笙(しょう)の歴史と構造

笙

笙とは

笙の写真
笙の写真。

」とは中国の古代楽器の一つで、長さの違う10数本~20数本の竹管を用いた管楽器です。底部の共鳴器から息を吹き込み音を鳴らします。

中国では紀元前の春秋時代ごろから「八音」という考え方があり、宮廷音楽には「金(金属)・石・土(陶器)・皮・糸・木・ひさご瓢箪ひょうたん)・竹」の8種類からなる楽器を用いていましたが、この「笙」はその八音の中の「匏」(瓢箪)にあたります。古くは共鳴部(底部)に匏が用いられていました。

日本では「しょう」と聞くと、お正月にテレビからよく流れてくる雅楽の音楽が浮かびますが、日本には奈良時代に唐から「雅楽・きん琵琶篳篥ひちりき」などとともに伝わりました。

笙を雅楽に使われる単調な楽器と思うと大間違いで、まるでパイプオルガンのような重厚な音が流れます。一つの楽器なのに和音を出すことができ、他楽器と合奏する時は音程の規準にもなります。

唐代の笙の像
唐代の笙の像。唐代は芸術が重宝された時代で、笙も雅楽で用いられました。
南唐の雅楽の絵
南唐の雅楽の絵。右上と左下が笙。
清代のおもちゃの笙の絵
清代のおもちゃの笙の絵。

笙を作ったのは伝説の女神「女媧」!?

女媧
女媧。

中国の神話では「笙」は女媧じょか(人類創造の女神)が作ったと言われています。

女媧が作った笙は、半分に切ったヒョウタンに管が13本差し込まれ、鳳凰の尾のような形をしていました。

この笙は今も中国西南部に住むミャオ族やトン族の間で演奏されていて「蘆笙」と呼ばれています。この蘆笙の作り方は古代の笙とほとんど同じです。古代の笙はヒョウタンを使っていましたが、今はくりぬいた木を共鳴器として使っています。

ミャオ族の祭りと笙

ミャオ族やトン族は、二月から三月の月夜の晩に、田畑の平坦な土地(「月場」と言います)に正装をした若い男女が集まって蘆笙を吹きながら輪になって踊ります。これを「跳月」と言い、一晩中踊って意中の相手を見つけるのです。笙という楽器はもともと男女の愛や結婚と密接な関係がありました。

ミャオ族にはまた「蘆笙祭り」という祭りがあり、この祭りでは男性が蘆笙を吹き、未婚の女性は魔除けとして牛のツノや龍の髪飾りをかぶって踊ります。この祭りの日には彼らの住む貴州の山あいに、重厚な蘆笙の音と銀の髪飾りが触れ合う音が響き渡ります。この祭りもまた若い男女の出会いの場になっています。