黒茶

黒茶

中国茶には「黒茶」「緑茶」「白茶」「黄茶」「青茶」「紅茶」の基本6種類がありますが、この中でも黒茶は特殊で、菌による発酵が行われています。

ここでは黒茶の特徴、色、効果、日本と中国の主な黒茶、黒茶の作り方、入れ方などについて紹介します。

黒茶とは

黒茶とは製造の過程で菌を加えて発酵させるお茶のことで「後発酵茶」に分類されます。白茶・黄茶・青茶・紅茶は「発酵させた茶」と言っても菌にはよらず、本来の意味では「発酵」ではないのですが習慣的にそう呼んでいます。ところが黒茶だけは言葉本来の意味で正しい「発酵茶」・「菌(微生物)を介在させる発酵茶」です。

黒茶は茶葉が黒褐色なので黒茶と呼ばれます。発酵茶ですので、ワインのように年月が経って熟成させたものほど味や香りが良くなり、価値も高くなります。

黒茶とお茶の種類

黒茶は後発酵茶(菌による発酵がなされた茶)ですが、中国茶は発酵の度合いなどによって以下の図のように緑茶・白茶・黄茶・青茶・紅茶・黒茶の基本6種類に分類されています。

お茶の種類

黒茶の効果

黒茶

黒茶には様々な種類がありますが、主に日本で飲まれているのはプーアル茶です。

プーアル茶の効果としては、血圧を下げ、脂肪を減らす作用があり、動脈硬化などを防ぐことが挙げられます。

そのためダイエット用の飲料として知られています。

また、殺菌消毒作用があり、特に歯の健康を守ることができ、ビタミンCやE、カテキンやアミノ酸など微量栄養素が多く、アンチエイジング作用もあります。

中国の黒茶

中国の黒茶には「普洱(プーアル)茶」・「茯(フー)茶」・「竹筒酸茶」などがあります。

また中国の黒茶には形状から「散茶」(いわゆるお茶の形をしているもの)と「固形茶」(発酵させる前に型に入れて固めたもの)の2種類があります。

これらのお茶は主にチベットやモンゴルなど辺境の地で飲まれ、少数民族にとって欠かすことのできないお茶となっています。

プーアル茶
プーアル茶。
固形のプーアル茶
黒茶には固形茶もあります。

日本の黒茶

日本の黒茶には、石鎚黒茶(愛媛)・碁石茶(高知)・阿波番茶(徳島)・富山黒茶の4種類がありますが、製造に手間がかかり製造農家が減り、幻のお茶と言われています。

碁石茶
碁石茶。

石鎚黒茶と碁石茶は、カビによる好気発酵と嫌気発酵を組み合わせたもの、阿波番茶は微生物による嫌気発酵、富山黒茶はカビによる好気発酵。

嫌気発酵の場合酸味もあり、それぞれ独特の香り・味を持っています。

発酵食品は血糖値の改善、降圧作用、脂肪の吸収を抑えるなど健康面でさまざまなメリットがあり、近年人気のお茶となっています。

世界の黒茶

中国や日本以外の黒茶としては、ラペソー(ミャンマー)・ミヤン(タイ・ラオス)などがあります。

黒茶の製造工程

黒茶は、殺青(さっせい 熱を加えて発酵を止める)→揉捻(じゅうねん 茶葉を揉む)→渥堆(あくたい 揉捻した茶葉を積み重ね、人工的に一定の温度や湿度を保つように湿った布などをかけて発酵させる。この工程が黒茶の品質の鍵となる)→乾燥(烘焙法か晒乾法で乾燥させる。この工程によりツヤのある色や香り、形が決まる)という工程を経て作られます。

黒茶の保存法

プーアル茶

黒茶は紙など通気性のよい材料で包んで保存します。湿気のない所であればカビは生えません。

黒茶の入れ方

黒茶の入れ方

黒茶は95~100度のお湯で入れます。茶葉の量は急須の5分の1~3分の1です。

何煎でも飲めますが、長時間お湯につけておくと苦みや渋みが出て飲めなくなります。

入れる時間は1煎目は30秒~1分ほど、2煎目以降はそれに20秒ずつ足した時間です。5~10煎ほど飲めると言われています。

プーアル茶とナイフ
固形のプーアル茶は入れる際にナイフで削ります。

有名な黒茶

中国黒茶の主な産地は湖南省安化県・湖北省・四川省・雲南省などです。

有名な黒茶…雲南普洱(プーアル)茶

黒茶を代表するお茶です。茶葉の色は光沢のある黒で、水色(茶を入れた時の色)は褐紅色です。味は芳醇で甘く、発酵茶特有の香りがあります。

この茶の飲み方としては、

95~100度のお湯を1つまみの茶葉に注ぎ1分程度置いてから飲みます。1煎目は捨て(カビや汚れを取り除くため)2煎目、3煎目から飲みます。

脂肪を分解してくれるお茶ですのでダイエットに効果が高いと言われています。

雲南普洱茶は唐代から作られており、明代にこう名付けられました。

なぜこの茶ができたかについては、雲南省は中原から遠く、雲南の茶を半年から1年かけて運んでいるうちに茶が酸化し独特の味や香りを生んだのではと言われています。

有名な黒茶…普洱小沱(しょうだ)茶

小沱茶は一人分の茶葉が丸めて発酵させてあります。茶碗に入れて95~100度の湯を注ぎ1分半ほどおけばできあがりです。飲みやすい味です。

有名な黒茶…菊普洱小沱(しょうだ)茶

普洱小沱茶に菊をブレンドしたお茶です。95~100度の湯を注ぎ1分半ほど置いて飲みます。お湯を注ぐと菊の花が浮かび上がるおしゃれなお茶で、菊の香りが加わりさっぱりした口当たりです。

有名な黒茶…雲南七子(ななこ)餅茶(へいちゃ)

餅茶とは餅型に固めたお茶のことで、はじを砕き、ほぐしてから急須に入れて95~100度の湯を注ぎ1分ほど置いて飲みます。1煎目は捨て(カビや汚れを取り除くため)2煎目、3煎目から飲みます。

有名な黒茶…茯磚茶(ふくせんちゃ)

このお茶は夏の最も暑い時期(中国語で「三伏」と言います)に作られ、形がレンガに似ているのでこういう名前が付けられました。「磚」は中国語で「レンガ」を意味します。

形は長方形のレンガ型で、茶を入れた時の水色は明るい緑色です。沸騰したお湯で入れます。

産地は湖南省や湖北省などです。

有名な黒茶…雅安蔵茶(があん ぞうちゃ)

このお茶の産地は四川省の雅安です。千年以上もの間チベットに向けて売られているので「蔵」という名がついています。チベットは中国語で「西蔵」(シーザン)と言います。

この茶を作る工程の一つ・渥堆(あくたい)によって発酵が促され、脂肪の分解作用を高め、消化を助けるなど健康に良い飲み物になっています。

有名な黒茶…安化黒茶(あんか くろちゃ)

湖南省安化県で作られるお茶で、古代から作られてきました。西北の少数民族に向けて売られてきたため「辺茶」・「辺銷茶」(辺境に売るお茶)などと呼ばれてきました。「千両茶」や「天尖茶」もこの安化黒茶の一種です。

ドジョウのような形状をしていて茶葉の色は黒褐色。茶を入れた時の水色は明るいオレンジ色。味は濃厚でやや渋みがあります。沸騰したお湯で入れて飲みます。