黄茶

黄茶

中国茶には「黄茶」「緑茶」「白茶」「青茶」「紅茶」「黒茶」の基本6種類がありますが、黄茶はその中の一つで、弱発酵茶となります。

ここでは黄茶の作り方、種類、効能、有名な黄茶、君山銀針に関する言い伝えなどについて紹介します。

黄茶とは

黄茶(おうちゃ)とは、白茶同様、発酵度の弱い半発酵茶です。茶葉も黄色く茶湯も黄色い、というのが黄茶の特徴です。味わいとしては緑茶に似た上品な味わいです。生産量が少ない、とても貴重なお茶です。

黄茶とお茶の種類

黄茶は弱発酵茶ですが、中国茶は発酵の度合いなどによって以下の図のように緑茶・白茶・黄茶・青茶・紅茶・黒茶の基本6種類に分類されています。

お茶の種類

黄茶の製造工程

黄茶の製造工程は、殺青(さっせい 熱を加えて発酵を止める)→堆悶(たいもん 高温多湿にすること)→乾燥の3工程です。

「殺青」過程では火の温度を最初高温、のちに低温にし4~5分経って草の芳香がしてきたら完成です。

「堆悶」は「悶黄」(もんこう)とも言い、ここが黄茶づくりのポイントです。高温多湿の状態にして、茶葉の成分に変化を起こし、これによって茶葉・茶湯ともに黄色くなります。

「乾燥」の過程は何回かに分け、その際の温度は一般に50~60度です。

黄茶の種類

黄茶は黄芽茶・黄小茶・黄大茶の3種類に分けることができます。黄芽茶の代表に「湖南省岳陽の「君山銀針」や四川省の「蒙頂黄芽」、安徽省の「霍山黄芽」、浙江省の「莫乾黄芽」などがあります。

黄小茶の代表に、湖南省岳陽の「北港毛尖」、湖北省の「遠安鹿苑」、浙江省の「平陽黄湯」などがあります。

黄大茶の代表に、安徽省の「霍山黄大茶」、広東省の「大葉青」などがあります。

黄茶の効能

他のお茶同様、黄茶もビタミン・ミネラルが豊富です。疲労回復・解毒作用・利尿・疲れ目の解消・老化防止・癌の予防・殺菌などに効果があると言われています。

黄茶の産地

黄茶の産地は湖南省・四川省・安徽省・浙江省・湖北省・広東省などです。

有名な中国黄茶

君山銀針

君山銀針(くんざん ぎんしん)は湖南省岳陽の洞庭湖に浮かぶ小さな島・君山島で採れる茶で、そこから君山銀針と呼ばれています。茶の芽の長短大小は不ぞろいで芽の中は金色、外側は銀の針のようになっています。

君山の茶の歴史は古く、唐代にはすでに生産が始まっており有名でした。文成公主(623~680年 唐王朝の皇女で吐蕃…チベットにあった王国…国王に嫁いだ)がこの茶葉を持って嫁いでいったという伝説があります。

君山銀針は黄茶の代表とも言うべき茶で、唐代から生産が始まり清朝では朝廷御用達となっています。君山島は砂質土壌で年平均気温は16~17度。年間雨量は1340ミリ程度、比較的湿度の高い場所です。春や夏は湖水に靄が立ち、鬱蒼と木が茂って、茶の生産に適しています。

君山銀針の香りは清々しく、芳醇な甘みがあり、茶の芽は湯を注ぐとまず水面に昇り、やがて沈み、この昇り沈みを3回繰り返すと言われます。

君山銀針の茶は清明節の3~4日前に摘み取って春の若芽で作ります。

君山銀針の物語

洞庭湖に浮かぶ君山島は漢詩で有名な岳陽楼から船で行けますが、ここで採れる茶葉「君山銀針」の種は娥皇と女英が4000年ほど昔に撒いたものとされています。

娥皇(がこう)と女英(じょえい)とは古代中国の伝説に出てくる姉妹で同じく伝説上の帝王・尭の娘です。後に二人とも尭から天子の位を禅譲された舜の妻となり、娥皇は皇后に、女英は妃になりました。舜の危機には常に二人がこれを助け、舜が死去すると二人は長江と湘江の間で(長江と湘江はつながっています)命を絶ち、湘江の神になったと伝わっています。

さて後唐(こうとう 923~936年)の第2代皇帝・明宗が初めて朝廷に赴いて政治を執ったとき、家臣が彼に茶を入れました。熱い湯を器に注ぐとすぐさま白い靄がモクモクとたちのぼり、白鶴が1羽現れました。この鶴は明宗に3回頭を下げると天に向かって飛んでいきました。その後明宗が茶の入った器を見ると、器の中の茶が春先の竹の子のようにニョキニョキと上に向かい、しばらくするとまた雪のようにゆっくり沈んでいきます。

明宗が驚いて家臣に何事だろうと聞くと家臣が「君山島の白鶴泉の水で君山島の茶・銀針を入れたからでございましょう」とこたえました。

明宗はこれをたいそう喜び、君山銀針を「貢茶」(朝廷の御用達)に定めたということです。

君山銀針の入れ方

君山銀針の入れ方

1:お湯を沸騰させます。

2:茶碗にお湯を注いで茶碗を温めておきます。

3:茶碗をゆっくり回し、全体を均一に温めたらお湯を捨てます。

4:茶碗の3分の1くらいまでお湯(80度くらい)を入れ、そこに茶葉(適量)を入れます。

5:茶碗を回して茶葉を湿らせます。

6:そのあとグラスの7分目くらいまでお湯を注いでできあがり。茶葉が上下する様子を楽しみながら飲みましょう。

※中国の茶器の名前と使い方に関しては「中国茶」のページで詳しく紹介しているので、そちらをご覧ください。

霍山黄芽

霍山黄芽(かくざん こうが)は安徽省のお茶です。昔は「仙芽」と称えられていました。唐代に献上する「朝廷御用達」の「御茶」となり、現代でも名茶とされています。

コクのある味でやや甘味があり、香り高いお茶です。美肌効果があるとも言われています。

蒙頂黄芽

蒙頂黄芽(もうちょう こうが)は四川省名山で採れるお茶です。宋代から逸品として知られています。唐から清まで朝廷に献上される「御茶」でした。茶湯は明るい黄色で甘く爽やかな香りと味をしています。

広東大葉青

広東大葉青(かんとん だいようせい)は広東省のお茶です。他の黄茶とは異なり、製茶の工程で「萎凋」(ちょうらく)という作業を行って渋みなどを取り除きます。茶湯は明るい黄色でこくのある味とさわやかな香りをしています。