夏至の意味・食べ物・歴史と仕組みの図説

夏至

夏至げしとは二十四節気にじゅうしせっきの1つで、1年で最も昼の時間が長い日です。

このページでは夏至の意味、成り立ち、実際の季節感とのずれ、2024年の夏至の日にちと期間、夏至の七十二候、夏至の食べ物や季節の花などを紹介していきます。

なお、2024年の夏至は6月21日となっています。

夏至とは

夏至

夏至げしとは二十四節気にじゅうしせっきの1つで、「夏の頂点」を意味します。太陽の位置を表す黄経で90度の時を言い、新暦では6月21日~22日ごろですが年によって変わります。夏至は正午における太陽の高度が最も高く、昼間の時間が最も長い日です。

夏至は夏の中間となる節気で、北半球では昼間の時間が最長になり、影は最も短くなり、夏至以降は日が短くなっていきます。

夏至は二十四節気の1つ

二十四節気とは古代中国で作られた暦で、日本では平安時代から使われています。上の図のように1年を24等分し、それぞれに名前を付けたものです。

二十四節気は太陽の運行に基づいており、1年で最も昼の長い日を夏至げし、1年で最も昼の短い日を冬至とうじ、昼と夜の長さが同じ日を春分しゅんぶん秋分しゅうぶんとし、この4つを春・夏・秋・冬の中心として決めた暦です。この4つの節気は合わせて「二至二分にしにぶん」と呼ばれています。

二十四節気の仕組み

この二至二分が二十四節気を決めるうえでの基準となっています。

立夏りっかはこの春分と夏至のちょうど中間の日で、暦の上ではこの日から夏が始まります。

夏の節気は立夏りっか小満しょうまん芒種ぼうしゅ夏至げし小暑しょうしょ大暑たいしょとなっており、夏至は夏の4番目の節気です。

また、立春りっしゅん立夏りっか立秋りっしゅう立冬りっとうの4つを「四立しりゅう」と言い、それぞれ春夏秋冬の始まりの日として重要な節気となっており、二至二分と四立を合わせて「八節はっせつ」と言います。

二十四節気の成立時期
二十四節気の成立時期。殷の頃に二至二分、西周の頃に八節、春秋戦国の頃に二十四節気がそれぞれ成立しました。

2024年の夏至はいつ?

夏至の日にちと期間

二十四節気のそれぞれの節気には、その日1日を意味する場合と、次の節気までの期間を意味する場合があります。

2024年の夏至であれば、以下のようになります。

・日付としての2024年の夏至は6月21日。

・期間としての2024年の夏至は6月21日~7月5日まで。

二十四節気と実際の季節感がずれる理由

二十四節気は「実際の季節感とずれている」と感じることがあります。特に立春(2月上旬)、立夏(5月上旬)、立秋(8月上旬)、立冬(11月上旬)の4つの節気はそれぞれ春夏秋冬の始まりを意味しますが、「春というにはまだ早い」などと感じます。

ここではその「実際の気候とずれる理由」について解説します。

春夏秋冬の決め方

二十四節気

夏至は昼の時間の最も長い日、冬至は昼の時間の最も短い日です。

けれども夏至に最も暑くなり、冬至に最も寒くなるかというとそうではなく、実際にはそれより1~2か月ほど遅れて最も暑い日、最も寒い日がやってきます。

ただし二十四節気はこの「夏至を夏の中心」「冬至を冬の中心」そして「昼と夜の長さが同じ春分・秋分を春の中心と秋の中心」として1年を4等分し、春夏秋冬を決めました。

そのため「立春と言われてもまだまだ寒く、冬と感じる」ということが起こります。

日本と中国との気候の違い

また、二十四節気が作られたのは紀元前の中国黄河流域のため、現在の東京の気候とはややずれがあります。

下の地図の中央左にある洛陽らくようが東周時代の首都で、中原ちゅうげんとはこの周辺一帯を指す言葉です。二十四節気はこの中原で作られたと考えられています。

二十四節気が作られた地域の地図

気候の違いについては以下のグラフを見ながら解説します。

二十四節気が作られた地域の地図

上のグラフは二十四節気が作られた中原ちゅうげん から代表して洛陽を選び、東京と年間の平均最高気温を比べたものです。

グラフの6月あたりを見ると、中国には梅雨と台風がないため暑さのピークが日本よりも1~2か月程度早くなっています。この部分が二十四節気と日本の実際の季節とが最も異なる箇所になります。立夏は5月上旬ですが、中国のグラフでは夏の始まりと言われて納得がいくものの、日本のグラフでは夏はもう少し先と感じます。

日本が1月・2月で気温がほぼ変わらず12月はそれより暖かいのに対し、中国では1月が最も寒く2月より12月の方が冷え込んでいます。これも冬の季節感のずれに繋がっています。

節気には日付と期間の2つの意味がある

また、二十四節気の1つ1つには期間としての意味もあるものの、カレンダーやニュースなどではもっぱら日付としての意味で使われています。このことも二十四節気と日本の実際の季節感がずれる要因となっています。

二十四節気と七十二候

七十二候

「二十四節気」は、古代中国で作られた農事を指導するために作られた暦で、春秋戦国時代(BC.770~BC.221)黄河流域で作られたと言われます。中国では暦として月の運行に基づいた「太陰暦」が使われていましたが、これですと実際の季節とズレが生まれてしまうため、太陽の運行の軌跡を24等分した「二十四節気」や、それをさらに約5日ごとに分割した「七十二候しちじゅうにこう」が作られました。このようにして季節の変化をきめ細かくとらえて農事に生かしたのです。

この「二十四節気」は日本では平安時代に取り入れられました。日本と中国とでは位置も気候も異なり、中国の二十四節気は必ずしもすべてが日本の気候に合うものではありませんでしたが、私たちの生活に根付き、大多数の日本人が農業とは無縁になった現代でもテレビのニュースなどで「今日から立春です」などと使われています。

1年には春夏秋冬4つの季節がありますが、古代中国人はそれをさらに24の「節気」に分けました。1年を24に分けるならそれぞれ約15日、その節気にはまたそれぞれ3つの「候」を設け、3×24で72候、約5日で1つの候としてそれぞれの候にその季節の特徴を表す言葉をつけました。

日本は平安時代からこの二十四節気を暦の中に取り入れましたが、これだけでは日本の気候の説明には足りないので、「雑節」というものを設けました。雑節には、節分・彼岸・八十八夜・入梅・半夏生・土用・二百十日などがあります。

さらに「七十二候」については江戸時代の天文暦学者・渋川春海が日本の気候に合わせて改訂版を出し、その後明治時代に「略本暦」が出てそれまでの「七十二候」を大幅に変えました。現在使われている日本の七十二候はこれが元になっており、上の図に書かれているのもこの七十二候です。

なお2016年に中国の「二十四節気」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。

夏至の七十二候(日本)

乃東枯る
乃東枯る。ウツボグサが変色する頃。

日本の夏至の七十二候は以下のようになります。

夏至の七十二候
内容時期
初候乃東なつかれくさかる6月21日頃

6月25日頃
次候菖蒲しょうぶはなさく6月26日頃

6月30日頃
末候半夏はんげしょう7月1日頃

7月6日頃

「うつぼぐさ」の花穂(穂のように見える花)が黒ずんだ色になり、アヤメの花が咲き、半夏(カラスビシャク)が生え始める季節です。

菖蒲華さく
菖蒲華さく。

夏至の初候「乃東枯る」

ウツボグサ
ウツボグサ。薬としても使われます。

うつぼぐさは6月から8月に紫色の穂のような花を咲かせ、「夏枯草」(かこそう)とも呼ばれます。花穂を煎じたものは消炎作用や利尿作用があり、捻挫や打撲を負った時は塗り薬としても使えます。うがい薬にもなり、英語では「オール・ヒール」(万能薬)と呼ばれています。

夏至の次候「菖蒲華さく」

アヤメ

昔は「アヤメが咲けば梅雨入り」と考えられていました。

アヤメそっくりな紫色の花にカキツバタ、花ショウブがあって、どこがどう違うのか悩ましいのですが、要は花びらの根元の模様が違うのですね。

紫色の花びらの根元に複雑な編み目模様があれば「アヤメ」、花びらの根元に白い線があれば「カキツバタ」、黄色い模様があれば「花ショウブ」です。

水郷の潮来(茨城)や佐原(千葉)には「アヤメ祭り」があり、明治神宮には菖蒲園があってさまざまな種類の花ショウブを見ることができます。この3種のうち、関東では花ショウブが見られる公園が多いようです。

夏至の末候「半夏生ず」

半夏(カラスビシャク)
半夏(カラスビシャク)。

「半夏生」は二十四節気の「雑節」、つまり日本の気候に合わせて作られた節気で、夏至から数えて11日目、田植えを済ませた農家が休息を取る日です。

夏至の七十二候(中国)

中国の夏至の七十二候は、初候「鹿角解」・次候「蜩始鳴」・末候「半夏生」で、「鹿のツノが自然に落ち、セミが鳴き始め、半夏生という薬草が咲く」という意味です。

夏至の「旬の食べ物」

トウモロコシ

トウモロコシ

トウモロコシは6~9月ごろに収穫されます。日本で最も栽培されているのは北海道で、夏至の頃になるとトウモロコシが大量にスーパーに並ぶようになります。

枝豆

枝豆

枝豆もトウモロコシと同じく6~9月に収穫されます。夏の風物詩ですね。

さくらんぼ

さくらんぼ

さくらんぼは5~7月に採れますが、旬の時期は6月になります。

メロン

メロン

メロンには様々な種類がありますが、多くの種類は6月ごろに旬を迎えます。

夏みかん

夏みかん

ほとんどの柑橘類は冬に出回りますが、夏みかんの時期は5~7月。夏至のあたりが旬の時期です。

アンズ

アンズ

アンズは6月下旬~7月中旬に採れます。杏仁豆腐は今ではアーモンドエッセンスなどが使われることが多いですが、もともとはアンズが使われていました。

酸梅湯

酸梅湯

中国の夏の飲み物に「酸梅湯」(スアンメイタン)というのがあります。

中国語が今ほど注目を集めていなかった頃、自分に合った中国語教室を探そうと何か所か見学して歩いていた時、ある教室の中国人の先生がこの酸梅湯を出してくれました。ただの見学者である私に「中国の伝統的な夏の飲み物ですよ」と教えてくれたそのふるまいが、よその国に来たかのような気分を与えてくれて嬉しかった記憶があります。

味はもう覚えていませんが、たぶん甘酸っぱい冷たい飲み物だったような気がします。

「湯」と書いてありますが熱くはありません。冷やして飲んでもいいようですが、中国人は一般に冷やさず飲むようです。

冷えたものは夏でも食べない中国人も「夏至」のころは「酸梅湯」や「冷麺」を飲んだり食べたりするそうです。

夏至の「季節の花」

アジサイ

アジサイ

梅雨の時期になるとアジサイをあちこちで見かけるようになります。6月上旬~7月上旬ごろに咲きます。

桔梗

桔梗

桔梗は秋の七草ですが、夏至のころから咲き始めます。6月~8月ごろに咲きます。

クチナシ

クチナシ

クチナシは6月~7月ごろに咲きます。実が熟しても割れることがないため、クチナシという名が付いたと言われています。

ベニバナ

ベニバナ

ベニバナは昔から染料として使われてきました。6月下旬~7月上旬ごろに咲きます。

夏至の関連ページ

夏至の項は以上で終了となりますが、このサイトでは夏至の1つ前の節気「芒種ぼうしゅ」や、夏至の次の節気「小暑しょうしょ」、また「二十四節気にじゅうしせっき」や「七十二候しちじゅうにこう」についてもリンク先で詳しく紹介しています。