陳皮
Tweet陳皮(ちんぴ)とはミカンの皮を3年以上乾燥させたもので、薬膳・漢方において様々な効用があるとされています。
ここでは陳皮の効能・薬膳料理のレシピ・陳皮に関する物語などを紹介します。
目次
- 1. 陳皮とは
- 2. 陳皮の効能
- 3. 自分で「陳皮」を作ることはできるか?
- 4. 良い「陳皮」の見分け方
- 5. 陳皮を使った薬膳のレシピ
- 6. 陳皮の物語
陳皮とは
陳皮(ちんぴ)とは、ミカンの皮を乾燥させた漢方薬のことです。
それなら冬になったらいくらでも作れる…と思う方も多いでしょうが、一日二日干したものは「陳皮」とは言いませんし、漢方薬「陳皮」が持つ薬効が発生することもないようです。
中医学でいう「陳皮」とは熟したミカンの皮を3年以上乾燥させたもののことで、3年以内ですと「果皮」(果物の皮)と言います。「陳」とは「古い」という意味なのです。
陳皮の効能
陳皮の効能としては食欲不振・乗り物酔いなどに効き、また血圧降下作用・咳止め効果・便秘の改善効果などもあると言われています。
乗り物に乗る1時間前に、20分に1度ひときれを口に入れてよく噛みくだき飲み込む。乗り物が動き出したら10分に1度ひときれを口に入れてよく噛みくだき飲み込む。こうするとすぐ効果が出ると言われています。
陳皮6gを水1000ccに浸け、蓋をして20分おく。その後2~3回に分けて服用する。お腹をきれいにし便秘を改善する。
陳皮5gをコップ2杯の水に入れて火にかけ、生姜や黒砂糖を入れて飲むと咳止めの効果がある。
自分で「陳皮」を作ることはできるか?
自分で作る場合気をつけなくてはならないのは、ミカンの皮の表面についている残留農薬や保鮮剤です。こうしたものが残っていると薬が毒になってしまいます。
3年以上もの長い時間をかけて乾燥させるというのはそれなりの意味があるのでしょう。
良い「陳皮」の見分け方
良い「陳皮」の見分け方としては、艶のある褐色を呈しているものが良く、ただ黒ずんでいるものは良くない。匂いを嗅ぐとかすかにミカンの香りが漂ってくるものが上物。
陳皮を使った薬膳のレシピ
陳皮を10gよく洗っておく。細かく切り裂いたものを茶碗に入れる。熱湯をついで10分ほど置く。陳皮を取り除き、砂糖を少量入れる。冷めたら冷蔵庫などに入れ、常飲すると咳止め・痰止めや胃を丈夫にする効果があると言われています。
ただし陳皮は薬膳でいう「温」の性質を持っているので、のぼせやすい人は避けた方がいいでしょう。
材料:陳皮10g 米100g
作り方:陳皮をよく洗い細切りにして煎じる。煎じたものを米と一緒に煮てお粥にする。
または陳皮を細かく砕いて粉状にし、粥を作るごとに3~5g入れて煮込む。
胃を元気にさせたり、腹部膨満感の解消や咳止めなどに効果があります。
陳皮の物語
正確には「陳皮」というより「ミカン」の物語です。ミカンに薬効があることが発見されたいわれについて、中国には「橘井泉香」という四字の言葉で知られる伝説が残っています。「橘」とはミカンのことです。
後漢の恵帝の時代と言いますから紀元前の話です。
潘(ハン)という苗字の娘が河原で洗濯をしていますと上流から赤い絹の帯のようなものが流れてきました。目の前に流れ来た時それを取り上げると、娘はなんだかお腹が重くなった気がしました。それからまもなく娘は自分が身ごもったことを知りました。
結婚もしていない娘が身ごもるとは一家の恥さらしです。娘は一人山の中に入っていき、山の洞穴で子供を産み、その子に蘇耽(ソ・タン)と名付けました。お乳が出ず困っていると白い鹿がやってきて自分の乳を赤ん坊に飲ませてくれました。
冬がやってきました。山は寒さが厳しいのに赤ん坊に着せる服もありません。娘が困っていると、白鶴が飛んできてその翼で子供を温めてくれました。こうして蘇耽は元気に育っていきました。
子供が母親の手助けができる年ごろになると、娘は子供を連れて湖南省のとある村に住み着きました。学校に行く年齢になると娘は子供を私塾に入れました。息子はたいそう賢く、特に病のことに天賦の才があったので、娘は彼を医者に弟子入りさせました。数年後蘇耽は医者として独り立ちし大勢の病人を診るようになりました。けれども患者からお金を取ることはほとんどありませんでした。
母子二人おだやかな暮らしをしていたある日、蘇耽は芝刈りに行った山で白髭の老人に出会います。この老人は蘇耽の優秀なことや親孝行であることを見抜き、彼に仙術を教えます。蘇耽は隠身の術や日に万里を行く術などいくつもの術を身につけ、それから数年後には修行をきわめ仙人として天に昇ることになりました。
家を離れることになった蘇耽は、母にこう告げます。
「来年、村一帯に伝染病が蔓延することでしょう。その時は家の裏庭にあるミカンの木と井戸水で患者を助けることができます。患者が悪寒や発熱を訴えたら、ミカンの葉を1枚、1升の井戸水に入れて煎じて服用させてください。治った後は今までどおり患者からお金を取ってはいけません」
翌年果たして伝染病が蔓延しました。母は息子の言うとおりにし、こうしてこの村の患者は全員が病から回復しました。
「蘇耽橘井」の美名は広まり、こうしてその「良医美徳」は後の世にまでたたえられるようになったのです。
この伝説から、ミカンの薬効が中国ではかなり古くから知られていたということがわかります。長い時間をかけてその知識は改善・工夫され、ミカンの皮を時間をかけて乾燥させる…「陳皮」という漢方薬に結びついていったのでしょう。