七十二候の意味と歴史【2024年のカレンダー付き】

七十二候

七十二候しちじゅうにこうとは1年を24に分割した二十四節気のそれぞれをさらに3分割した暦で、1つ1つの候にはその時期を表す名前がついています。

ここでは七十二候の歴史や説明、七十二候の意味の紹介などをしていきます。また、2024年の七十二候のカレンダーを用意しています。

七十二候とは

七十二候しちじゅうにこうとは古代中国で作られた暦のことで、主に農作業の目安のために作られました。

立春とか夏至、秋分、冬至などの言葉を聞いたことがあるでしょう。これらは「二十四節気」と言ってやはり農事暦です。二十四節気は1日の日照時間(地球と太陽の位置関係で決まります)を元に1年を24の季節に分けた暦のことです。七十二候はその二十四節気一つ一つをさらに三分割したもので、季節の変化をきめ細かくとらえて農作業に生かそうとしました。

二十四節気
二十四節気。

日本に取り入れられた二十四節気・七十二候

二十四節気-江戸時代

二十四節気」や「七十二候」は平安時代に日本の暦に取り入れられましたが、中国大陸と日本列島では位置も地理も違います。そこで後に渋川春海という江戸時代の天文暦学者が日本の気候に合わせて改訂版を出し、その後明治時代にも新たに「略本暦」が出てそれまでの「七十二候」を大幅に変えました。現在使われている日本の七十二候はこれが元になっています。

二十四節気と七十二候

二十四節気は「立春」「雨水」「穀雨」など二字の漢字で季節の特徴を表していますが、中国から伝わった七十二候は漢字三文字、四文字で書かれていてより詳しく季節の特徴を説明しています。日本人の目から見ると、漢字二文字の二十四節気は、伝わるイメージがすぐわかるのですが、三文字四文字になると語順の違いもあり、さっぱり意味がわからなくなります。さらに「陰陽」的な思想も入っているようで、ますますわかりにくいものになっています。この中国の暦を取り入れてしばらくすると改訂版を作ろうということになったのもよくわかります。

七十二候・日中の違い

七十二候に日本バージョンを作ろうということになったのは、まずはその時期の気候が異なるからですが、それ以外にも季節への感性が違ったのではないかと感じます。以下に日本の七十二候と中国の七十二候を並べて書いてありますので、その違いを感じてみてください。日本の七十二候はあくまで季節の美しさを田園的風景の中にとらえていますが、中国の場合自然界の冷酷な掟・弱肉強食の世界も遠慮なく描いています。

日本の七十二候は農事暦であると同時に、明らかに季節美を味わう世界ですが、中国の七十二候に季節美を伝えようという感性は感じません。と言うと言いすぎかもしれませんが、少なくても季節美を強調する意図はないでしょう。

また中国の七十二候それぞれについて中国の本(道教系ではない)を読みますと古書からの引用に陰陽思想が濃厚に入っていることを感じます。たとえば「秋分」の三候のうち初候について、「『雷声を収め始める』とあるのは、古人が雷は陽の気が盛んになることで音を発すると考えていて、秋分の後は陰の気が旺盛になり始めるので雷鳴が鳴ることはなくなるとしたのだ」とあります。

中国の七十二候についてはこうした説明がとても多く、七十二候は季節の変化をとらえると同時にその理由を陰陽から解釈したもの、あるいは陰陽思想から解釈した季節の変化を書いたものと言えるのかもしれません。

日本の七十二候についてこういう道教的説明があるのかどうか、江戸時代にはあったのかどうか、手元の資料ではわかりませんが、道教が日本に入ってはいても根付かなかったことを思うとそうしたものはないのではないかと思います。

七十二候の一覧と読み方

七十二候の一覧表
四季二十四節気七十二候
立春りっしゅん
2月4日頃

2月18日頃
東風はるかぜこおり
黄鶯睍うぐいす
うおこおりのぼ
雨水うすい
2月19日頃

3月5日頃
土脈どみゃくうるおこる
かすみはじめてたなび
草木くさきうご
啓蟄けいちつ
3月6日頃

3月20日頃
すごもりのむしひら
ももはじめてわら
菜虫なむしちょう
春分しゅんぶん
3月21日頃

4月4日頃
すずめはじめてくう
さくらはじめてひら
かみなりこえはっ
清明せいめい
4月5日頃

4月19日頃
玄鳥つばめきた
鴻雁こうがんきたへかえる
にじはじめてあらわ
穀雨こくう
4月20日頃

5月4日頃
あしはじめてしょう
しもんでなえ
牡丹ぼたんはなさく
立夏りっか
5月5日頃

5月20日頃
かわずはじめて
蚯蚓みみずずる
竹笋たけのこしょう
小満しょうまん
5月21日頃

6月5日頃
かいこきてくわ
紅花べにばなさか
麦秋ばくしゅういた
芒種ぼうしゅ
6月6日頃

6月20日頃
螳螂かまきりしょう
腐草ふそうほたる
梅子うめのみなり
夏至げし
6月21日頃

7月6日頃
乃東なつかれくさかる
菖蒲しょうぶはなさく
半夏はんげしょう
小暑しょうしょ
7月7日頃

7月22日頃
温風おんぷういた
はすはじめてひら
たかすなわちわざなら
大暑たいしょ
7月23日頃

8月6日頃
きりはじめてはなむす
つちうるおいてあつ
大雨たいうときどき
立秋りっしゅう
8月7日頃

8月22日頃
涼風りょうふういた
寒蝉ひぐらし
蒙霧のうむ升降しょうこう
処暑しょしょ
8月23日頃

9月7日頃
綿わたはなしべひら
天地てんちはじめてさむ
こくものすなわちみの
白露はくろ
9月8日頃

9月22日頃
草露くさつゆしろ
鶺鴒せきれい
玄鳥つばめ
秋分しゅうぶん
9月23日頃

10月7日頃
かみなりすなわちこえおさ
すごもりのむしとざ
みずはじめてかれ
寒露かんろ
10月8日頃

10月22日頃
鴻雁こうがんきた
菊花きっかひら
蟋蟀きりぎりす
霜降そうこう
10月23日頃

11月6日頃
しもはじめて
しぐれときどきほどこ
もみじつたなり
立冬りっとう
11月7日頃

11月21日頃
山茶つばきはじめてひら
はじめてこお
金盞きんせんこうば
小雪しょうせつ
11月22日頃

12月6日頃
にじかくれてえず
朔風さくふうはら
たちばなはじめてなり
大雪たいせつ
12月7日頃

12月21日頃
そらさむふゆ
くまあなこも
鱖魚さけむらがる
冬至とうじ
12月22日頃

1月4日頃
乃東なつかれくさしょう
しかつのつる
雪下せっかむぎだす
小寒しょうかん
1月5日頃

1月19日頃
せりすなわちさか
水泉すいせんうご
きじはじめて
大寒だいかん
1月20日頃

2月3日頃
款冬ふきのとうはなさく
水沢みずさわあつかた
にわとりはじめてにゅう

2024年の七十二候のカレンダー

2024年1月

七十二候のカレンダー-2024年1月

2024年2月

七十二候のカレンダー-2024年2月

2024年3月

七十二候のカレンダー-2024年3月

2024年4月

七十二候のカレンダー-2024年4月

2024年5月

七十二候のカレンダー-2024年5月

2024年6月

七十二候のカレンダー-2024年6月

2024年7月

七十二候のカレンダー-2024年7月

2024年8月

七十二候のカレンダー-2024年8月

2024年9月

七十二候のカレンダー-2024年9月

2024年10月

七十二候のカレンダー-2024年10月

2024年11月

七十二候のカレンダー-2024年11月

2024年12月

七十二候のカレンダー-2024年12月

各節季ごとの七十二候の意味

では以下に各節気とともに、日本の七十二候(各節気にそれぞれ三つ、それを初候・次候・末候と呼びます)と中国の七十二候を同様に紹介します。

立春の七十二候

黄鶯睍睆く

「立春」の三候はそれぞれ、初候「東風はるかぜこおりく」(新暦2月4日頃~2月8日頃)・次候「黄鶯睍うぐいすく」(新暦2月9日頃~2月13日頃)・末候「うおこおりのぼる」(新暦2月14日頃~2月18日頃)の3つ、春風が吹いて川などの氷が解け出し、ウグイスがホーホケキョと鳴き始め、湖に張った氷が薄くなって、そこから魚が飛び跳ねているとなっています。

中国の「立春」三候は、初候「東風解凍」、次候「蟄虫始振」、三候「魚陟負冰」で、次候と末候が異なります。「春風が吹いて氷が解け、冬眠していた虫たちが目覚めて動き出し、河に張っていた厚い氷が解け出して、魚たちが氷のかけらを背中に乗せている」という意味です。

雨水の七十二候

草木萌え動く

雨水の三候はそれぞれ、初候「土脈どみゃくうるおこる」(新暦2月19日~2月23日)・次候「かすみはじめてたなびく」(新暦2月24日~2月28日)・末候「草木くさきうごく」(新暦3月1日~3月4日)です。春の大地は潤い、山々に霞がぼおっとたなびき、草木が芽を出し始める季節です。

中国の「雨水」三候は、初候「獺祭魚」、次候「鴻雁北」、三候「草木萌動」で、初候と次候が日本と異なります。「カワウソが捕った魚を供物のように並べ、雁の群れが北へ帰っていき、草木が芽を出し始める」という意味になります。

啓蟄の七十二候

桃の花

啓蟄の三候はそれぞれ、初候「すごもりのむしひらく」(新暦3月5日頃~3月9日頃)・次候は「ももはじめてわらう」(新暦3月10日頃~3月14日頃)・末候は「菜虫なむしちょうす」(新暦3月15日頃~3月19日頃)。冬ごもりをしていた虫がうごめき出し、桃の花が咲き始め、さなぎが蝶になって舞い始める、となっています。

中国の「驚蟄」三候は、「桃始華」「倉庚鳴」「鷹化為鳩」で、「桃の花が咲き、ウグイスが鳴き、猛禽類のタカが春の陽気にハトに変わってしまう」という意味です。

春分の七十二候

桜

春分の三候はそれぞれ、初候「すずめはじめてくう」(新暦3月20日頃~3月24日頃)・次候「さくらはじめてひらく」(新暦3月25日頃~3月29日頃)・末候「かみなりこえはっす」(新暦3月30日頃~4月3日頃)があります。雀が巣を作り始め、桜のつぼみがほころび始め、春雷が鳴り始めるとなっています。

中国の「春分」三候は、初候「玄鳥至」・次候「雷乃發聲」・3候「始電」で、「ツバメが南からやってきて、春雷が鳴り、春の光が輝く」という意味です。

清明の七十二候

ツバメ

清明の三候はそれぞれ、初候「玄鳥つばめきたる」(新暦4月4日頃~4月8日頃)・次候「鴻雁こうがんきたへかえる」(新暦4月9日頃~4月13日頃)・末候「にじはじめてあらわる」(新暦4月14日頃~4月19日頃)となっています。「燕が南からやってきて、雁は北へ帰り、雨が上がると春の空に虹がかかる」という景色です。

中国の「清明」三候は、「桐始華」「田鼠化為鴽」「虹始見」で、「桐の花が咲き、陰を好む野ネズミがいなくなり、雨の後の空に虹がかかるようになる」という意味です。

穀雨の七十二候

牡丹

穀雨の三候はそれぞれ、初候は「あしはじめてしょうず」(新暦4月20頃~24日頃)・次候は「しもんでなえず」(新暦4月25頃~29日頃)・末候は「牡丹ぼたんはなさく」(新暦4月30頃~5月4日頃)です。「川辺の葦が芽吹き、霜が降りることがなくなって苗が育ち始め、牡丹の花が咲く」季節です。

中国の「穀雨」三候は、「萍始生」「鳴鳩拂其羽」「戴勝降于桑」で、「河の浮草が育ち、ハトが羽繕いをし、ヤツガシラ(という鳥)が桑の木にとまる」という意味です。

立夏の七十二候

タケノコ

立夏の三候はそれぞれ、初候は「かわずはじめてく」(新暦5月5日頃~9日頃)、次候は「蚯蚓みみずずる」(新暦5月10日頃~14日頃)、末候は「竹笋たけのこしょうず」(新暦5月15日頃~20日頃)です。田んぼから蛙の鳴き声が聞こえ始め、ミミズが這い出し、竹林のあちこちからタケノコが頭を出している季節です。

中国の「立夏」三候は、「螻蟈鳴」「蚯蚓出」「王瓜生」で、「蛙が鳴き、ミミズが現れ、カラスウリが赤くなる」という意味です。

小満の七十二候

桑

小満の三候には、初候「かいこきてくわう」(新暦5月21日頃~25日頃)、次候「紅花べにばなさかう」(新暦5月26日頃~30日頃)、末候「麦秋ばくしゅういたる」(新暦5月31日頃~6月4日頃)があります。「蚕が桑の葉を食べ、紅花が一面に咲き、麦も収穫の時期を迎えている」季節です。

中国の「小満」三候は、「螳螂生」「腐草為蛍」「梅子黄」で、「キリギリスが生まれ、枯草からホタルが生まれ、梅の実が黄色く熟す」という意味です。

芒種の七十二候

ホタル

芒種の三候には、初候「螳螂かまきりしょうず」(新暦6月5日頃~9日頃)、次候「腐草ふそうほたるる」(新暦6月10日頃~15日頃)、末候「梅子うめのみなり」(新暦6月16日頃~20日頃)があります。「かまきりが生まれ、草が枯れたところからホタルが生まれ、梅の実が熟して黄色くなる」季節です。

中国の「芒種」三候は、「螳螂生」「鵑始鳴」「反舌無聲」で、「カマキリが生まれ、モズが鳴き、コロウタドリは鳴くのをやめる」という意味です。

夏至の七十二候

アヤメ

夏至の三候には、初候「乃東なつかれくさかるる」(新暦6月21日頃~25日頃)、次候「菖蒲しょうぶはなさく」(新暦6月26日頃~30日頃)、末候「半夏はんげしょうず」(新暦7月1日頃~6日頃)があります。「ウツボグサの花穂が黒ずんだ色になり、アヤメの花が咲き、半夏が生え始める季節です。

中国の「夏至」三候は、初候「鹿角解」・次候「蜩始鳴」・末候「半夏生」で、「鹿のツノが自然に落ち、セミが鳴き始め、半夏生という薬草が咲く」という意味です。

小暑の七十二候

蓮の花

小暑の三候には、初候「温風おんぷういたる」(新暦7月7日頃~11日頃)、次候「はすはじめてひらく」(新暦7月12日頃~16日頃)、末候「たかすなわちわざならう」(新暦7月17日頃~21日頃)があります。「時折熱風が吹き、蓮の花が咲き始め、鷹のヒナが飛び方を覚える」という季節です。

中国の小暑の三候は初候「温風至」・次候「蟋蟀居壁」・末候「鷹始摯」とあり、「熱い風が吹き、コオロギが壁を伝い、鷹が猛々しさを覚え始める季節」です。

大暑の七十二候

桐の花

大暑の三候には、初候「きりはじめてはなむすぶ」(新暦7月22日頃~27日頃)、次候「つちうるおいてあつし」(新暦7月28日頃~8月1日頃)、末候「大雨たいうときどきる」(新暦8月2日頃~6日頃)があります。「桐の花が実をつけ、土から発散される熱気は蒸し暑く、にわか雨が時々猛烈に降り出す」季節です。

中国の大暑の三候は、初候だけ上と異なり「腐草蛍と為る」となっていて、日本版七十二候では「芒種」の次候に来ているものがここで使われています。

立秋の七十二候

蒙霧升降す

立秋の三候には、初候「涼風りょうふういたる」(新暦8月7日頃~11日頃)、次候「寒蝉ひぐらしく」(新暦8月12日頃~16日頃)、末候「蒙霧のうむ升降しょうこうす」(新暦8月17日頃~22日頃)があります。涼しい風が初めて吹いて秋の気配を感じさせ、ひぐらしが「カナカナカナ…」と鳴き始め、朝方には霧がたちこめる季節です。

中国の立秋の三候は、次候のみ日本と異なり「白露生」となっていて、これは「大気が冷えてきて朝方の草むらに露を見る季節」です。

処暑の七十二候

綿の実

処暑の三候には、初候「綿わたはなしべひらく」(新暦8月23日頃~27日頃)、次候「天地てんちはじめてさむし」(新暦8月28日頃~9月1日頃)、末候「こくものすなわちみのる」(新暦9月2日頃~6日頃)があります。綿の実がはじけて中から白い綿が顔を出し、暑さはやわらぎイネや麦などの穀物が収穫の時を迎える季節です。

中国の処暑の三候のうち初候のみ日本版と異なり「鷹乃祭鳥」になっていて、これは「鷹が鳥たちを捕獲し始める季節」という意味です。

白露の七十二候

セキレイ

白露の三候には、初候「草露くさつゆしろし」(新暦9月7日頃~11日頃)、次候「鶺鴒せきれいく」(新暦9月12日頃~16日頃)、末候「玄鳥つばめる」(新暦9月17日頃~21日頃)があります。草に降りた露は白く、セキレイが鳴き始め、ツバメが南の国に飛び去っていく季節です。

中国の白露の三候はそれぞれ「鴻雁來」「玄鳥歸」「群鳥養羞」で、「雁が北から飛んできて、ツバメが去り、鳥たちが餌を取って冬に備えている」という季節です。

秋分の七十二候

収穫の時期の田んぼ

秋分の三候には、初候「かみなりすなわちこえおさむ」(新暦9月22日頃~27日頃)、次候「すごもりのむしとざす」(新暦9月28日頃~10月2日頃)、末候「みずはじめてかれる」(新暦10月3日頃~7日頃)があります。雷が鳴らなくなり、虫が巣ごもりし、田んぼから水を抜いて稲刈りをする季節です。

この秋分の三候は中国の七十二候も同じです。

寒露の七十二候

菊

寒露の三候には、初候「鴻雁こうがんきたる」(新暦10月8日頃~12日頃)、次候「菊花きっかひらく」(新暦10月13日頃~17日頃)、末候「蟋蟀きりぎりすり」(新暦10月18日頃~22日頃)があります。雁の群れがやってきて、菊の花が咲き、こおろぎが戸口でさかんに鳴く声が聞こえる季節です。

中国の寒露の三候は「鴻雁來賓」「雀入大水為蛤」「菊有黃花」となっていて、「雁がやってきて、雀が海に入ってハマグリとなり、菊が黄色い花を咲かせている」という意味です。

霜降の七十二候

モミジ

霜降の三候には、初候「しもはじめてる」(新暦10月23日頃~27日頃)、次候「しぐれときどきほどこす」(新暦10月28日頃~11月1日頃)、末候「もみじつたなり」(新暦11月2日頃~6日頃)があります。霜が初めて降り、時雨が時折降り、紅葉や蔦が美しく彩られる季節です。

中国の霜降の三候はそれぞれ「豺乃祭獸」「草木黃落」「蟄蟲咸俯」です。「山犬が獣を捕らえて並べ、木々の葉は紅葉してやがて落ち葉となり、虫たちは巣ごもりする」季節です。

立冬の七十二候

サザンカ

立冬の三候には、初候「山茶つばきはじめてひらく」(新暦11月7日頃~11日頃)、次候「はじめてこおる」(新暦11月12日頃~17日頃)、末候「金盞きんせんこうばし」(新暦11月17日頃~21日頃)があります。山茶花(さざんか)の花が咲き、地面が凍り始め、水仙の花が咲いて良い香りが漂う季節です。

中国の立冬の三候は「水始凍」「地始凍」「雉入大水為蜃」で「水も地も凍り初め、キジが海にはいってハマグリになる」季節です。

小雪の七十二候

朔風葉を払う

小雪の三候には、初候「にじかくれてえず」(新暦11月22日頃~26日頃)、次候「朔風さくふうはらう」(新暦11月27日頃~12月1日頃)、末候「たちばなはじめてなり」(新暦12月2日頃~6日頃)があります。雨の後虹が見えることはなくなり、木枯らしが木々の葉を落とし、橘の実が黄色くなってくる季節です。

中国の小雪の三候はそれぞれ「虹藏不見」「天氣上升,地氣下降」「閉塞而成冬」で、次候、末候が日本と異なります。「雨の後の虹を見ることがなくなり、大気の陽の気は上がり陰の気は下がって天地は巡らず、陰陽も交わらず、万物は生機を失い閉塞して厳寒の冬になる」という季節です。

大雪の七十二候

閉塞く冬と成る

大雪の三候には、初候「そらさむふゆる」(新暦12月7日頃~11日頃)、次候「くまあなこもる」(新暦12月12日頃~15日頃)、末候「鱖魚さけむらがる」(新暦12月16日頃~20日頃)があります。いよいよ冬になったことを実感し、山では熊が冬眠、鮭が産卵のために川を遡上してくる季節です。

中国の大雪の三候はそれぞれ「鶡鴠不鳴」「虎始交」「荔挺出」です。「鶡鴠(かつたん)という鳥は鳴かず、虎は異性を探し始め、荔挺という薬草も芽を出す」という意味です。

冬至の七十二候

雪下麦を出だす

冬至の三候には、初候「乃東なつかれくさしょうず」(新暦12月21日頃~25日頃)、次候「しかつのつる」(新暦12月26日頃~30日頃)、末候「雪下せっかむぎだす」(新暦12月31日頃~1月4日頃)があります。ウツボグサの芽が出てきて、大鹿のツノが落ちて生え変わり、雪の下から麦の芽が出てくる季節です。

中国の冬至の三候はそれぞれ「蚯蚓結」「麇角解」「水泉動」です。「土の中のミミズは丸まっており、鹿のツノが落ち、山の中の泉の水は流れ、温もりを持っている」という意味です。

小寒の七十二候

水泉動く

小寒の三候には、初候「せりすなわちさかう」(新暦1月5日頃~9日頃)、次候「水泉すいせんうごく」(新暦1月10日頃~14日頃)、末候「きじはじめてく」(新暦1月15日頃~19日頃)があります。セリが群生し、凍っていた泉が流れ出し、キジが鳴き始める季節です。

中国の小寒の三候はそれぞれ「雁北鄉」「鵲始巢」「雉雊」です。「雁が北へ向かい、カササギが巣を作り、キジが鳴く」季節です。

大寒の七十二候

フキノトウ

大寒の三候には、初候「款冬ふきのとうはなさく」(新暦1月20日頃~24日頃)、次候「水沢みずさわあつかたし」(新暦1月25日頃~29日頃)、末候「にわとりはじめてにゅうす」(新暦1月30日頃~2月3日頃)があります。蕗(ふき)の花が咲き、沢の氷は厚く硬く張り、鶏が卵を産み始める季節です。

中国の大寒の三候はそれぞれ「雞始乳」「征鳥厲疾」「水沢腹堅」で、次候だけが日本と異なります。次候「征鳥厲疾」とは、鷹や隼(はやぶさ)など猛禽類が空を旋回し、虎視眈々と獲物を狙っているという意味です。