饅頭(マントウ)

饅頭(マントウ)

マントウは蒸しパンの一種で、中国の食べ物です。餡まんや肉まんの中身が入ってないものを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。

ここではマントウの特徴・起源・名前の由来・作り方などを紹介します。

饅頭(マントウ)とは

マントウ

饅頭(マントウ)とは、肉まん・あんまんの中身…肉やあんこ…の入っていない、丸いパンのようなものです。日本の肉まん・あんまんは外側がフワフワしていて、パンというより皮という感じですが、中国のあの「パンの部分」はドシっとしていて微妙な甘さがあり、中華料理といっしょに食べるととても美味しく、なぜあれが日本では流行らないのか不思議なほどです。

一度あの美味しさを知ってしまうと、コンビニで売っているような日本の肉まん・あんまんは甘ったるくて食べられません。

日本でもマントウや本格肉まん・あんまんを売っているところもありますが、こちらはやたらに値段が高い。おやつ代わりに食べるには高すぎ、蒸さなければいけないので面倒。そこで小腹が空いたらコンビニ肉まん・あんまんになるのかもしれません。

マントウは中国北方の主食

マントウ

中国の北方ではどこでも売っているマントウですが、南の上海ではめったに見られません。なぜかというと、南の主食は昔から米、これに対し北方中国の主食は小麦なのです。

最近では中国東北部でも米が取れるようになり、品種改良もされてきていますので北京などでもそれなりの味のご飯は食べられますが、20年ほど前初めて北京でお米ご飯を食べた時は、あまりの不味さに文字通り喉を通りませんでした。あれが米なら北の人はお米など食べないはずです。その代わり小麦は産地ですから主食として昔からいろいろ工夫されており、北方の小麦粉料理は絶品です。その一つがマントウなのです。

つまり中国のマントウはおやつとして食べるものではなく、おかずと一緒に主食として食べるものです。

マントウは中国語で「饅頭」

マントウ

マントウは中国語で「馒头・饅頭」と書きます。マントウは日本の饅頭(まんじゅう)とは似ても似つかないものですから、うっかり筆談などをすると誤解を生みます。

地域によっては「饃饃」(モモ)とも言います。中に肉あんや甘いあんが入ったものは「包子(バオズ)」と言います。

包子
包子。マントウと違い、包子には中身が入っています。

マントウの作り方

マントウの作り方
マントウの作り方

材料: ドライイースト・薄力粉・強力粉・ベーキングパウダー・ラード・牛乳・砂糖・ごま油

1:ぬるま湯とドライイーストを入れ、泡が出るまで常温で置いておく。

2:薄力粉と強力粉を2:1の割合で混ぜ、ベーキングパウダーとラード少々も加えてよく混ぜる。

3:牛乳・砂糖を(1)に加え、(1)(2)を全部混ぜてよくこねる。その後ラップをかけて20分ほど発酵させる。

4:発酵させた生地を棒状に伸ばしてから等分に切り分け、それぞれを楕円形に伸ばしていく。その上にごま油を塗り2つに折って半円形にしさらに10分発酵させる。

5:蒸し器に入れて15分ほど強火で蒸す。

※(マントウ1個分に小麦粉約40グラム)

「マントウ」の起源と名前の由来

マントウ

マントウは『三国志演義』で有名な諸葛孔明が考案したと言われています。

蜀の諸葛孔明が南の蛮地を攻略した後長江を渡ろうとして、戦いで死んだ敵方の亡霊に行く手を阻まれてしまいます。そこで孔明は河の神に助けを求めようと、祭壇を作り供え物をして祈りを捧げようとしました。祭壇にはいけにえが必要なのですが生きた人間を使うのは忍びなく、そこで「饅頭…小麦粉で作った頭…マントウ」でいけにえの代わりにしました。羊や豚を屠(ほふ)りそれを料理したものを小麦粉でくるんだ「饅頭」を水中に沈め、河の神に奉納したのです。

これが饅頭・マントウの起源と言われています。饅は「蛮」に通じ、「饅頭」は「蛮頭」つまり「蛮族の頭」という意味なのだそうです。白くてホカホカのマントウ、実は蛮族の頭だったんですね。

マントウが出てくる映画・テレビ

マントウは北方の主食ですから映画やテレビにはよく登場します。

たとえば『活きる』(1994年張芸謀監督作品・カンヌ映画祭男優賞受賞)では文革時代、主人公の娘が出産のため入院した病院では医者たちが紅衛兵(中学生・高校生が中心の革命実行部隊。家財を壊し人命さえ奪った)に打倒され、シロウトの紅衛兵たちが処置を担当して失敗。親が駆けずり回って打倒されていた医者を連れてくるのですが、空腹のために手当ができません。そこで今度はマントウを買ってきて5つ6ついちどきに食べさせると喉をつまらせ、水を飲ませたところマントウがお腹の中で膨張、医者はまたもや倒れてしまいます。そうこうするうちに娘は赤ん坊を産み落とし出血多量で亡くなってしまいます。喜劇のような悲劇です…

この映画中国では上映禁止で、日本でも中国に遠慮して、他国が1994年に上映しているところを2002年まで上映しませんでした。なんともはや…。

もう一つ『母親』という2004年放映のテレビドラマでもマントウが活躍します。母子家庭の困窮の中で、真っすぐしっかりと生き抜くシングルマザーの奮闘記。改革開放の波に乗って彼女は大金持ちに変身していくのですが、最初のきっかけが自分の作ったマントウ売り。80年代前後、商売などすれば厳しい迫害に遭った文革時代が終わり、人目を気にしつつささやかな商売を始める人が出てきた頃の話です。今の中国の発展がこうした草の根のエネルギーから始まったことがよくわかるドラマで、テレビ画面の中のマントウはホカホカと実に美味しそうでした。