古代中国の四大発明【発明の経緯と歴史】

古代中国の四大発明

古代中国は世界に先駆けてさまざまな発明をし、世界文明の発展に貢献しました。現代中国が「パクリ国家」などと言われがちなのが不思議なくらいです。中でも「印刷火薬羅針盤」は四大発明と言われ、後世の私たちもその恩恵を受けています。

ここではそれらを簡単に紹介していきます。興味を持った方はぜひ個別ページを読んでみてください。

中国のさまざまな発明

四大発明の前に中国が発明したものを挙げてみましょう。磁器・マッチ・将棋・カードゲーム・紙幣・紡ぎ車・地震計・蛍光塗料・漆(うるし)・つり橋・凧(たこ)・パラシュート・舵(かじ)・マスト・火炎放射器・花火・地雷・ロケット・銃・大砲…

発明というより発見したものとしては、太陽の黒点・太陽風・血液の循環・糖尿病・十進法・小数・負数・雪の結晶の構造…

ある学者は「中国はなぜ他の文明よりかくも先んじていたのか。そして今中国はなぜ他の地域よりかくも遅れてしまったのか」と言っていますが、私もまったく同じ感想を持ちます。直近の中国はIT技術でまた世界の先頭に踊り出ようとしていますが、古代中国と同じ質のものは感じられません。かつての中国が持っていた優れた創造性はあまり感じられないのです。もちろんこれからの中国もそうであるかどうかはわかりませんが…。

それでは古代中国の抜きんでた創造性、創意工夫、洞察力の結晶である四大発明について見ていきましょう。

四大発明その1「紙」

紙…どこにでもあるあの紙。ノートにも本にもティッシュにも新聞にも折り紙にも段ボールにも使えるあの紙。書写や閲読の手段としてはITの普及でいずれ表舞台から消えるだろうと予想されていますが、ティッシュやトイレットペーパー、段ボールはそう簡単に消えはしないでしょう。植物由来の紙の活躍の場は逆に広がっていくような気がします。

この「紙」なるものは紀元前古代中国人が考え出しました。

紙は後漢の宦官であった蔡倫さいりんが105年に皇帝に献上したことをもって「紙の発明」とされていますが、近年の考古学の発展によってそれよりさらに300年ほど前、つまり紀元前200年の頃から作られていたことがわかっています。

誰か特定の人物が発明したというより、古綿やぼろ布を洗濯してそのまま置きっぱなしにし、それが風化して乾燥しそこに誰かが文字を書いた…こうして自然発生的に「原始の紙」的なものが存在し、作業場で作られるようになり…やがて蔡倫が仕えている皇后の命で、紙や紙制作の改善に取り組み、こうして正式に「紙」なるものが作られるようになったのです。仕組みはきわめてシンプルでその原理は現在の製紙法と変わりません。

その後何百年もかけて紙は改善され、特に書写の道具として発展していきます。

蔡倫によって作りやすく書きやすい紙が作られた後も、中国では竹簡と呼ばれる竹を使った書写の道具が主流でした。大事な文章を書くのに安っぽい紙は使いたがらない人が多かったのです。ようやく晋代になって紙は完全に竹簡に取って替わりました。

やがて紙は日本など東アジアや東南アジアに伝わり、さらに中央アジア、イスラム世界、インドやヨーロッパに伝わっていきます。日本に伝わったのは7世紀頃、イスラム世界は9世紀頃、スペインで紙が作られるようになるのは11世紀、14世紀後期なってやっとアルプスの北へも伝わっていきます。

このように書くと、では「パピルス」は紙ではないのか、という疑問が湧くかもしれません。パピルスはペーパーの語源であり書写の道具ですが、いわゆる「紙」とは製法が異なりますし、材料が限定され世界に広がり得るものではありませんでした。またヨーロッパでは古くから「羊皮紙」も使っていましたが、これは文字通り「羊の皮」・動物の皮ですから紙ではありません。「羊皮紙」は美しいですが大量生産はあり得ません。

中国発明の「紙」という作業工程のシンプルな、安く、大量生産が可能な存在なくして、人類の文明の進歩はなかったと言っても過言ではないでしょう。

紙の発明と歴史
紙の発明と歴史』(リンク先のページで、紙の発明と歴史について詳しく紹介しています。)

四大発明その2「印刷」

さて四大発明その2・印刷について紹介します。中国における彫版印刷(木版印刷とも)は6世紀から9世紀頃、活版印刷は11世紀に始まりました。活版印刷はドイツのグーテンベルクが発明したと言われますが、こちらは15世紀のことであり、何等かの形で中国の影響を受けていると考えられています。

彫版印刷とは木の板に必要とする文字をすべて彫って版を作る印刷のこと。刷り終えた後も必要とあればまたすぐ刷ることができます。活版印刷とは金属などに文字を彫りハンコ状にしたものを1本1本並べて文章にした版を作り、色料をつけて印刷することです。刷り終えれば版を解体し、活字はそれぞれ保存しておきます。欧米のように表音文字は活版印刷に向いており、中国語の漢字は数が多すぎて活版印刷には向いていません。活版印刷術が中国で早くに発明されていながらその後発展することがなかったのは、漢字の特殊さがあったのでしょう。

中国でいち早く印刷術が始まったのは、印鑑文化・拓本文化といった印刷術につながる文化が存在したからと言われます。また彫版印刷が普及した理由としては、仏教文化の広がりや科挙が国民の広い層を対象に行われたことなどが挙げられます。大勢の信徒がありがたい経文を求めたり、科挙受験をしようとする学生たちは参考書を求めました。いずれも印刷術がなければ需要にこたえるのは難しかったことでしょう。印刷術を活用した紙幣もまた中国が最初に作り出し、紙幣に権威を持たせ偽札を防ぐ必要があるなどいくつかの条件は印刷術を進化させたことでしょう。

印刷の発明と歴史
印刷の発明と歴史』(リンク先のページで、印刷の発明と歴史について詳しく紹介しています。)

四大発明その3「火薬」

火薬は9世紀頃の中国で発明され、後に主に戦争の道具として開発されました。ところが火薬は戦争の道具として開発されたわけではなく、「不老長寿のための仙薬」を作り出すため方術士(道教の道士)たちが試行錯誤を繰り返す中で偶然に生まれたものです。

火薬は硝石(硝酸カリウム)・硫黄・木炭それぞれの粉末を混ぜ合わせて作りますが、中でもポイントは硝石です。不老長寿の仙薬を作ろうとした方術士にとって、硝石や硫黄は薬品としても使われていた材料であり、手近なものでした。ある日たまたまいくつかの鉱石を混ぜ合わせていたら爆発事故が起きた…こんなことがきっかけとなって火薬は生まれたのでした。

火薬の発明と歴史
火薬の発明と歴史』(リンク先のページで、火薬の発明と歴史について詳しく紹介しています。)

四大発明その4「羅針盤」

羅針盤とはいわゆるコンパス・方位磁石のことです。この羅針盤のひな型的なものは、中国ではすでに紀元前から使われていたというのですからスゴイです。これが海の航海に使われるようになったのは9世紀から11世紀の間と言われています。

中国の羅針盤といえば、四角い形の上に円、そこに何やら細かな字が書かれ、更にその上にひしゃくのようなものが置かれた絵や写真がよく出てきます。これが羅針盤の祖先で、これを使えば方角を知ることができるのですが、この使用目的は主として風水のためでした。風水…家や墓を作る時土地の方位や日取りなどを選ぶためのものだったのです。

唐代は主に風水のために使われた羅針盤ですが、北宋時代になると操船に用いられるようになり、航海の安全性が高まりました。明の時代、鄭和という武将が船でアフリカまで行く大航海を成功させますが、羅針盤なくしてこの成功はなかったことでしょう。

羅針盤・コンパスは現代でもなお山歩きなどに不可欠な道具として役立っています。

羅針盤の発明と歴史
羅針盤の発明と歴史』(リンク先のページで、羅針盤の発明と歴史について詳しく紹介しています。)