金針菜
Tweet金針菜(キンシンサイ)とは、本萱草(ホンカンゾウ)の花のつぼみで、乾燥させたものが薬膳・漢方などに用いられます。
ここでは金針菜の効能・栄養・毒性・金針菜をおすすめできる人とできない人、などについて紹介します。
目次
- 1. 金針菜とは
- 2. 金針菜の効能
- 3. 金針菜の栄養価
- 4. 生の金針菜には毒性がある
- 5. 金針菜を食べない方がいい人
- 6. 金針菜を食べるといい人
- 7. 金針菜を使った料理
- 8. 萱草にまつわる物語と詩
金針菜とは
金針菜(キンシンサイ)とは、ユリ科の植物である本萱草(ホンカンゾウ)の花のつぼみです。花開くと鮮やかなオレンジ色のまさにユリそのものの形をしていますので、そのつぼみもなかなか大きなものです。針というにはもっとふくらみがありますが、金の針と名付けたくなる美しさをもったつぼみです。
食材としても生薬(しょうやく…薬草を加工せず使う薬)としても使いますが、食材としてはまだ色づいていない緑色のつぼみを使います。生薬は乾燥させたものでゴボウを細く切ったものを乾燥させたような見た目をしています。
金針菜の効能
金針菜は貧血や不眠症の改善・止血・消炎・精神の安定・利尿・便秘の解消・授乳・記憶力減退の改善など多方面に効能があると言われています。
金針菜の栄養価
金針菜は栄養価が高く、タンパク質・脂肪・炭水化物・カルシウム・リン・鉄などミネラル成分も豊富です。特に鉄分はホウレンソウの20倍あると言われます。
生の金針菜には毒性がある
ただし生の金針菜の場合毒性があり、食べる前に湯がいてその後2時間ほど水に浸けておく必要があります。またその量も1回50gを超えてはいけません。毒に当たると嘔吐や下痢などの症状が出ます。
日本で手に入る金針菜はほとんどが乾燥させたものなので中毒の心配はありませんが、万が一に備えて、水を取り替えながら何度か水に浸けておくといいでしょう。
金針菜を食べない方がいい人
金針菜は薬膳で言う「寒」に属する食材で体を冷やす野菜なので、痰が多かったり胃腸が弱い人、喘息気味の人は避けた方がいいでしょう。
金針菜を食べるといい人
逆に高血圧の人なら血圧やコレステロール値を下げる効果があります。
高齢者も免疫正常化を保つ効能があるのでお勧めです。
妊産婦も血液を補い、肌を潤し、むくみを取る効能があるので適しています。
金針菜を使った料理
金針菜は生も乾燥のものも味に癖がないので、スープ・味噌汁・炒め物・サラダなどどんな料理にも使えます。
萱草にまつわる物語と詩
金針菜を採る萱草には「忘憂草」(わすれぐさ)という名前もあり、これはその花の美しさが憂いを忘れるほどだからと言われています。
唐代の詩人・白楽天(はくらくてん…白居易とも)は「杜康能解悶・萱草能忘憂」(杜康…酒は憂さを晴らし、萱草は憂いを忘れさせる)と詩にうたっています。杜康は周代の酒造りの名人で、酒のことも意味します。日本で酒造り職人を「杜氏」(とじ)というのはここから来ています。
また中国で萱草は「母親花」とも呼ばれています。その故事としてはたとえば、随末、後年唐の太宗となる李世民が戦に向かう際その母親が心配のあまり病気になってしまったので、精神安定の薬効を持つ金針菜を煎じて飲ませ、その花を母の部屋のそばに植え憂いを忘れてもらおうとした…という話が残っています。
昭和初期の詩人・立原道造(たちはら みちぞう)はその詩集『萱草に寄す』(わすれぐさによす)の中でこの花のことをうたっています。24歳という若さで夭折したこの詩人は風貌の繊細な抒情詩人で、当時高原の自然がたっぷり残っていた軽井沢を愛したことでも有名です。軽井沢の野にはユリに似た美しいこの花が咲き乱れていたのでしょうか。
ちなみに「わすれぐさ」は「勿忘草」(わすれなぐさ)とは違います。勿忘草は小さくて青い花をたくさんつけ、美しいというより可愛らしい花です。