自然の花から抽出し精製するしかありません。

ジャスミン茶の伝説

ジャスミン茶の名産地・蘇州の虎丘
ジャスミン茶の名産地・蘇州の虎丘。

中国でジャスミン茶はなぜ作られるようになったのか、こんな伝説が伝えられています。

明末清初(17世紀前半)の頃、蘇州の虎丘に趙さんという農民がいました。趙さんには3人の息子がいました。暮らしは貧しく、ある年趙さんはよその土地に働きに出かけました。広東で出稼ぎをして数年ごとに家に戻り、畑は残った妻と子供たちが耕していました。子供が大きくなったので土地を3つに分け、それぞれの土地には茶を植えていました。

ジャスミン

ある年趙さんは花の苗を持って家に戻り、これは南方人が好きな「香りのする花」だと言いました。趙さんはこの花を好きかどうかも聞かず、上の息子の茶畑の畔にこの花を植えました。1年が過ぎるとこの木に小さな白い花が咲き良い香りもしてきましたが、誰も興味を持ちませんでした。ある日のこと、上の息子が自分の畑の茶木に白い花の香りがついていることに気づきます。そこで茶畑全体を調べてみますとどの茶の木にも香りがついていました。

この上の息子は家族には何も伝えず、こっそりと1籠分の茶を摘むと蘇州の町に売りに行きました。すると思いがけずこの香りのする茶は町の人々の人気を呼び、あっという間に全部売り切れてしまいました。こうしてこの息子はこの年香りの茶で大儲けをしました。

この話はまもなく周囲に知れ渡り、2人の弟たちは兄のところに談判に行きました。花は父親が植えたものなのだから、兄の儲けは3人で分けるべきだと。兄弟げんかが始まり、怒った2人の弟はなんとこの香花を引っこ抜いてしまいました。

この村里に戴某という隠者がおり、村人たちの尊敬を集めていました。趙さんの3兄弟は話をつけてもらおうとこの隠者を訪ねました。すると隠者は…

お前たちは血を分けた実の兄弟ではないか。本来ならこういう喧嘩などしてはならぬ。お前たちもやがて結婚をし、人の子の親になる。こんな目先のチッポケな損得をめぐって家族バラバラになるなどもってのほかだ。

兄が香茶に目をつけ大儲けした。すばらしいことだ。なぜみんなで喜びあわない?財神菩薩様がお前たちの家の門をくぐったのだ。それなのに仲間割れの喧嘩をするとはまったく愚かな話だ。財神菩薩とは何者か?その花だ。お前たちがやるべきはこの花を育て、各自の茶畑に植えて、兄弟みなが香茶を売ることだ。みんなが大金持ちになれるだろうが。

香花が有名になれば泥棒が現れる。兄弟で交代でこれを守るのだ。もしお前たちが自分の利だけを考えてみんなの利益を考えなければ、この後どうなる?

わしのこの話を忘れないようにこの花に名前をつけてやろう。「末利花」だ。この意味は自分の利益は最後にしろという意味だ…と隠者は説くのでした。

兄弟はこの話を聞いてとても感動し、家に帰ると仲直りをして共に協力して働き始めました。やがてこの一家は年々豊かになっていきました。

その後蘇州の「香茶」は「末利花」(モーリーホア)を「茉莉花」(モーリーホア)と音はそのままに字だけ美しく変え、地元の名産となっていきました。

花茶の歴史

花茶

花茶の1つジャスミン茶には上記のような伝説があるのですが、花茶は明末清初以前、宋代にすでに香り茶は流行していて、数十種類の香料茶があったと言います。香料は茶と同様薬の一種だったということがこの背景にあるのでしょう。茶と香料は結びつきやすかったのです。やがて香料茶の多くは淘汰され、ジャスミン茶・茉莉花茶(まつりか茶)がそのうちの96%を占めるようになりました。

ジャスミン茶は初めは士大夫(したいふ…北宋以降、役人・地主・文人を兼ね備えた人をこう呼んだ)が好むマイナーな飲み物でしたが、明末から清になると商品化が始まり流通するようになって大流行します。清末の西太后(せいたいこう…清末の権力者)が好んだことでも有名です。彼女はジャスミン茶を飲むことで自分の肌がとびきりきれいなのだと思っており、他のものには飲むことを許しませんでした。外国の使節とその夫人が表敬に訪れるとジャスミン茶をおみやげとしたので、ジャスミンの花は当時「国の花」とされていたそうです。

沖縄に伝わったジャスミン茶…「さんぴん茶」

さんぴん茶
さんぴん茶。

沖縄に行くと「さんぴん茶」というお茶を売っています。これはジャスミン茶のこと。中国でジャスミン茶は「茉莉花茶」(モーリーホア茶)または「香片茶」(シアンピエン茶)と言いますが、この「香片茶」が沖縄に伝わったのではないかと思われます。沖縄は日本本土とは別ルートで中国文化が伝わっていて、ルートが違うとこんなに変化するものかという感じで本土の中国文化とは味わいが異なります。本土に伝わり日本固有の茶文化となった「抹茶」と沖縄の「さんぴん茶」…比べてみると同じ場所から伝わったとは思えないほどです。

ジャスミン茶の入れ方

ジャスミン茶(茉莉花茶)の入れ方を紹介しましょう。

ジャスミン茶の入れ方

1:一般には白い蓋つき茶碗を用意しますが、高級なジャスミン茶の場合透明なガラスの器を用意します。

2:沸騰した湯を茶碗に入れ温めた後捨てます。

3:好みの量の茶葉を茶碗に入れます。

4:まずは茶葉の香りをゆっくりと引き出せるように、茶碗に近づけて低い位置で湯を注ぎます。次に茶葉と湯を混ぜ合わせるように少し茶碗から離して湯を注ぎます。その後高い位置から一気に湯を注いで茶葉をかき混ぜます。こうして茶碗の8分目くらいの湯を注いだ後すぐ蓋をして香りを閉じ込めます。

5:少し経ってから蓋をずらして香りを楽しみます。

6:香りを楽しんだ後少し冷まして、舌の上で味わうようにしてゆっくりと飲みます。

ジャスミン茶の効能

花茶

ジャスミン茶は緑茶をベースにしていますので、緑茶の栄養効果とジャスミンの香り成分の効能の両方を得ることができます。

緑茶の特性としては茶への加工が少ないので栄養分が損なわれず、特にカテキンやカフェイン、テアニンなどを豊富に含むということが挙げられます。

このうちカテキンは大変な働き者で以下のような効能があります。

抗菌・抗ウイルス作用を持ち、活性酸素を除去する作用もあるので風邪・生活習慣病を予防することができます。

強い抗酸化作用があり、これによって発がん抑制作用、悪玉コレステロール上昇抑制作用、血圧上昇抑制作用が働いてくれます。

吸着性があるので、感染予防、口臭・体臭予防、アレルギー症状の緩和などに効果があります。炎症抑制作用もあり、花粉症などアレルギーの炎症を抑える効果もあります。

緑茶はまたビタミンA、ビタミンBやビタミンC・Eなども豊富ですが、特に多いのがビタミンCです。茶のビタミンCの特徴としては、カテキンの酸化抑制作用により熱で破壊されないという長所があります。

ビタミン以外にミネラル(カリウム・カルシウム)、食物繊維や虫歯を防ぐフッ素、降圧作用のある「γ-アミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)・GABA(ギャバ)」、悪玉コレステロール酸化防止作用のある「コエンザイムQ10」も含まれています。

緑茶の中のカフェインは交感神経に作用に眠気を防ぐことができます。また中性脂肪を分解する作用もあります。

緑茶の中のテアニンはリラックス効果があり、ストレスを軽減します。

ジャスミン茶の香り成分はベンデルアセテートと言い、リラックス効果や脂肪を燃焼させる効果があってダイエットに効果的です。

こうしてみると健康への効果が大きいだけでなく、西太后が愛した美容効果も確かにあるようです。

ジャスミン茶のカフェイン

花茶

カフェインとは、お茶やコーヒーに含まれる植物由来の塩基性窒素を含んだ有機化合物のことで、動物に対して中枢神経を興奮させるなどの作用を持っています。

カフェインは茶の木の葉やコーヒーやカカオなどに含まれており、覚醒作用・大脳刺激作用・疲労回復・ストレス解消・強心・利尿・抗喘息・代謝亢進作用などを持ちます。お茶やコーヒーを飲むと眠気が取れるとかリラックス効果があるといわれるのはこの作用のためです。

ところでジャスミン茶とはいったいどんなお茶なのか、もしかしたらハーブティの一種なのか迷う方もいるかもしれません。ジャスミン茶は一般には緑茶に茉莉花の花の香りをつけたものです。したがってハーブティはノンカフェインですが、ジャスミン茶は緑茶に含まれるカフェインと同じカフェインが入っています。

その量は一般に抽出液100ml当たり約20mgです。他の飲み物と比較すると、同じく抽出液100ml当たりウーロン茶20mg・紅茶30mg・玉露160mg・レギュラーコーヒー60mg・インスタントコーヒー60mgとなっています。もちろん茶葉や豆の量、滲出する時間によっても変わりますので、これらはおおよその目安です。

ジャスミン茶とダイエット

花茶

ジャスミン茶は緑茶にジャスミンの花の香りをつけたもので、「花茶」の中では最もポピュラーなものです。ダイエットに効果があるお茶といえば烏龍茶プーアル茶が有名ですが、ジャスミン茶はそれらのお茶ほどはダイエット効果がありません。

なお、他の「花茶」にはダイエット効果があるといわれているものがいくつかあります。

①洛神花茶…洛神は女神の名前ですが、この花茶は新陳代謝を高め、体内脂肪の分解を促進するといわれています。夏飲むとよい爽やかなお茶です。

②クコ茶…クコ茶も油脂を分解するのでダイエット効果があります。

クコのほか、中薬材料の菊花、六月雪(ハクチョウゲ)、烏梅(梅の実の燻製)をまぜ水に入れて煮出して飲みます。体内脂肪を分解し、デトックス効果もあります。このお茶にはまた目を保護する効能もあります。