中国語発音講座

「中国語、発音良ければすべて良し」…中国語学習者がよく耳にすることばです。それほど中国語学習では発音がやっかいであり、そしてまた、「文法構造はわりに簡単だから発音さえ身につけば後はなんとかなる」、という意味でもあります。

中国語の発音は、日本語にない音がやや多く、覚えにくく感じるかもしれませんが、何事も道案内に沿って一歩一歩ていねいに学んでいけばなんとかなります。この発音講座は図を多用して、発音のポイントがすんなり頭に入るよう工夫しました。また、ところどころサウンドマークが出てきますので、それらをクリックすると音声が流れます。

中国語の発音記号「ピンイン」

中国語の発音を学んでいくうえで必須となるのが、「ピンイン」と呼ばれる中国語の発音記号です。例えば中国語で「こんにちは」を意味する「ニーハオ」であれば、漢字は「你好」と書き、ピンインは「nǐ hǎo」と書きます。

ピンインの例
ピンインの例

ピンインがわかるようになると、「この中国語の漢字はどうやって発音すればいいんだろう?」と思ったときに、辞書などで調べて、その漢字のピンインを見れば正しい発音がわかります。

中国語の発音を学ぶということは、ピンインを見たときに正しい発音ができるようになる、ということでもあります。

では学んでいきましょう。

ピンインとは

ピンインは中国語では“拼音 pīnyīn”と書き、アルファベットで表記する中国式ローマ字による発音表記法です。これは新中国成立後の1958年に制定されました。

ピンインはルビでもある

ピンインとは中国語の発音を表す発音記号であると同時に漢字にふるルビのようなものです。中国の文字は漢字のみで、ひらがなやカタカナのように音をあらわす文字はありません。日本の漢字のよみにはひらがなやカタカナでルビをふりますが、中国語の場合はピンインがルビの役割を果たします。

ピンインは外国人学習者に必須

中国人は普段の生活で使っている言葉がみな漢字で表記できるわけですから、少し大きくなればピンインの助けなど必要ありません。でも中国語を学ぼうという外国人にとってはピンインなしにはどうにもなりません。

日本人は中国から伝わった漢字を使っていますが、この読み方・音は中国語とはまったくと言っていいほど違いますから、ピンインは必須です。ピンインがあってはじめて中国語の漢字の音がわかり、発音でき、中国人と会話ができるのです。ですからこのピンインが表す音を正確にマスターしなければなりません。正確でないと、中国人に伝わる音ではなくなってしまいます。

辞書もピンイン、中国語入力もピンイン

外国語を勉強する際欠くことのできない辞書もピンインで引きます。中国語の辞書はアルファベット順になっていますからピンインを知らないと引けません(部首から引く、漢和辞典と同じ引き方もありますがかなり面倒です)。スマホでも辞書は使えますが、こちらもピンインが必要です(手書きという機能もありますので、初歩段階ではピンインがわからなくても大丈夫です)。

メールや文章作成などに使う中国語入力もピンイン必須です。日本語入力がローマ字やひらがなから変換していくように、中国語入力はピンインから変換していくのです。

アルファベットの読み方は英語とは違うのだ!

ピンインの読み方

さてこのピンインの読み方ですが、同じアルファベットを使っていても英語の読み方とはまったく違います。文字は同じでも中国語の発音記号として使われているわけですから当然です。たとえば「xi」…どう読むと思いますか? これは日本語の「シ」に近い音になります。では「qi」は? これは日本語の「チ」に近い音です。そこでピンインを学ぶ際肝に銘じるべきことは、なんといっても「ピンインの読み方は英語とは違うのだ!」ということです。これは何度でも自分に言い聞かせなくてはなりません。アルファベットを借りて、英語とはまったく異なる言語を学んでいくのです。

ピンインは声調も表す

ピンインは声調も表す

中国語の漢字の発音を表すピンインには「声調」と呼ばれる中国語独特のイントネーションも含まれます。つまり「ピンイン」とは「イントネーション付き発音記号です。たとえば第一人称を意味する“我”の発音はピンインで「wǒ」と表記されます。「w」が子音のマーク、「o」が母音のマーク、上の逆三角形のようなマークが「声調」と称するイントネーションです。そこで「w」という子音がどういう音なのか、「o」という母音がどういう音なのか、逆三角形のようなマークはどういうイントネーションを表すのかがわかれば、この「ピンイン」だけで発音がわかるということになります。

もう一つの中国語の発音記号「注音符号」

実は中国語にはピンインの前に「注音符号」という発音記号がありました。

この「注音符号」は台湾などでは今でも使われているもので、ピンインより歴史が古く1928年に考案され(ピンインは1958年)、現在中国で出版されている辞書にもピンインのわきに添えられています(見出し音のところなど)。

日本で中国語を勉強して、それから台湾に行くとピンインは使いません。この注音符号を使って学ぶことになります。

ただしこのサイト(中国語スクリプト)では、ピンインを使って学んでいきます。

声調(四声と軽声)

それでは中国語発音の声調(四声と軽声)について学んでいきましょう。

声調と四声

「声調」とは「音の高低や音が上がったり下がったりする調子のこと」ですが、中国語は一つ一つの音節にこれがついています。このサイトで扱っている中国語(北京語)にはこの上がり下がりの調子が全部で4つあり、これを「四声(しせい)」と呼びます。

声調が変わると意味も変わる

日本語ではアクセントが変わっても、「この人は少しなまっているな」と思うだけで前後関係からほぼ意味はわかります。

ところが中国語はこの音の高低である四声の違いで意味が変わってきます。たとえば「マー」と高く一本調子で伸ばせば「お母さん」、「マア」と(低+高)にすると「麻」、「マーア」と(低+高)にすると「馬」、「マア」と(高+低)にすると「叱る」という意味になります。この上がり・下がりの調子は4つあるので「四声(しせい)」と言います。中国語の音節一つ一つにはこの上がり・下がり、つまり声調がついています

1声の発音の例
2声の発音の例
3声の発音の例
4声の発音の例

中国語の音節

ところで音節とは一番小さな音の単位のことです。中国語ではこの音節は一般に、「母音+子音」で構成され、そこに声調がかぶさるのです。たとえば“妈”という漢字のピンインは“mā”ですが、これは以下のような構造になっています。

妈 = m(子音) +  a(母音) + 第一声

つまりmā となります。

四声

四声には第一声、第二声、第三声、第四声の四つがあります。これを図示してみましょう。

四声の図

第一声:高く平らな音。最初高い音を出してその音の高さを最後までキープする。

第二声:急に高く上げる。「エエッ!」とびっくりした時の声。

第三声:低く抑える。「あーあ」とがっかりした時の声。「あーあ」の後ろの「あ」はある時とない時があり、ない方が一般的ですが、前後に他の音節がつかない時、後ろの「あ」が反動で残る場合もあります。ない方の第三声を「半三声」と言うこともあります。

第四声:一気に下げる。カラスが「カァ」と鳴くような声。

※第一声、第二声、第三声、第四声はそれぞれ一声、二声、三声、四声(よんせい)と省略して言うこともあります。

四声の発音練習

それでは四声の発音を「マ」の音で練習してみましょう。

この「マ」の音は中国語ではmaと表記します。一声~四声までの声調をつけると、mā(第一声)、má(第二声)、mǎ(第三声)、mà(第四声)と表記されます。それでは以下4問を声を出して読んでみてください。

ピンイン音声
mā má mǎ mà
má mà mā mǎ
mǎ mā má mà
mà mā mǎ má

軽声

声調には上の四つの声調以外に、軽声というのがあります。これは本来の声調を失ったもので、音の幅はほとんど持たず、ただ高さのみあります。またこの高さは前に来る声調によって変化します。軽声には声調のマークはありません。

第一声の後ろに軽声が来る場合、軽声は第一声より高さが下がります。下図参照。

一声の後の軽声の図

第二声の後ろに軽声が来る場合も、軽声は第二声の最後の音より下がります。下図参照。

二声の後の軽声の図

第三声の後ろに軽声が来る場合は三声は半三声に変化し、軽声の高さは上がります。下図参照。

半三声の後の軽声の図

第四声の後ろに軽声が来る場合、軽声は四声の最後の音と同じ高さか、それより下がります。下図参照。

四声の後の軽声の図

軽声の発音練習

それでは軽声の発音の練習をしてみましょう。四声と同じように「マ」の音を使います。

四声と軽声の組み合わせピンイン音声
第一声 + 軽声māma
第二声 + 軽声máma
第三声(半三声) + 軽声mǎma
第四声 + 軽声màma

中国語の発音を身につける際、この声調が正確かどうかで意味が相手に伝わったり伝わらなかったり、誤解されたりするので、中国語の初歩の段階でしっかり身につける必要があります。

私が大学の授業で1年生に発音を教える際には、この声調を身に付けるために、漢字一字一字の上に四声(もしくは軽声)のマークを付ける練習をさせています。この四声(声調)を身に付けるための練習方法については「四声(声調)を身に付けるための練習」のページで詳しく紹介しています。

単母音

中国語の母音

まず「母音」とは何のことでしょう。日本語で母音と言ったら「アイウエオ」の5音を指します。母音とは、音が口から出る時舌や唇の動きで邪魔されない時の音のことです。「アイウエオ」…確かにどの音も舌や唇の動きで邪魔されてはいませんね。中国語の基本母音である単母音は6つです。中国語の母音は他に複母音、鼻母音というのがあります。いずれも日本語の母音にはありません。

母音の基本…単母音

中国語の基本母音…単母音について学んでいきましょう。中国語の基本的な単母音は全部で6つ、これに「そり舌母音」というやや他とは異なるものを含めて全部で7つあります。

単母音
母音音声発音の説明
a中国語のaは口を大きくあけて「アー」と言います。日本人が「ア」と言う時は口はあまりあけませんが、これは中国語のaではなくeに近い発音です。「口を大きくあける」がポイントです。
o口の形を丸く作ってから「オ」と言います。口の形をしっかり作らないで「オ」と言うとこれもeに近くなってしまいます。
e口は丸めずやや左右に引いて、のどの奥から「ウ」という音を出すつもりで発音します。日本語には存在しない、唸り声のようなうめき声のような音です。
iこれは日本語の「イ」とあまり変わりませんが、日本語でイと言う時より口を横に引きます。
u口の形を丸くして、のどの奥から「ウ」の声を出します。口を丸くせずに「ウ」と言う日本語の「ウ」は基本的に存在しないと思ってください。
ü口を日本語の「ユ」の形にして「イ」と言います。
ereの音を出すのと同時に舌先をそり上げます。

口の形をしっかり作る

いずれの母音も日本語の母音と比べると「口の形をしっかり作る」がポイントです。日本語の発音は腹話術に向きますが、中国語は真逆、腹話術にはまったく向かない言語です。口をあけてくっきり発音しない方が自然な日本語に比べて、中国語は口の形をしっかり作り、メリハリをきかせて発音する言語だということ、口の形をしっかり作らず発音すると通じにくいということを肝に銘じましょう。日本人からすると、中国語を話す中国人の声が大きく感じるのもこの違いから来ているとも言えます。そっとささやくかのような日本語と朗々と歌い上げるような中国語の違いです。

単母音を表すピンイン表記

ここで7つの単母音を練習する前に、単母音表記に使われたピンインについて説明しておきましょう。

「a」「o」「e」は前の子音がついてもつかなくても表記に変化はありませんが、

「i」「u」「ü」は前に子音がつくかつかないかで、表記が変わります。

単母音のピンイン
前に子音が付くとき前に子音が付かないとき
a-aa
o-oo
e-ee
i-iyi
u-uwu
üyu

ここで学んだことを使って、以下の練習をしてみてください。

単母音の練習 1

上で学んだ7つの単母音で四声の練習をしてみましょう。

単母音のピンイン音声
ā á ǎ à
ō ó ǒ ò
ē é ě è
ī(yī) í(yí) ǐ(yǐ) ì(yì)
ū(wū) ú(wú) ǔ(wǔ) ù(wù)
ǖ(yū) ǘ(yú) ǚ(yǔ) ǜ(yù)
ēr ér ěr èr

単母音の発音をもう一度確認!

aは日本語の「ア」ではない!

a…これは日本語の「ア」ではありません。日本語の「ア」より口を大きく開けてください。日本語の「ア」は中国語のeに近いと思った方がいいです。

oは日本語の「オ」ではない!

o…これは日本語の「オ」ではありません。日本語の「オ」より唇を丸く突き出してください。

eは日本語の「エ」ではない!

e…これは日本語の「エ」ではありません。口を丸めずやや左右に開いて開け、喉の奥から「ウッ」とうめくような音です。

iは日本語の「イ」とほぼ同じ

i…これは日本語の「イ」に近いですが、唇はもっと横に開いてください。

uは日本語の「ウ」ではない!

u…これは日本語の「ウ」ではありません。中国語に日本語の「ウ」は基本存在しないと思ってください。唇を突き出し(oほど丸める必要はありません)喉の奥から「ウ」と言ってください。

üは口を「ユ」の形にして「イ」と言う

ü…日本語にまずない音です。口を日本語の「ユ」の形にして「イ」と言うのです。

erはeの後に舌を丸める

er…うめくような「e」を言った後、舌を丸めて「ル」に近い音を出してください。

もう一度ピンインの表記に注意!

(1)「i u ü」で始まる単母音(前に子音が来ない時)は「yi wu yu」で表記されます。

(2)「y j q x」の後ろに来る「ü」は「u」で表記されます。

単母音の練習 2

間違いやすい発音の練習をしてみましょう。

単母音のピンイン音声
u(wu) / o
ü(yu) / i(yi)
u(wu) / ü(yu)
e / a
e / er

複母音

複母音とは

複母音とは、1音節の中に母音が2つ以上入っている音のことです。2つ入っていても1音節ですから、発音する時はそれを一つの音としてなめらかに発音します。これは日本語にないのでピンとこないかもしれませんね。たとえば「愛(あい)」は中国語では“爱 ài”です。同じじゃないかと言われるかもしれませんが、日本語「愛(あい)」は2音節、中国語“爱 ài”は1音節で2重母音(=複母音)の音です。

つまり日本語「愛」は「あ」+「い」で、中国語“爱 ”は一つの音の中に“ài”を入れてしまう、一つの音としてなめらかに発音するのです。この「なめらか」という意味が日本人にはなかなか把握できません。なめらかに発音するとはどういうことなのでしょうか?

日本語の音節の例
中国語の音節の例

複母音の発音

「なめらかに」複母音を発音するとは、日本語のように「あ」と「い」、2つの母音をそれぞれ対等の長さや強さを持った音節として発音することではありません。2つの母音にそれぞれ強弱をつけて一つの音にしていくのです。中国語の複母音はこの強弱に3つのタイプがあります。

「強→弱」型

最初は口を大きく、だんだん口を小さく、音も弱くするタイプ。つまり最初は強く、だんだん弱くしていって、音のなめらかさを作るのです。

ピンイン音声
ai
ei
ao
ou

この発音のタイプに先ほどの例 “爱” が入っています。強弱や大小を活字の大きさで表すなら、「アィ」ですね。ここに4声のイントネーションがかぶります。カラスの鳴き声のイントネーションで、「アイ」と言ってみてください。これは日本語の「愛」とはだいぶ違うのがおわかりでしょう。中国語では、ア~イと返事をしているような音になります。

「弱→強」型

最初は口を小さく、だんだん口を大きく、音も強くするタイプ。つまりだんだん音を強くして音のなめらかさを作ります。

ピンイン音声
ia
ie
ua
uo
üe

「弱→強→弱」型

「強→弱」型と「弱→強」型が合体したタイプ。これは3重母音の場合です。だんだん口を大きくし、そのあとだんだん小さくします。つまり弱・強・弱という流れで音のなめらかさを作ります。

ピンイン音声
iao
iou
uai
uei

複母音と四声の発音練習

「強→弱」型の発音練習

複母音を使って四声の練習をしてみましょう。まずは「強→弱」型からです。

「強→弱」型の発音練習-1
ピンインāiáiǎiài
音声

「ア」に「イ」を軽く添える感じで発音します。

「強→弱」型の発音練習-2
ピンインēiéiěièi
音声

この「e」は「i」に引かれることで発音は「エ」になります。「エ」に「イ」を軽く添える感じで発音します。

「強→弱」型の発音練習-3
ピンインāoáoǎoào
音声

「ア」に軽く「オ」を添える感じで発音します。

「強→弱」型の発音練習-4
ピンインōuóuǒuòu
音声

日本語の「オ」より唇をまるめて「オ」、その後唇のまるみを少しやわらげ、軽く「ウ」を添えて発音します。

「弱→強」型の発音練習

次は「弱→強」型の発音を練習しましょう。

「弱→強」型の発音練習-1
ピンイン
(yā)

(yá)

(yǎ)

(yà)
音声

※( )の表記は、前に子音がつかず母音だけの時のピンイン表記です。

「イ」でスタートして、声を大きく強めにしてなめらかに「ア」を発音します。

「弱→強」型の発音練習-2
ピンイン
(yē)

(yé)

(yě)

(yè)
音声

「イ」でスタートして、なめらかに「エ」につないで発音します。「e」は前の「i」に引かれて「エ」になります。

「弱→強」型の発音練習-3
ピンイン
(wā)

(wó)

(wǎ)

(wà)
音声

唇を突き出して「ウ」の音から、口を大きくあけてなめらかに「ア」につないで発音します。

「弱→強」型の発音練習-4
ピンイン
(wō)

(wó)

(wǒ)

(wò)
音声

唇を突き出して「ウ」の音から、唇を丸めてなめらかに「オ」につないで発音します。

「弱→強」型の発音練習-5
ピンインüē
(yuē)
üé
(yué)
üě
(yuě)
üè
(yuè)
音声

唇を「ユ」の形にして「イ」と言い、それからなめらかに「エ」につないで発音します。「e」は「ü」に引かれて「エ」になります。

「弱→強→弱」型の発音練習

最後は「弱→強→弱」型の発音を練習しましょう。

「弱→強→弱」型の発音練習-1
ピンインiāo
(yāo)
iáo
(yáo)
iǎo
(yǎo)
iào
(yào)
音声

「イ」でスタートし、大きく口をあけて「ア」、さらに口を丸めて「オ」。全体をなめらかにつないで発音します。

「弱→強→弱」型の発音練習-2
ピンインuāi
(wāi)
uái
(wái)
uǎi
(wǎi)
uài
(wài)
音声

口を突き出して「ウ」の音から、口を大きくあけて「ア」、さらに「イ」。この3つの音をなめらかにつないで発音します。

「弱→強→弱」型の発音練習-3
ピンインuēi
(wēi)
uēi
(wēi)
uěi
(wěi)
uèi
(wèi)
音声

口を突き出して「ウ」の音から「e」の音へ、さらに「イ」。3つをなめらかにつないで発音します。

この三重母音の主母音「e」はやや弱い音なので、子音と結びつく時は「e」を省略してつづります。ただし発音する時はこの「e」の音を意識して発音するときれいに発音できます。また第1声、第2声の時「e」の音はきわめて弱くなります。

「弱→強→弱」型の発音練習-4
ピンインiōu
(yōu)
ióu
(yóu)
iǒu
(yǒu)
iòu
(yòu)
音声

この音は第1声、第2声の時、主母音の「o」が弱くなります。第3声、第4声の時は「o」が強くなります。

また、子音と結びつく時は「o」を省略してピンインをつづります。

いろいろな「e」の発音

複母音の発音練習している時「e」のところでアレっと思った方が多いことでしょう。「e」ってこんな音なの? 実は「e」の音はどういう音と組み合わさるかで変化します。

(1)単独または「子音 + e」の場合

単独または「子音 + e」になるときの「e」の発音は、口は丸めずやや左右に引いて、のどの奥から「ウ」という音を出すつもりで発音します。唸り声のような、うめき声のような音。

「e」の発音の例-1
ピンイン中国語音声日本語訳
è饿空腹だ
お兄さん

(2)母音と組み合わせる場合

母音と組み合わせるときの「e」の発音は、日本語の「エ」に近い音になります。

「e」の発音の例-2
ピンイン中国語音声日本語訳
jiěお姉さん
gěi与える

(3)鼻母音と組み合わせる場合

(3-1)nとの組み合わせ

鼻母音「n」と組み合わせる時の「e」の発音は、日本語の「エ」に近い音になります。

「e」の発音の例-3
ピンイン中国語音声日本語訳
rén
běn冊(本を数える時の量詞)

(3-2)ngとの組み合わせ

鼻母音「ng」と組み合わせる時の「e」の発音は、唸り声のような、うめき声のような音になります。

「e」の発音の例-4
ピンイン中国語音声日本語訳
fēng
péngyou朋友友人

複母音のピンイン表記の注意点

「i u ü」で始まる複合母音

上で書いたように、「i u ü」で始まる複合母音(前に子音が来ない時)は「y w yu」で表記されます。

(例)

「i」で始まる複合母音「iao」の場合

前に子音が来ない時の例: yāo(妖)……iではなくyで表記される→つまりこの音はヤオではなく、イアオ。

前に子音が来る時の例: jiào(叫)……「j」が子音。

「u」で始まる複合母音「uai」の場合

前に子音が来ない時の例: wài(外)……uではなくwで表記される→つまりこの音はワイではなくウアイ。

前に子音が来る時の例: kuài(快)……「k」が子音。

「ü」で始まる複合母音「üe」の場合

前に子音が来ない時の例:  yuè(月)……üではなくyuで表記される。

前に子音が来る時の例: lüè(略)……「k」が子音。

ピンイン表記に現れない「e」と「o」

こちらも上で書いたように、複母音「iou」と「uei」は子音と組み合わさると、それぞれ「iu」「ui」と表記されます。「iou」の「o」、「uei」の「e」が弱くなるからです。発音する際は表記上消えてしまった「o」と「u」の音も響かせるときれいな発音になります。

表記から消えた音にも注意して以下の音を読んでみましょう。( )の漢字の意味になります。

ピンイン表記に現れない音の練習
ピンイン音声
jiǔ(酒)
liù(六)
duì(队)
huì(会)

鼻母音 「n」と「ng」

鼻母音(びぼいん)とは鼻からも息が抜ける音のことです。日本語では「ん」が一種の鼻母音ですが、中国語ではこの音が2種類あります。~nと~ngです。

「~n」と「~ng」は日本人の耳には同じ「ん」に聞こえます。したがって聞き分けるのも発音し分けるのも、日本語話者にはなかなか難しい音です。音というものは聞き取れないと発音できないのです。「~n」と「~ng」、いったいどんな音なのでしょう?

n

「~n」の音とは

「~n」の音は、前に来る母音を発音した後、舌先を上の歯茎につけます。

日本語の「案内」と言うつもりで、「あん」で音を止め、口の中は次に来る「ない」を言う準備をしていてください。そうすると「ん」で止まった口の中では舌先が上の歯茎についているはずです。その状態が「~n」です。

日本語にある「~n」の音

以下の日本語を、3つ目の音を読む直前で止めてみてください。

ない(案内) かどう(感動) かれき(還暦) かな(カンナ)

どの音も舌先が上の歯茎についているのが感じられるでしょう。これが「~n」です。

ng

「~ng」の音とは

「~ng」の音は、口をあけたまま舌先はどこにもつけずに、鼻から息を抜く感じで発音します。日本語の「案外」と言うつもりで、「あん」で音を止め、口の中は次に来る「がい」を言う準備をしていてください。そうすると「ん」で止まった口の中では舌先がどこにもつかず、息が鼻から抜け出ているのを感じるはずです。その状態が「~ng」です。

日本語にある「~ng」の音

以下の日本語を、3つ目の音を読む直前で止めてみてください。

がい(案外) かかく(感覚) きがく(金額) けがく(見学)

どの音も舌先はどこにも触れず、舌の付け根が上あごの奥にある柔らかい部分(軟口蓋)についているのを感じられるでしょう。これが「~ng」です。

鼻母音の発音練習

では鼻母音の発音を練習しましょう。

※なお、以下の鼻母音の(  )の表記は前に子音がつかず母音だけの時のピンイン表記です。

鼻母音「n」の発音練習
鼻母音音声発音方法
an「a」を発音したあと、舌を上の前歯の裏に押し付けて「n」を言う。
en「e」を発音したあと、舌を上の前歯の裏に押し付けて「n」を言う。
ian
(yan)
「i」を発音したあとすぐに「a」を発音し、舌を上の前歯の裏に押し付けて「n」を言う。この時の「a」は日本語の「エ」に近い音になる。
in
(yin)
「i」を発音したあと、舌を上の前歯の裏に押し付けて「n」を言う。
uan
(wan)
「u」を軽く発音したあとすぐに「a」を発音し、舌を上の前歯の裏に押し付けて「n」を言う。
uen
(wen)
「u」を軽く発音したあとすぐに「e」を発音し、舌を上の前歯の裏に押し付けて「n」を言う。前に子音が付く場合は「un」、前に子音がつかない場合は「wen」と表記する。「子音+un」と表記されている場合、「子音+uen」と発音される。
üan
(yuan)
「ü」を軽く発音したあとすぐに「a」を発音し、舌を上の前歯の裏に押し付けて「n」を言う。この時「a」は日本語の「エ」に近い音になる。
ün
(yun)
「ü」を軽く発音したあと、舌を上の前歯の裏に押し付けて「n」を言う。
鼻母音「ng」の発音練習
鼻母音音声発音方法
ang「a」を発音したあと、軽く舌を引きながら舌の付け根を持ち上げ、上あごの奥にある柔らかい部分につけて、鼻から息を出しながら「~ng」を言う。
eng「e」を発音したあと、軽く舌を引きながら舌の付け根を持ち上げ、上あごの奥にある柔らかい部分につけて、鼻から息を出しながら「~ng」を言う。またこの「e」は単母音の「e」で説明した音。
ong「o」を発音したあと、軽く舌を引きながら、舌の付け根を持ち上げ、上あごの奥にある柔らかい部分につけて、鼻から息を出しながら「~ng」を言う。
iang
(yang)
「i」を発音したあとすぐに「a」を発音し、軽く舌を引きながら舌の付け根を持ち上げ、上あごの奥にある柔らかい部分につけて、鼻から息を出しながら「~ng」を言う。
ing
(ying)
「i」を発音したあと、軽く舌を引きながら舌の付け根を持ち上げ、上あごの奥にある柔らかい部分につけて、鼻から息を出しながら「~ng」を言う。
iong
(yong)
「i」を発音したあとすぐに「o」を発音し、軽く舌を引きながら舌の付け根を持ち上げ、上あごの奥にある柔らかい部分につけて、鼻から息を出しながら「~ng」を言う。
uang
(wang)
「u」を発音したあとすぐに「a」を発音し、軽く舌を引きながら舌の付け根を持ち上げ、上あごの奥にある柔らかい部分につけて、鼻から息を出しながら「~ng」を言う。
ueng
(weng)
「u」を発音したあとすぐに「e」を発音し、軽く舌を引きながら舌の付け根を持ち上げ、上あごの奥にある柔らかい部分につけて、鼻から息を出しながら「~ng」を言う。またこの「e」は単母音の「e」で説明した音。

間違えやすい音の練習

「i u ü」で始まる単母音(前に子音が来ない時)は「yi wu yu」で表記され、「i u ü」で始まる複合母音(前に子音が来ない時)は「y w yu」で表記されるという表記ルールを思い出してください。

ピンイン音声
an
ang
fān(帆)
fāng(方)
ピンイン音声
en
eng
mén(门)
méng(萌)
ピンイン音声
in
ing
xìn(信)
xìng(姓)
ピンイン音声
ian
iang
qián(钱)
qiáng(强)

nかngかで意味がまったく変わってしまうのでやっかいです。先ほど説明した「案内」と「案外」を使って練習を繰り返してみてください。「日本人耳」でも違いが少しわかってきます。

「n」と「ng」は日本語の漢字の読み方からもわかる!

日本語の音読みで「ん」で終わるものは「n」、「う」または「い」で終わるものは「ng」です。

(例)

山(さ)→shān

江(こ)→jiāng

定(て)→dìng

(ちょっと寄り道)

日本語の音読みからわかる中国語の「n」と「ng」ですが、実はいくつか例外があります。その一つが「貞」。これの音読みは「てい」ですから「ng」で終わるはずですが、なぜか「n」で終わるのです。「zhēn」と読みます。これはなぜなんでしょう? 日本人がうっかりミスをした? それとも中国で音が変化した? 実は中国での音が変わったんですね。日本人の祖先のミスではありませんでした。

子音

子音とは

今回は中国語の子音について覚えていきます。子音とは、口の中の空気の流れを、舌・歯・唇などによって妨害し、妨げることによって発する音のことです。たとえば日本語の「か」は「k」という子音と「a」という母音でできています。日本語の中のこの「k」という子音、意識してみるとけっこう難しい音ですね。いったいどうやって口の中の空気の流れをカットしているんでしょう?

中国語の子音の数は21個

さて中国語にこうした子音は全部で21個あります。日本語の子音数は13個と言われていますので中国語の方がずっと多いですね。どんな音があるのでしょうか? そしてどういう音が日本語の中にないのでしょう? 中国語の子音21個は (1)唇音 (2)舌尖音 (3)舌根音 (4)舌面音 (5)そり舌音 (6)舌歯音 の6種類に分かれます。名称の中の音の前に口の器官が書かれています。唇、舌尖…など。ここが空気を遮る部位ですね。

それでは21個の子音の特徴を読んでいってみましょう。

唇音(しんおん)……「b p m f」

唇音は唇を使って発音します。唇音に属する子音はb・p・m・fの4つです。では以下に書いたこれらの音の特徴を読み、その後母音「o」をつけて練習してみましょう。

「b」……上下の唇を破裂させる音です。まず唇をしっかりと閉じ(口紅をつける部分が見えなくなるまで)、息をため、両唇を急にあけます。この時ためた息を自然に吐き出します。

「p」……上下の唇を破裂させる音です。まず唇をしっかりと閉じ(口紅をつける部分が見えなくなるまで)、息をため、両唇を急にあけます。この時ためた息を一気に力をこめて吐き出します。

「m」……上下の唇を破裂させる音です。まず唇をしっかりと閉じ(口紅をつける部分が見えなくなるまで)、息をため、両唇を急にあけ「m」を発します。

「f」……上の歯と舌の唇を摩擦する音で、英語の「f」に近い音です。

4つの唇音を使って四声の発音練習をしましょう。

唇音の発音練習
ピンイン音声
bō bó bǒ bò
pō pó pǒ pò
mō mó mǒ mò
fō fó fǒ fò

舌尖音(ぜっせんおん)……「d t n l」

舌尖音は舌先を上の歯茎の上歯に近い部分に軽くつけて発音します。舌尖音に属する子音は「d・t・n・l」の4つです。では以下に書いたこれらの音の特徴を読み、その後母音「e」をつけて練習してみましょう。

「d」……舌先を上の歯茎のうち歯に近い部分に軽くつけて、それから舌をはずし「d」の音を出します。その際息は自然に吐き出します。

「t」……舌先を上の歯茎のうち歯に近い部分に軽くつけて、それから舌をはずし「t」の音を出します。その際息は一気に力をこめて吐き出します。

「n」……舌先を上の歯茎のうち歯に近い部分に軽くつけて、それから舌をはずし「n」の音を出します。

「l」……舌先を「d・t・n」より少し後ろ寄りにして歯茎につけ舌の両側から声を流します。日本語のラのはじくような音と比べると、中国語の「l」は舌先を歯茎につけたまま舌の両側から音が流れ出てくる感じになります。

4つの舌先音を使って四声の発音練習をしましょう。

舌先音の発音練習
ピンイン音声
dē dé dě dè
tē té tě tè
nē né ně nè
lē lé lě lè

舌根音(ぜっこんおん)……「g k h」

舌根音は、舌の奥の部分を軟口蓋に触れさせ、喉に力を入れて発音します。舌根音に属する子音は「g・k・h」の3つです。では以下に書いたこれらの音の特徴を読み、その後母音「e」をつけて練習してみましょう。

「g」……舌の奥の部分を軟口蓋(喉の奥)に触れさせ、「g」の音を出します。その際息は自然に吐き出します。

「k」……舌の奥の部分を軟口蓋(喉の奥)に触れさせ、「g」の音を出します。その際息は自然に吐き出します。

「h」……舌根を軟口蓋や口蓋垂と摩擦して「h」の音を出します。寒い時両手に息を吹きかけ「ハーッ」とやるあの音です。かなり喉の奥から出ますので、日本語の「ハ」とはまったく違う音です。

3つの舌根音を使って四声の発音練習をしましょう。

舌根音の発音練習
ピンイン音声
gē gé gě gè
kē ké kě kè
hē hé hě hè

舌面音(ぜつめんおん)……「j q x」

舌面音は舌先を舌の歯茎につけて発音します。舌面音に属する子音は「j・q・x」の3つです。では以下に書いたこれらの音の特徴を読み、その後母音「i」をつけて練習してみましょう。

「j」……舌面を盛り上がらせ、これを歯茎から硬口蓋にかかる部分に触れさせて「j」の音を出します。その際息は自然に吐き出します。

「q」……舌面を盛り上がらせ、これを歯茎から硬口蓋にかかる部分に触れさせて「q」の音を出します。その際息は一気に力をこめて吐き出します。

「x」……舌面を盛り上がらせ、これを歯茎から硬口蓋にかかる部分に触れさせて「x」の音を出します。

3つの舌面音を使って四声の発音練習をしましょう。

舌面音の発音練習
ピンイン音声
jī jí jǐ jì
qī qí qǐ qì
xī xí xǐ xì

そり舌音……「zh ch sh r」

そり舌音は舌先を上にそらせ、これを硬口蓋(歯茎の上に舌をそり上げていくとドームのような部分に突き当たる。その部分)にふれさせて出す音です。この音に属する子音は「zh・ch・sh・r」の4つです。では以下に書いたこれらの音の特徴を読み、その後母音「i」をつけて練習してみましょう。

「zh」……舌を前歯の歯茎の裏に当て、そのままそり上げていきますと、ドームのようなところがあるのがわかります。そのドームが始まるあたりに舌先を当て、日本語の「ジ」を言うつもりで声を出すと「zhi」になります。その際息は自然に吐き出します。

「ch」……まず舌を前歯の歯茎の裏に当て、そのままそり上げていきますと、ドームのようなところがあるのがわかります。そのドームが始まるあたりに舌先を当て、日本語の「チ」と言うつもりで声を出すと「chi」になります。その際息は一気に力をこめて吐き出します。

「sh」……まず舌を前歯の歯茎の裏に当て、そのままそり上げていきますと、ドームのようなところがあるのがわかります。そのドームが始まるあたりで舌をつけず少し隙間を残して「シ」というつもりで声を出すと「shi」になります。

「r」……まず舌を前歯の歯茎の裏に当て、そのままそり上げていきますと、ドームのようなところがあるのがわかります。そのドームが始まるあたりで舌をつけず少し隙間を残して「リ」と言うつもりで声帯を震わすと「ri」になります。

4つのそり舌音を使って四声の発音練習をしましょう。

そり舌音の発音練習
ピンイン音声
zhī zhí zhǐ zhì
chī chí chǐ chì
shī shí shǐ shì
rī rí rǐ rì

舌歯音(ぜっしおん)……「z c s」

舌歯音は舌先を上の歯茎につけて発音します。この音に属する子音はz・c・sの3つです。では以下に書いたこれらの音の特徴を読み、その後母音iをつけて練習してみましょう。

「z」……舌先よりやや奥寄りの部分を上歯の歯茎に触れさせて「z」の音を出します。その際息は自然に吐き出します。

「c」……舌先よりやや奥寄りの部分を上歯の歯茎に触れさせて「c」の音を出します。その際息は一気に力をこめて吐き出します。

「s」……舌先よりやや奥寄りの部分を上歯の歯茎に触れさせて「s」の音を出します。

3つの舌歯音を使って四声の発音練習をしましょう。

舌歯音の発音練習
ピンイン音声
zī zí zǐ zì
cī cí cǐ cì
sī sí sǐ sì

無気音(むきおん)と有気音(ゆうきおん)

21の子音を6つに分けて説明しましたが、このうちの12子音はさらに無気音と有気音の2つに分類できます。

無気音とは呼気、つまり吐く音がきわめて弱い音のことです。有気音とは呼気、つまり吐く音がきわめて強い音のことです。このうち有気音は日本語には意味ある音としては存在しないのでなかなか出せません。たとえば「タハッ」とか「テヘッ」とかいう音のタやテの直後の音に似ています。

無気音・有気音はペアになっている

無気音と有気音は下のようにペアとして存在しています。

「b/p」 「d/t」 「g/k」 「j/q」 「zh/ch」 「zi/ci」

ではそれぞれの子音に母音をつけて練習してみましょう。

無気音と有気音の発音練習
ピンイン音声
無気音bo
有気音po
無気音de
有気音te
無気音ge
有気音ke
無気音ji
有気音qi
無気音zhi
有気音chi
無気音zi
有気音ci

無気音・有気音の練習の仕方2つ

練習方法(1)

薄い紙を使って練習してみましょう。ティッシュを半分くらいに切り、その最上部を親指と人差し指でつまみます。次にティッシュの下のはじっこを口元にもってきて1ミリくらい離します。そこでまず無気音を発してみると、ティッシュはほとんど動きません。大きく動いたとしたら無気音にはなっていません。次に有気音を発してみるとティッシュは大きく揺れます。ただし母音にも左右され、母音が「o」の時は揺れが大きく、母音が「i」や「e」の時はさほど揺れません。

練習方法(2)

手の平を口元に近づけ、口から流れる風の強弱を感じてみましょう。手の平を口元に近づけ無気音、有気音を発音します。無気音の場合は吐く息はむわっとしていてほとんど流れませんが、有気音になると強く涼しい風のように流れます。その違いを確認しながら練習してみてください。

子音で変わる「i」の音3種

ところで単母音「i」は常に同じ音ではなく、前に来る子音によって音が少し変わります。

「ji qi xi」……これらは口を横に引いた、はっきりした「i」です。

「zhi chi shi ri」……そり舌音のあとに来る「i」は、くぐもった、あまりはっきりしない「i」です。

「zi ci si」……これらは「i」というより日本語の「ウ」に似た音になります。

特に日本人が間違えやすいポイントをカタカナで表記すると、以下の図のようになります。

間違えやすい「i」の発音
練習

それではこれらの音を使って四声練習をしてみましょう。

はっきりと発音する単母音「i」
ピンイン音声
jī jí jǐ jì
qī qí qǐ qì
xī xí xǐ xì
そり舌音のあとに来る単母音「i」
ピンイン音声
zhī zhí zhǐ zhì
chī chí chǐ chì
shī shí shǐ shì
rī rí rǐ rì
日本語の「ウ」に似た音の単母音「i」
ピンイン音声
zī zí zǐ zì
cī cí cǐ cì
sī sí sǐ sì

声調変化

このページの上の方で声調について説明しましたが、声調は時に変化します。その際声調記号は変わらないので気をつけなければなりません。

三声の声調変化

三声が連続した時…前の三声は二声で発音します。

三声の後ろに一声、二声、四声、軽声が続いた時…前の三声は半三声になります。

三声の後に三声が来る時の声調変化

三声の後に三声が来る時、声調記号は三声のままですが、前の三声は二声で発音します。

三声の後に三声が来る時の声調変化

図のように、例えば「你好」の声調記号は「nǐ hǎo」ですが、実際の音は「ní hǎo」のように、前の音を二声で発音します。

三声の後に一声が来る時の声調変化

三声の後に一声が来る時、前の三声は半三声で発音します。

三声の後に一声が来る時の声調変化

図のように、例えば「北京」の声調記号は「běi jīng」なので、実際の音は「běi」の部分を半三声で発音します。

三声の後に二声が来る時の声調変化

三声の後に二声が来る時も、前の三声は半三声で発音します。

三声の後に二声が来る時の声調変化

図のように、例えば「普及」の声調記号は「pǔ jí」なので、実際の音は「pǔ」の部分を半三声で発音します。

三声の後に四声が来る時の声調変化

三声の後に四声が来る時も、前の三声は半三声で発音します。

三声の後に二声が来る時の声調変化

図のように、例えば「请问」の声調記号は「qǐng wèn」なので、実際の音は「qǐng」の部分を半三声で発音します。

三声の後に軽声が来る時の声調変化

三声の後に軽声が来る時も、前の三声は半三声で発音します。

三声の後に二声が来る時の声調変化

図のように、例えば「喜欢」の声調記号は「xǐ huan」なので、実際の音は「xǐ」の部分を半三声で発音します。

「一」の変調

“一”はもともと一声ですが、後ろに一声、二声、三声が来ると四声に変化します。“一”の後ろに四声、軽声が来ると二声に変化します。

また、“一”はピンイン表記する場合、変化した声調をつけます。

一の原調

“一”の原調(基本形)は「yī」と、一声になります。

一の原調

「一」のあとに「一声・二声・三声」が来るとき

「一」のあとに「一声・二声・三声」が来るとき、「yì」と、四声になります。

一の声調変化(四声)

(例)

“一些 yì xiē” “一齐 yì qí” “一百 yì bǎi”

「一」のあとに「一声・二声・三声」が来るとき

「一」のあとに「四声、軽声」が来るとき、「yí」と、二声になります。

一の声調変化(二声)

(例)

“一下 yí xià” “一个 yí ge”

不の変調

否定副詞“不”も後ろに来る音で変化します。こちらもピンイン表記する場合、変化した声調をつけます。

不はもともと四声ですが、後ろに四声の音が来ると二声に変化します。一声、二声、三声の場合は四声のままです。

不の原調

“不”の原調(基本形)は「bù」と、四声になります。

不の原調

「不」のあとに「四声」が来るとき

「不」のあとに「四声」が来るとき、「bú」と、二声になります。

不の声調変化(四声)

(例)

“不去 bú qù” “不累 bú lèi”

「不」のあとに「一声・二声・三声・軽声」が来るとき

「不」のあとに「一声・二声・三声・軽声」が来るときは、「bù」と、原調のままの四声になります。

不の声調変化(一声・二声・三声・軽声)

(例)

“不吃 bù chī” “不来 bù ái” “不走 bù zǒu”

声調のつけ方

声調記号は母音の上につけますが、優先順位があります。

(1)aがあればaの上に付ける。

(2)aがなければeかoの上に付ける。(この二つが同時に出てくることはありません)

(3)aもeもoもない時はiかuの上に付ける。(この二つは同時に出てくることがあります。その場合は後ろになった方につけます。iが後ろに来た時はiの点を取って、そこに声調記号を置きます。他の場合iの点を取ってはいけません)

ピンインの優先順位

r化

音節の末尾にrの音が入る現象をr化と言います。r化すると前の音節に音の変化が起きる場合があります。このrは独立した音節を持ちません。

r化には以下の4種類のタイプがあります。

(1)儿化しても前の音節に音の変化がないもの

(例)

中国語ピンイン音声
猫儿māor

(2)前の音節のnが脱落するもの

(例)

中国語ピンイン音声
玩儿wánr

(3)前の音節のiが脱落するもの

(例)

中国語ピンイン音声
小孩儿xiǎoháir

(4)前の音節が鼻音化するもの

(例)

中国語ピンイン音声
空儿kòngr

声調組み合わせ練習

では最後に声調の組み合わせ練習をしてみましょう。

声調組み合わせのパターン別発音練習
一声一声今天jīntiān
二声中国Zhōngguó
三声香港Xiānggǎng
四声工作gōngzuò
軽声妈妈māma
二声一声台湾Táiwān
二声红茶hóngchá
三声词典cídiǎn
四声学校xuéxiào
軽声爷爷yéye
三声一声北京Běijīng
二声美国Měiguó
三声蒙古Měnggǔ
四声午饭wǔfàn
軽声姐姐jiějie
四声一声汽车qìchē
二声大学dàxué
三声日本Rìběn
四声印度Yìndù
軽声爸爸bàba

※三声の声調変化に注意!

三声が連続した時…前の三声は二声になります。ですから “蒙古 Měnggǔ” の “měng” は実際には “méng” と発音します。

三声の後ろに一声、二声、四声、軽声が続いた時…前の三声は半三声になります。

ですから “北京 Běijīng” の “běi” は半三声に、 “美国 Měiguó” の “méi” も半三声、 “午饭 wǔfàn” の “wǔ” も半三声、 “姐姐 iějie” の “jiě” も半三声になります。

中国語の発音のコツ

以上が発音の基礎です。この基礎を元にいろいろな単語や文を読んでいくことになりますが、ピンインを見ても最初はどういう音だったか忘れてしまうことでしょう。その都度ここに戻ってまた発音の基本ルールを確かめてください。

発音のコツ(1) 自己流で発音しない。めんどうでもルールをよく読みその通りに発音しようと努力する

初めは型を覚えます。知り合いの中国人の発音と違う気がするんだけど…と思っても、その中国人がなまって発音している可能性が高いので気にしないこと。型に沿って発音しましょう。

発音のコツ(2) 音より口の形を重視する

中国語は口の形が大切です。ここでも型が大事。型の説明どおりに口の形をしっかり決めましょう。

発音のコツ(3) オーバーに発音する

型の口形で発音すると、日本人の感覚としてはあまりにオーバーに感じるかもしれません。知り合いの中国人からも不自然と言われてしまったりするかもしれません。でも気にしないこと。不自然でいいのです。型を身につけるまでは不自然OK。型がしっかり身につけばいつでも自然な音になります。でも型が身についていないのに自然な発音を装っても、妙な発音、通じない発音になるばかりです。カッコつけないでとにかくオーバーにやってください。

発音の次に学ぶこと

発音を一通り学び終えた人がレベルアップするためにこのサイトではいろいろな中国語学習コンテンツが用意されています。内容が豊富なだけでなく、音声、画像、アニメーション(画像が動く)などさまざまな工夫がなされています。ぜひ楽しみながらレベルアップを図ってください。

まず文法コーナーで中国語の仕組みを学ぶ

このサイトで発音を学んだあとは、まずは「中国語文法」に行ってください。初級者レベルの文法項目が54項目、それぞれに簡潔な説明と例文、練習問題が入っています。

これだけやれば中国語の仕組みはおおよそわかるはずです。

単語を覚える

中国語単語1200

中国語のおおよその仕組みがわかったところで「中国語単語」に行ってください。ここでは1200の単語を3つのレベルに分け、それぞれをさらに品詞に分けて、漢字・ピンイン・音声・日訳が用例とともに入っています。これらはそれぞれ指タッチ1回で簡単に非表示にもできますから暗記するのにとても便利!

また市販の単語暗記教材は、本とは別に音声再生用の別機器の準備が必要です。二度手間になると音を聞くのが億劫になり、結局テキスト、つまり目に頼る勉強になりがちです。このサイトでは音を聞くのは音声マークをポンと押すだけ。耳で聞くことが億劫になりません。そして単語を覚えるのに音から入るのはインパクトが強くて覚えやすいのです。音声を使って覚えるとともにここで発音の復習もしてください。

単語コーナーを使ってらくらくリスニングアップ

この単語には用例ともども音声が入っていますので、漢字・ピンイン・日訳・用例などを非表示にすることでリスニング練習ができます。表示・非表示は、それが書かれている場所をポンと押すだけ。赤いシートも不要、指1本で楽々リスニングを楽しみながら耳を鍛えてください。

単語の例文は短文暗記に使える!

また単語には簡単な例文がついています。これも音声付きですからここの発音は音声で確かめられます。また文法構造のタイプも書かれていますので、構造が分からなければ文法コーナーで調べることもできます。単語暗記が終わったらこれら例文もついでに暗記するといいでしょう。こうした短文を大量に覚えると会話力が相当つきます。

中検の語順問題でゲームをしながら語順が身につく!

単語の例文はまた「中検対策ページ」の「語順問題」にも使われています。中国語は語順が命。日本語のようなテニオハ(助詞)がないので、単語をどう並べるかで意思を伝えるのです。ぜひ中国語検定試験コーナーに飛んでこの「語順問題」をやってみてください。画面に出てくる単語をポンポン並べて確定ボタンを押せば〇か×か判定してくれます。ゲーム感覚で遊びながら中国語の言い回しを覚えていけます。

基礎会話でさらに会話力アップ

中国語会話」では、AB二人の会話が場面別に数百文入っています。短いので楽に会話が学べます。これも音声付き、さらには声調を身につけてもらうために工夫したメロディマークもついています。メロディマークをたどりながら音声を真似てみてください。楽についていけることでしょう。

基礎知識で数字・時間・日付などを覚える

基礎知識では数字時間日付など外国語を覚えるのに必須の基礎的な知識が網羅されています。すべて音声付き。楽しくて役に立つ画像や、「時間」コーナーなら実際の時間どおりに動いている「干支(えと)時計」など遊び心も満載。文化コラムも充実して楽しみながら勉強できます。

挨拶は最初に学ぶ基礎会話

こんにちは!ありがとう!ようこそ!などは最初に学ぶべき基礎会話です。こうしたものは「中国語の挨拶」のところにまとめてあります。カテゴリー別のページで読んでもいいし、中国語の基本的な挨拶すべてを入れたまとめ集のページを読んでもいいでしょう。これも全文音声付きです。