小満の意味・食べ物・歴史と仕組みの図説
小満とは二十四節気の1つで、立夏の次、夏の2番目にあたる節気です。
このページでは小満の意味、成り立ち、実際の季節感とのずれ、2024年の小満の日にちと期間、小満の七十二候、小満の食べ物や季節の花などを紹介していきます。
なお、2024年の小満は5月20日となっています。
目次
- 1. 小満とは
- 2. 2024年の小満はいつ?
- 3. 二十四節気と実際の季節感がずれる理由
- 4. 二十四節気と七十二候
- 5. 小満の七十二候(日本)
- 6. 小満の七十二候(中国)
- 7. 小満の頃の農村を描いた漢詩
- 8. 小満の「旬の食べ物」
- 9. 小満の「季節の花」
- 10. 小満の関連ページ
小満とは
小満とは二十四節気の1つで、「作物が膨らむもののまだ収穫はできない時期」を意味します。太陽の位置を表す黄経で60度の時を言い、新暦では5月21日~22日ごろですが年によって変わります。
二十四節気の作られた中国北方では、このころから大麦や小麦など夏の作物が実って穂が膨らんできますが、まだ成熟はしていません。そこでこの季節には「小満」という名がつけられています。
小満は二十四節気の1つ
二十四節気とは古代中国で作られた暦で、日本では平安時代から使われています。上の図のように1年を24等分し、それぞれに名前を付けたものです。
二十四節気は太陽の運行に基づいており、1年で最も昼の長い日を夏至、1年で最も昼の短い日を冬至、昼と夜の長さが同じ日を春分・秋分とし、この4つを春・夏・秋・冬の中心として決めた暦です。この4つの節気は合わせて「二至二分」と呼ばれています。
この二至二分が二十四節気を決めるうえでの基準となっています。
立夏はこの春分と夏至のちょうど中間の日で、暦の上ではこの日から夏が始まります。
夏の節気は立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑となっており、小満は夏の2番目の節気です。
また、立春・立夏・立秋・立冬の4つを「四立」と言い、それぞれ春夏秋冬の始まりの日として重要な節気となっており、二至二分と四立を合わせて「八節」と言います。
2024年の小満はいつ?
二十四節気のそれぞれの節気には、その日1日を意味する場合と、次の節気までの期間を意味する場合があります。
2024年の小満であれば、以下のようになります。
・日付としての2024年の小満は5月20日。
・期間としての2024年の小満は5月20日~6月4日まで。
二十四節気と実際の季節感がずれる理由
二十四節気は「実際の季節感とずれている」と感じることがあります。特に立春(2月上旬)、立夏(5月上旬)、立秋(8月上旬)、立冬(11月上旬)の4つの節気はそれぞれ春夏秋冬の始まりを意味しますが、「春というにはまだ早い」などと感じます。
ここではその「実際の気候とずれる理由」について解説します。
春夏秋冬の決め方
夏至は昼の時間の最も長い日、冬至は昼の時間の最も短い日です。
けれども夏至に最も暑くなり、冬至に最も寒くなるかというとそうではなく、実際にはそれより1~2か月ほど遅れて最も暑い日、最も寒い日がやってきます。
ただし二十四節気はこの「夏至を夏の中心」「冬至を冬の中心」そして「昼と夜の長さが同じ春分・秋分を春の中心と秋の中心」として1年を4等分し、春夏秋冬を決めました。
そのため「立春と言われてもまだまだ寒く、冬と感じる」ということが起こります。
日本と中国との気候の違い
また、二十四節気が作られたのは紀元前の中国黄河流域のため、現在の東京の気候とはややずれがあります。
下の地図の中央左にある洛陽が東周時代の首都で、中原とはこの周辺一帯を指す言葉です。二十四節気はこの中原で作られたと考えられています。
気候の違いについては以下のグラフを見ながら解説します。
上のグラフは二十四節気が作られた中原 から代表して洛陽を選び、東京と年間の平均最高気温を比べたものです。
グラフの6月あたりを見ると、中国には梅雨と台風がないため暑さのピークが日本よりも1~2か月程度早くなっています。この部分が二十四節気と日本の実際の季節とが最も異なる箇所になります。立夏は5月上旬ですが、中国のグラフでは夏の始まりと言われて納得がいくものの、日本のグラフでは夏はもう少し先と感じます。
日本が1月・2月で気温がほぼ変わらず12月はそれより暖かいのに対し、中国では1月が最も寒く2月より12月の方が冷え込んでいます。これも冬の季節感のずれに繋がっています。
節気には日付と期間の2つの意味がある
また、二十四節気の1つ1つには期間としての意味もあるものの、カレンダーやニュースなどではもっぱら日付としての意味で使われています。このことも二十四節気と日本の実際の季節感がずれる要因となっています。
二十四節気と七十二候
「二十四節気」は、古代中国で作られた農事を指導するために作られた暦で、春秋戦国時代(BC.770~BC.221)黄河流域で作られたと言われます。中国では暦として月の運行に基づいた「太陰暦」が使われていましたが、これですと実際の季節とズレが生まれてしまうため、太陽の運行の軌跡を24等分した「二十四節気」や、それをさらに約5日ごとに分割した「七十二候」が作られました。このようにして季節の変化をきめ細かくとらえて農事に生かしたのです。
この「二十四節気」は日本では平安時代に取り入れられました。日本と中国とでは位置も気候も異なり、中国の二十四節気は必ずしもすべてが日本の気候に合うものではありませんでしたが、私たちの生活に根付き、大多数の日本人が農業とは無縁になった現代でもテレビのニュースなどで「今日から立春です」などと使われています。
1年には春夏秋冬4つの季節がありますが、古代中国人はそれをさらに24の「節気」に分けました。1年を24に分けるならそれぞれ約15日、その節気にはまたそれぞれ3つの「候」を設け、3×24で72候、約5日で1つの候としてそれぞれの候にその季節の特徴を表す言葉をつけました。
日本は平安時代からこの二十四節気を暦の中に取り入れましたが、これだけでは日本の気候の説明には足りないので、「雑節」というものを設けました。雑節には、節分・彼岸・八十八夜・入梅・半夏生・土用・二百十日などがあります。
さらに「七十二候」については江戸時代の天文暦学者・渋川春海が日本の気候に合わせて改訂版を出し、その後明治時代に「略本暦」が出てそれまでの「七十二候」を大幅に変えました。現在使われている日本の七十二候はこれが元になっており、上の図に書かれているのもこの七十二候です。
なお2016年に中国の「二十四節気」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。
小満の七十二候(日本)
日本の小満の七十二候は以下のようになります。
内容 | 時期 | |
---|---|---|
初候 | 蚕起きて桑を食う | 5月21日頃 | 5月25日頃 |
次候 | 紅花栄う | 5月26日頃 | 5月30日頃 |
末候 | 麦秋至る | 5月31日頃 | 6月4日頃 |
蚕が桑の葉を食べ、紅花が一面に咲き、麦も収穫の時期を迎えている季節です。「麦秋」は収穫の季節を意味する言葉です。
小満の初候「蚕起きて桑を食う」
蚕とシルク
小満の初候は「蚕起きて桑を食う」。農村が身近でなくなった現代人には、なんとなく美しい情景であることはわかるものの、私たちとは無縁の季節感です。蚕という大きな毛虫はこの時期桑の葉をもりもり食べて繭(まゆ)を作り、この繭がやがてシルクになります。シルクの手触りを知っている人は、シルクが他の繊維とはまったく違うことがわかります。ツルツルしていて皺にならず、それでいて化学繊維の安っぽさがまったくありません。これがカイコガという蛾の毛虫から吐き出されたものとは思えません。初めてカイコガからシルクを作り出したのは古代中国人。ユーラシア大陸の西の人々はその作り方がどうしてもわからず中国から買うしかなかったことが、あの「シルクロード」という中国と中東やヨーロッパを結ぶ道を作り出しました。
桑の木
シルクつまり絹の製法が日本に伝わったのは弥生時代と言いますから、日本人と蚕の縁はずいぶん古くからあったのですね。
蚕の餌は桑の葉、桑畑がほとんどなくなった現在でも道沿いに時折桑の木を見かけます。昔そのあたりで桑を育てていた名残でしょう。赤い実をつけていて口に入れてみると甘酸っぱいです。「小満」の季節、桑の葉もまた摘みごろでした。
小満の次候「紅花栄う」
紅花(べにばな)もまた聞いたことがあるようなないような。紅花はエジプト原産でシルクロードを経て日本に伝わり、かつて口紅などの原料として栽培されました。昔は「呉藍(くれのあい)」と呼び、呉つまり中国から来た染料という意味で、「くれのあい」が「紅(くれない)」になったと言います。
別名を「末摘花(すえつむはな)」とも言い、『源氏物語』の登場人物の名としても有名です。紅花を末摘花と呼ぶのは茎の先端につく花を摘み取って染料にするからです。『源氏物語』に出てくる「末摘花」は不器量な姫君のあだ名ですが、鼻の先が赤かったので主人公・光源氏からこうあだ名されてしまいます。
小満の末候に出てくる「麦秋」とは
5月から6月にかけての初夏に「麦秋」とはどういうことなのでしょうか。実は「秋」には「穀物が実るとき」という意味があります。「麦秋」は「麦が実る時」という意味になるのですね。
黒澤明と並んで日本を代表し、海外でも人気の映画監督に小津安二郎がいますが、「紀子三部作」と呼ばれる小津作品の一つに『麦秋』があります。あとの二つは『晩春』と『東京物語』、いずれも日本美人女優史に名を残す原節子が「紀子」役を演じています。1951年の作品。なぜ「麦秋」なのかよくわかりませんが、「晩春」の次の作品が「麦秋」、結婚がテーマの作品ですので「実りのとき」としたのでしょうか?
小満の七十二候(中国)
中国の小満の七十二候は、「螳螂生」「腐草為蛍」「梅子黄」で、「キリギリスが生まれ、枯草からホタルが生まれ、梅の実が黄色く熟す」という意味です。
小満の頃の農村を描いた漢詩
宋の範成大に初夏を歌った七言絶句があります。
梅子金黄杏子肥
麦花雪白菜花稀
日長籬落無人過
惟有蜻蜓蛺蝶飛
梅の実は黄金色に熟し、杏の実はふくらみ
畑は白い麦の花一色で、菜の花はもうまばらだ
日は長くなって、竹で編んだ垣根を通る人もなく
トンボや蝶だけがあたりを飛び交っている
人は農作業で忙しく、ひっそりと静まり返った村は
果物の実や麦の花で彩られ、トンボやチョウチョだけが飛び交っている
農村の初夏の美しい風景です。
小満の「旬の食べ物」
メロン
メロンには様々な品種がありますが、そのほとんどが小満のころから出回り始めます。
ビワ
ビワは4~6月ごろに採れますが、旬の時期と言えるのは5月下旬~6月上旬ごろです。
夏みかん
夏みかんは5~7月ごろに食べられます。小満のころからスーパーなどで見かけるようになりますね。
小満の「季節の花」
シャクヤク
高貴な花と言われるシャクヤクは5月中旬~5月下旬に咲きます。
アヤメ
アヤメが咲くのは4月下旬~5月下旬ごろ。野山に咲きます。
小満の関連ページ
小満の項は以上で終了となりますが、このサイトでは小満の1つ前の節気「立夏」や、小満の次の節気「芒種」、また「二十四節気」や「七十二候」についてもリンク先で詳しく紹介しています。