緑豆

緑豆

緑豆は日本では主にもやしの原料として使われていますが、中国では古くから薬膳・漢方の生薬として使われてきました。

ここでは緑豆の効能・栄養・薬膳の食材としての特徴・緑豆を使ったレシピ・緑豆スープにまつわる物語などを紹介します。

緑豆とは

緑豆

緑豆(りょくとう)とは、マメ亜科の植物で、日本語名「八重生」(ヤエナリ)の種子のことです。大きさは小豆くらい、色は緑色です。

インド原産で東アジアや南アジアなどで栽培されています。中国では春雨の原料にしたり、発酵させて「豆汁」として飲んだり、そのほか料理やお菓子の材料にしますが、日本ではこの豆をもやしの原料に用いてそれ以外の食材とはしません。またモヤシの原料としての緑豆はほとんどすべて中国からの輸入に頼っています。

生薬(しょうやく…薬用植物を加工せず自然のまま用いる漢方薬)としての緑豆は、解毒・解熱・消炎・吐き気止め・血糖値の上昇抑制・利尿・美容効果・精神の安定などに効果があるとされ、なかなかのスグレモノです。

緑豆は薬膳で「寒」の食材

緑豆

緑豆は薬膳料理の食材としては「寒」に属し、体を冷やす効能…解熱効果があります。

解熱効果は緑豆の皮にあり、豆の中身の方は解毒効果があると言われています。

中国の伝統的な夏の飲み物に「緑豆スープ」がありますが、これもこの解熱効果を利用したものです。

緑豆の効能

緑豆スープ

緑豆の効能としては、血中脂肪を下げる・コレステロール値を下げる・抗アレルギー・抗菌・抗癌・食欲増進・肝臓や腎臓の保護などの効用があると言われています。

緑豆の栄養成分

緑豆

緑豆の栄養成分はタンパク質23.8g・炭水化物58.8g・脂肪0.5gのほか、カルシウム80mg・リン360mg・鉄6.8mg・ビタミンB1・ビタミンE・葉酸などミネラル分も豊富です。

緑豆を食べる時気をつけるべきこと

緑豆は鉄鍋を使ってはならない

緑豆はタンニンを含んでおり、鉄鍋で緑豆スープを作るとタンニンが鉄と反応してスープの色が黒くなります。また場合によっては消化不良などを起こすことがあるので避けた方が良いと言われています。

緑豆は冬には食べない

緑豆は「寒」に属する食品で、解熱効果があると同時に体を冷やします。そこで冬食べたり、下痢気味の時に食べたり、胃を冷やさない方が良い人が食べるなどは避けた方がよいでしょう。

薬といっしょには食べない

服薬している時に緑豆といっしょに食べると薬の効果が薄れます。

緑豆は煮すぎてはいけない

緑豆はクタクタになるまで煮すぎると有機酸やビタミンが破壊されてしまうので、解熱作用や解毒作用の効果が薄れます。

緑豆を使った薬膳料理のレシピ

薬膳・薬膳料理とは、中医学に基づいて漢方薬と一般食材を組み合わせて作った料理のことですが、緑豆を使った薬膳・薬膳料理を紹介します。

緑豆のスープ

緑豆スープ

緑豆のスープは料理というのもおこがましいほど簡単かつ栄養価の高いスープです。それだけでなくさまざまな使い道があり、なんと美容液にもなるのです!

【緑豆のスープの作り方】

緑豆をきれいにあらったら、水といっしょに煮て豆が柔らかくなればできあがりで、調味料のたぐいは一切入れません。

夏の真っ盛り、汗ダラダラ、のどカラカラという時、この熱いスープを飲むと不思議なことにのどの渇きが癒されるのです。

中国人に言わせると、のどが渇いた時冷たい飲み物は一層のどの渇きを増すのだそうです。まさに中国四千年の(最近は五千年とも八千年とも…)智慧です。

また食あたりをした時このスープを飲ませると中毒状況が緩和されると言います。

子供のあせももこのスープで体を洗ってやると改善するそうです。

毎日このスープを飲んでいると体の毒が排出され顔が美しくなるとも言われます。

まさに万能の緑豆スープです。

緑豆の価格は?

このすぐれものの緑豆の価格ですが、日本で買っても1キロ約1000円。割りに手頃です。

中国では有機栽培のものも売っています。価格はいろいろですが、たとえば400グラム18元というのもありました。1キロ約700円です。

緑豆を使ったさまざまな食材

緑豆といえば「春雨」。日本ではスープや酢の物に欠かせません。

春雨を作る時にできる汁を発酵させて作る飲み物に「豆汁」があります。北京に行くと街角の小さな食堂で出してくれます。まるで灰を溶かしたような色。安っぽいブリキの入れ物の中の豆汁を恐る恐る飲んでみると、やや酸っぱい味がして意外にいけます。

北京の屋台の朝ごはんと言えば「油条」(ねじった形の揚げパン)と「豆漿」。こちらは緑豆ではなく大豆で作る「豆乳」です。「豆汁」で食べる人もいます。

「緑豆糕」という落雁のようなお菓子もあります。

緑豆スープをめぐる物語

『如意』という北京を舞台にした中国の小説に緑豆スープが出てきます。

足をひきずって歩く学校の用務員さんが主人公の地味だけれど味わい深い小説です。

貧しく見栄えのしない初老の用務員のおじさんは、誰の注意も引きません。ところが文革という1966年から1976年にわたる一種の内乱の時代、同じ学校の若い教師がこのおじさんに興味を持ちます。重い政治犯にされた人も含め、淡々と困っている人に手を差し伸べるからです。当時はそんなことをすれば自分の命も危ない時代でした。

真夏、炎天下での厳しい肉体労働を命じられた学校の教師たちのところに、このおじさんが大鍋いっぱいの緑豆のスープを持ってきて一人ひとりに配ります。

きわめて貧しい暮らしをしていたこのおじさんが自分の燃料と食糧(当時これらは配給制度下にあり、一人当たりの量が決められていました)を使っておおぜいの人に緑豆スープを配るというのは大変なことでした。

配ってもらった人の中には胃潰瘍の人もいて校庭にある水道水を飲めず、と言って家に帰ってお湯を飲むことも許されず、のどの渇きと胃の痛みに耐えている人もいました。現行反革命犯という重い刑罰が待っている人もいました。

真夏、熱い緑豆スープ…日本人の私にはわけがわかりません。中国人から夏の飲み物だと聞いて、ある夏、中国からのおみやげに緑豆を一袋買ってきました。さっそく「緑豆スープ」を作り、エアコンを消した暑い部屋の中で汗を流しながら飲み、やや柔らかくなった緑豆も食べてみました。うん、悪くない…

緑豆スープは滋味深く、冷たい飲み物を飲むより喉の渇きが癒される気がしましたよ。

お試しください。