タピオカミルクティー
Tweet最近日本でもよく見かけるタピオカミルクティーですが、その歴史は比較的新しく、1980年代に台湾で生まれました。
ここではタピオカミルクティーの起源、カロリー、栄養価、作り方、キャッサバの根からタピオカパールと呼ばれる球体が作られるまでなどを紹介します。
目次
- 1. タピオカミルクティーとは
- 2. タピオカとは
- 3. キャッサバをタピオカにするには
- 4. タピオカパール(球体)にするには
- 5. タピオカミルクティーのカロリーと栄養価
- 6. タピオカミルクティーの起源
- 7. 「春水堂」
- 8. 日本の喫茶店のアイスコーヒーから着想
- 9. 世界に広がるタピオカミルクティー
- 10. 様々なタピオカミルクティー
- 11. ホットタピオカミルクティーも
タピオカミルクティーとは
タピオカミルクティーは、ミルクティーの中に黒い粒粒のタピオカが入っている甘い飲み物です。
現在日本でも大流行していますが、もともとは台湾の飲み物です。
この飲み物もさることながらタピオカそのものも人気らしく、いまやタピオカ人気は「タピオカ杏仁豆腐」「タピオカラーメン」などドリンク類の垣根を超えて広がっているようです。
タピオカとは
タピオカとは寒天のような、丸いナタデココのような、白玉団子のような、グミのような…それそのものには味がなく、シロップや餡と混ぜて食感を楽しむ食べ物の一つですが、もともとはキャッサバという芋の根っこからとれるデンプンを加工したものです。
キャッサバをタピオカにするには
キャッサバは熱帯途上国に住む5億人の人々の主食だそうですが、キャッサバの根っこには青酸配糖体という毒があってしっかりと下処理をしないと食べられません。下処理した後デンプンを取り出すのですが、このデンプンのことも日本では「タピオカ」と呼んでいます。この名前はブラジル原住民の言葉に由来するそうですが、いかにも熱帯の海や風を感じさせるカワイイ響きで、この名前の魅力もまたブームの一因になっている気がします。
タピオカパール(球体)にするには
タピオカというデンプンからあの丸いボールというかパール状にするにはまたひと手間かかります。キャッサバのデンプン、つまりタピオカ(粉)に水を加えて加熱し糊化させてから容器に入れ、回転させながら球形に加工して乾燥させます。これが「タピオカパール」あるいは「スターチパール」と呼ばれるもので、中国語では「粉円」(フェンユエン)といいます。この粉円を黒くするにはカラメルやブラウンシュガー、イカ墨などで色付けします。
こうしてできたタピオカ(ボール)をお湯でゆで、冷水に取って締めてからシロップに漬けたものをアイスミルクティーの中に入れるとタピオカミルクティーになります。この時水からゆでると溶けてしまうそうです。
タピオカミルクティーの作り方
材料: 紅茶の茶葉8g(ミルクティー向けにやや多めに)、水200ml、牛乳200ml、砂糖、乾燥タピオカ(黒色のものを1回あたり10g程度)、太いストロー
1:前日に乾燥タピオカをボールに入れ、水を注いでラップをし、半日程度浸けておきます。
2:アッサム茶などのミルクティー向けの茶葉8gを器に入れ、茶葉がひたひたになる程度まで熱湯を注ぎ、茶葉を蒸します。
3:鍋に水200mlと牛乳200mlを入れ、沸騰してきたら弱火にします。
4:鍋の中に茶葉を入れ、弱火で3~4分煮込みます。
5:茶葉が入らないようにティースクーナーで濾しながらティーポットに注ぎます。
6:ティーポットにラップをして冷蔵庫で1時間程度冷やします。
7:水に浸けておいたタピオカをざるに取った後、鍋に入れて茹でます。
8:沸騰したらざるに取り、流水で冷やします。
9:ミルクティーをコップに注ぎます。
10:コップにタピオカを入れます。
11:太いストローをコップに差して完成です。
タピオカミルクティーのカロリーと栄養価
おいしいものを飲む時、栄養価などは考えないでしょうが、タピオカのカロリーと栄養価は、100gの乾燥タピオカで350kcal・糖質87g・微量ミネラル(カリウム・カルシウム・リンなど)となっており、糖質以外の栄養価はほとんどありません。
乾燥タピオカは茹でた際に水で大きく膨らむため、茹でたタピオカは100gあたり60kcalになります。
タピオカミルクティーのカロリーは砂糖の量などによって大きく変わりますが、1杯(250ml)あたり約120~230kcalとなり、かなりの高カロリーになる場合もあります。
なお、ご飯1膳が約200kcal、食パン1枚が約150kcal。1日の成人男性の必要カロリーが約1500kcal、成人女性の必要カロリーが約1100kcalです。
タピオカミルクティーの起源
タピオカミルクティーというアイスドリンクは誰が作り出したかというと、これは台湾の喫茶店のオーナーが1980年代に考案したもので、台湾の有名な茶店「春水堂」のオーナー劉漢介説と同じく有名な茶店「翰林茶館」のオーナー涂宗和考案説があります。
劉漢介さんは自ら本も書いている人で、タピオカミルクティーを作り出した過程の話もその中にありますのでこちらを下に紹介します。
「春水堂」
劉漢介さんは1983年に台中市四維路というところに「陽羨茶行」という喫茶店をオープンします。ちなみに「行」は「店」という意味で、たとえば「銀行」は銀を扱う店という意味です。江戸時代の日本は金が主要貨幣ですが、中国では銀が主要貨幣でした。明治以降に作られた新しい熟語は大半が日本で考案されそれが中国に伝わりましたが、「銀行」に関しては中国由来ではないかと思います。
さてこの劉さんは子供の頃から中国茶について医者であるお父さんから薫陶を受け、中国の古典的な教養に深い関心を持っていた方のようです。というのは、「陽羨茶行」、後の「春水堂」の内装は宋代のイメージで作られており、全体に品格や質を重んじる姿勢が一貫しているからです。ただの喫茶店のオーナーではなく、茶と文化を結び付けようという意志を持ち続けている人のようで、この「春水堂」はその後大成功、日本にもたくさんの店舗があるのですが、その成功の一因は彼のこの姿勢から来ているものではないかと思います。
ただ劉さんは文化にこだわるだけではなく、高いビジネス能力も持っている人で、80年代「老人の飲み物」という茶のイメージを変えるためにさまざまな工夫をします。やがてそれがタピオカミルクティーに結びつきました。
タピオカミルクティーはアイスコーヒーから着想
劉さんはタピオカミルクティーを考案する前に「バブルティー」というアイスティを開発するのですが、その時ヒントになったのは大阪の喫茶店で飲んだアイスコーヒーでした。帰国するとさっそくカクテルシェーカーを使って甘いアイスティを泡立て、「泡沫紅茶」(バブルティー)として売り出しました。紅茶は熱い飲み物だとして南国台湾では敬遠されていたのですが、甘く冷えたバブルティーはたちまち人気を博します。
その後このアイスティに牛乳とタピオカを入れ、タピオカを吸い上げることができるストローを使って飲むというスタイルにして「珍珠奶茶」…珍珠は真珠・パール、奶茶はミルクティの意味…と名付けたところ、これが大ヒット。日本では「タピオカミルクティー」、アメリカでは「パールミルクティー」と呼ばれて、台湾だけでなく中国大陸、アメリカ、ヨーロッパまで広まっていきました。
この着想のポイントは、沸騰した湯を使って飲むのが当たり前だった紅茶を冷たい飲み物に変えたという点です。
日本でアイスコーヒーを飲んだことがこの着想を生むわけですが、コーヒーを冷たくして飲むアイスコーヒーは日本では明治時代からあったようです。では考案したのは日本かというと、もっと古い時代アフリカで始まったようです。やはり熱帯で熱い飲み物は敬遠されたのでしょう。もっとも欧米ではこうした飲み方は邪道とされているようで格式のあるレストランでは出されませんし、日本に来てアイスコーヒーなるものに驚く欧米旅行客の話も聞きます。
こうして「お茶は熱いもの」という意識の壁を突破した冷たい紅茶はさらに変身を遂げ、中にタピオカを入れるようになったのです。
世界に広がるタピオカミルクティー
台湾で売られるようになったタピオカミルクティーは最初はあまり評判がよくなかったようですが、やがて台湾中に広まり国民的飲料になっていきました。その後中国や日本など東アジア、東南アジア各国、北米、ハワイ、アフリカ、ヨーロッパにも広がっていきました。
台湾や中国大陸での名称は「珍珠奶茶」や、それを省略した「珍奶」(ジェンナイ)、日本では「タピオカミルクティー」「タピオカティー」「タピオカドリンク」など。英語では「パールミルクティー」などと呼ばれています。
90年代末には北京の路上に「台湾・珍珠奶茶」と書かれた屋台が登場していました。北京で生ものは厳禁と言われていたのですが、あまりの暑さについゴクゴク飲んでしまってひどい下痢に見舞われたことがあります。北京には何度も行っているのですが、お腹をこわしたのは後にも先にもこの時だけ。やはり冷たい飲み物はきちんとした店で飲まないと危ないです。
様々なタピオカミルクティー
一般的にタピオカミルクティーと呼ばれるものは、紅茶に砂糖と牛乳、黒いタピオカパール、氷を混ぜたものです。
最近は紅茶だけでなく緑茶や烏龍茶バージョンもありますし、台湾ではフルーツやコーヒーゼリー、豆花(ドウホア…豆腐の一種でより柔らかい)、仙草(シエンツァオ…薬草の一種)ゼリーなどを混ぜたり、トッピングとしてこれらを選ぶことができたりもします。
こうして作ったドリンクをタピオカより少し太めのストローで吸い上げて食べたり飲んだりするというのがタピオカミルクティーのもう一つのウリとなっています。
タピオカミルクティーは最初台湾の学生たちの人気を集めて塾の近くなどでよく売れたそうですから、基本若い人たち目当てのデザートだったのでしょう。太目のストローで吸い上げて食べるなんて中学生たちが喜びそうです。
幼児や老人は喉に詰めたり気管に吸い込まないよう、スプーンで食べた方が無難だろうと思います。
ホットタピオカミルクティーも
台湾の喫茶店ではホットタピオカミルクティーを出すお店もあります。中国人は若い人以外は夏でも冷たいものは飲みたがらず、ビールも冷やしませんからこの飲み方の方が納得です。氷の入った冷たいドリンクはたとえ南国台湾でも若い人向け、少なくとも最初はそうだったのではないかと想像します。
最近の若い中国人は冷たいドリンクを飲むようになっていますが、この人たちが年を重ねたらどうなるのかとても興味があります。そのくらい中国人は冷たい飲み物を体を冷やすと言って嫌がり、現にすぐお腹を壊してしまうのです。
その点台湾の人は南国育ちですから、大陸同様中医学が浸透しているとしても少し違うかもしれません。
台湾とはいえ中国文化の中からタピオカミルクティーという氷入りの冷たいドリンクが現れたというのは、中国文化ウォッチャーの日本人からすると実はとても面白い現象です。