火鍋
Tweet火鍋とは中華料理の一つで、羊肉のしゃぶしゃぶのことです。
ここでは火鍋の特徴・歴史・鍋の形・日本のしゃぶしゃぶとの違い・火鍋の名店・食べ方・作り方・辛さについてなど紹介していきます。
火鍋とは
火鍋(ひなべ・中国語ではフオグオ)とは、「中華料理のしゃぶしゃぶ」のことです。中国語では古くは「古董羹」(グドンガン)と呼ばれ、この名前は沸騰した湯に材料を入れる時「グドン」(ボトン)という音がするところからついた名称だということですから、日本語の「しゃぶしゃぶ」と名前の由来が似ています。日本のしゃぶしゃぶは一般に牛肉の薄切りを使いますが、中国の火鍋は一般に羊肉の薄切りを使います。凍らせた肉を薄く切るのでクルクル丸まっています。これをサッと湯がいていろいろな調味料につけて食べるのですが、とても美味しい料理です。
家庭では作らず、専門店で食べますが、それほど敷居の高い料理屋ではありません。
ちなみに「羊のしゃぶしゃぶ」の中国語は「涮羊肉(シュアン ヤンロウ)」と言います。
火鍋とはこのようにしゃぶしゃぶのことですが、これは実は中国北方の食べ方、特に北京の食べ方のようで、近年中国南部の火鍋も知られるようになりました。こちらはしゃぶしゃぶどころかしっかり煮込む料理です。ここでは北方系の火鍋、つまり中国式しゃぶしゃぶ料理を紹介します。
「火鍋」の鍋の形
火鍋に使われる鍋は独特の形をしています。鍋の真ん中に煙突がついているものもあります。昔は中に炭を入れ、鍋の湯を冷まさないようにしていました。それ以外にも排気とか湯を巡回させるとかいろいろな効能を聞きますが、今では特に必要がなくただの飾りだったりします。
また陰陽太極マークのカーブした仕切りの鍋もあります。仕切りの向こう側は魚で取ったスープ、こちら側は唐辛子で真っ赤になったスープ。これを「鴛鴦(えんおう…オシドリ)」鍋と言ったりします。この鍋は80年代に考えられたもので、ラストエンペラー溥儀の弟・溥傑が、美味しいしネーミングもいいとほめたという話も残っています。ちなみに溥傑さんは戦前に日本の華族・嵯峨浩さんと結婚し、二人は生涯仲睦まじく、北京ではオシドリ夫婦として有名でした。
火鍋の歴史
火鍋の歴史は古く、周王朝時代の鼎(かなえ…一般には3本足の礼器)も火鍋用鍋の最も早期のものだとも言われています。宋代になると民間でこの料理が普及し、元代にはモンゴルにも伝わり、清朝時代になると宮廷にも入ります。材料にはキジが使われたと言います。
清の乾隆帝はことのほか火鍋を愛し、江南に旅する時も必ず火鍋セットを持っていったとか。またある宴会では5000人以上を招いて火鍋パーティをやり、テーブルには1550もの火鍋が並んだそうです。
この料理法、日本にも室町時代には伝わり、これが「スキヤキ」になったと中国人は書いています。また日本のしゃぶしゃぶは上記した「涮羊肉(シュアン ヤンロウ)」が日本に伝わったとも言われています。
火鍋の名店
火鍋料理は自宅で食べるより専門店で食べた方が美味しいです。北京は火鍋料理の本場。北京に行くと中国人はよくこの火鍋でもてなしてくれます。
東来順飯庄
北京にあるこのお店は火鍋・マトンのしゃぶしゃぶでは「百年老店」(百年続く老舗)と言われています。大きな銅鍋に上質の薄切りマトン、口に入れればとろけるようで臭みはまったくありません。伝統の調味料をつけて味わいます。百年前の食べ方とまったく変わっていないそうです。冬場に訪れるお客さんが多く、海外でも知られた名店です。北京銀座の王府井にあり、一人当たり単価は平均120元(約2000円)。
池袋にある東来順
上記の「東来順」は池袋にも支店があり、そちらでも2000円程度から火鍋を食べることができます。
聚宝源
北京のモスク通り・牛街にある火鍋の老舗。手切りマトンは長く煮込んでも固くならないとか。店内はおおぜいの客でにぎわい、持ち帰りにも長い列ができています。中国で地元の人が長い列を作っていたら、そのお目当ては美味しいこと間違いありません。1枚1元のシャオビンもお勧め。一人当たり単価平均75元(約1200円)
この近くにあるモスク(清真寺)は北京最古のモスク。周囲には「回」という苗字の人がたくさん住んでいて、彼らは豚肉は絶対食べません。この回教(イスラム教)の人たちの顔立ちは一般中国人と変わりません。
もちろん北京だけでなく上海でも台北や日本でもいろいろなところで火鍋を食べることはできます。
火鍋料理の食べ方
日本でしゃぶしゃぶは肉や野菜をたっぷり食べた後うどんなどで締めますが、中国ではそうした食べ方はありません。肉や野菜をたっぷり食べ、合間に生のニンニクをかじったりしています。またしゃぶしゃぶ肉や野菜につけるための調味料やトッピングは何種類も用意されています。
火鍋のレシピ・作り方
火鍋の作り方1
材料: マトン(羊肉)500g
付け合わせ: 白菜150g・春雨150g・ニラの花の漬物30g
調味料: 糖ニンニク(砂糖と酢でつけたニンニク)60g・胡麻醤(ゴマを炒ってすりつぶしたみそ状の調味料)150g・料理酒30g・腐乳(さいころ状に切った豆腐を発酵させてから塩に漬けたもの)50g・醤油30g・ラー油30g・シャンツァイ30g・ネギ30g
1:胡麻醤をお湯で糊状にし、腐乳はつぶして同じく糊状にし、それぞれ分けておく。
2:白菜は芯を取ってから切って皿に入れる。マトンの薄切りと戻した春雨も皿に入れる。その他の調味料は小皿に分けて入れておく。
3:マトンの薄切り、白菜、春雨、各種調味料をテーブルに並べる。
4:一人ひとりの小椀に、胡麻醤・腐乳・ニラの花の漬物・醤油などを入れて混ぜておく。この他の調味料はお好みで。
5:火鍋に水を入れ、火にかけてテーブルに乗せる。
6:湯が沸騰したら各自マトンの薄切りを入れて調味料につけて食べる。
7:肉がなくなったら、白菜や春雨を入れて食べる。
火鍋の作り方2
材料: 当帰30g・マトン(羊肉)1.5kg
調味料: サラダオイル100g・ショウガ5g・ニンニク5g・ネギ5g・化学調味料20g・鶏ガラスープの素20g・料理酒20g・胡椒5g・湯3リットル・塩少々
1:ショウガとニンニクを薄切りにし、ネギは斜め切り、当帰は4ミリの厚さに切る
2:マトンを洗ってきれいにし、3センチほどのサイコロ状に切り湯がいておく。
3:鍋を火にかけて油を入れ、ショウガ・ニンニク・ネギを入れて香りが出るまで炒める。
4:鍋に湯を入れ、そこにマトン・化学調味料・胡椒・料理酒・当帰を入れて沸騰させる。
5:塩を入れ、アクを取り、圧力鍋に入れてさらに火にかける。10分でできあがり。
火鍋は辛い?
火鍋と聞くと「辛い料理」と感じる人が多いようですが、火鍋は必ずしも辛い料理ではありません。北京などで食べる火鍋はタレにニンニクやラー油が入っていますから辛味はありますが、それぞれ自分で調節できますから辛くない食べ方もできます。
ただし上記したように鴛鴦鍋で食べると、唐辛子で真っ赤になったスープに肉をつけますからこれは辛いです。
また、四川料理などで出される火鍋はすべて猛烈に辛いと覚悟した方がいいでしょう。四川の人が日本に来るとまずどんな料理にも真っ赤になるほどの七味唐辛子をかけますが、あの辛さがないと物足りないと言います。
九宮格火鍋とは
四川省の火鍋には、鍋が格子状に9つに分かれ、中に真っ赤なスープが入っているものがあります。あの火鍋を「九宮格火鍋」といい最近はやっているのだとか。最初は店側がコストを下げようとあのような鍋を開発し、見知らぬ客どうし4人を「八仙卓」(大きな正方形のテーブルで2人ずつ腰掛けることができる)に案内し、客は注文すると升目をそれぞれ2つずつ使うことができ、その分だけ支払いするという方法で、口に入れた箸で同じ鍋をつつくこともなく衛生的で安上がりということで広まったそうです。