コウモリ 【中国文化】
目次
- 1. あの不気味なコウモリが中国では人気者!?
- 2. 吉祥の印コウモリ文様
- 3. コウモリ屋敷の恭王府
- 3-1. 至るところにコウモリのデザイン
- 3-2. なぜ9999?
- 3-3. コウモリのデザインは美しいシンメトリー
- 3-4. 幸せのシンボルマーク・コウモリを見に行くなら恭王府
あの不気味なコウモリが中国では人気者!?
同音や似た音でゲンを担ぐものとして、中国では「蝙蝠(コウモリ)」があります。コウモリは中国語では“蝙蝠 biānfú”と言い、“变福 biànfú”(福に変わる)と音が似ているので縁起物なのです。
コウモリってドラキュラの仲間でしょ?墓場のあたりを不気味にバタバタ飛んでいるあれがなんで?と思うかもしれませんが、中国ではありがたい、大事な存在だと言うのですから所変われば品変わるです。
吉祥の印コウモリ文様
コウモリ文様は古い中国のおめでたい印としていろいろなところに用いられています。建物の一部、家具、衣服、ブレスレット、髪飾りなど枚挙にいとまがありません。あんな不気味なものが…と思うかもしれませんが、文様化され実に美しく作られています。一見コウモリ模様とは思えないのですが、よくよく見ると左右に翼を広げ丸い目をしたコウモリです。
コウモリってドラキュラの仲間でしょ? 墓場のあたりを不気味にバタバタ飛んでいるあれがなんで? と思うかもしれませんが、中国ではありがたい、大事な存在だと言うのですから所変われば品変わるです。
コウモリ屋敷の恭王府
北京観光をする時定番というか、二番手くらいの観光地ですが「恭王府」という場所があります。「王府」というのは皇帝の親族の屋敷のことで、清朝時代の貴族や権勢を誇った臣下の屋敷跡です。かの有名な『紅楼夢』(中国四大小説の一つ)の舞台のモデルとも言われる美しい屋敷跡で、保存がよく北京有数の観光スポットになっています。北京の中央に浮かぶ“什刹海”Shíchàhǎiという湖(前海、後海、西海の三つの湖を指す)のすぐそばにあります。ところでこのお屋敷、コウモリの飾り物だらけです。
至るところにコウモリのデザイン
このお屋敷、広大な敷地を持つのですが、その庭にある池の名を“蝠池”Fúchíと言います。コウモリ、すなわち蝙蝠の形に似せてあるので蝠の字を取ってこう名付けられているのです。蝙ではなく蝠(福)こそ大事なんですね。福を願った池なのでしょう。
また窓枠や欄間(らんま)(天井と鴨井(かもい)の間にある採光用などの建具(たてぐ))などいたるところにコウモリの形の飾り。全部で9999あるそうです。不気味じゃないの?という声があがりそうですが、このデザインが何ともオシャレ。不気味なんかじゃありませんよ。なにしろ福よ来いという祈りが込められているのですから。
なぜ9999?
ちなみになぜ9999なのかというと、このお屋敷には清の第4代皇帝康熙帝が自ら筆を執った「福」という字の石碑があります。これを入れてちょうど1万、つまり恭王府は「万福の園」つまり福が一万ある、福に満ち満ちた園庭なのです。
コウモリのデザインは美しいシンメトリー
でもなんでコウモリなんでしょうね。福という字をそのままデザイン化したって良さそうなものなのに。そこでよくこのコウモリのデザインを見てみると、どれもみな翼?を広げてシンメトリーになっているのです。このシンメトリーの美を持つコウモリのデザインは、対が大好きな中国人の好みにぴったり合ったのではないでしょうか?福ではシンメトリーになりませんからね。
幸せのシンボルマーク・コウモリを見に行くなら恭王府
コウモリのデザインなんてそんなに素敵なの?と思う方、北京に行ったらこの恭王府を見学してみてください。地方からやってくる観光客のためにガイドさんが中国語で説明してくれます。たまたま私が行った時はちょうど「和坤」という希代の賄賂役人のドラマをやっていて、この人物こそこの建物を建てた人。後に失脚してここは皇帝の弟のものになります。というわけで当時は「和坤」ブーム。地方からのお上りさんがわんさわんさと大型観光バスで乗り入れ、たくさんのガイドさんがあちらこちらで説明していました。