年画
年画とは
年画とは、中国の民衆が伝統行事の春節やおめでたい慶事に、家の出入り口や部屋の主室の壁などに貼って飾り厄除け・招福を祈る版画のことで、中国の民間工芸品の一つです。
この風俗は都市住民の間では廃れつつありますが、都会でも旧家、農村地域の鎮(町)に住む人々、農民の家庭では今でも広く行われています。
春節については「春節」のページで詳しく紹介しています。
中国語の「あけましておめでとう」「よいお年を」などの春節に使える挨拶については「中国語であけましておめでとう」のページで発音付きで紹介しています。
年画の歴史
年画の起源はあまりはっきりしていませんが、古代の門神画がそのルーツではないかとされています。漢代には桃の木に彫った二門神を門にかける風習がありました。現存する最古の年画としては金代(1115~1234年)の「四美図」・「義勇武安王位」があります。明代には版画の技術が向上し年画は広く民間に普及していきました。清代に入ると西洋画の影響を受けるようになり、年画という版画美術は江戸時代の浮世絵にも影響を与えたと言われます。
年画のジャンル
様式別ジャンルには古代年画、伝統年画、新年画、現代年画があります。
内容別ジャンルには神仙像画、吉祥画、都会生活画、風景画、物語画、人物画、花・動物画、風俗画、風刺画など。
制作技法別ジャンルには多色版木版画、木版画、手彩色併用、全手彩色、写真印刷年画など。
年画生産地別ジャンルには楊柳青年画、桃花塢年画、楊家埠年画、綿竹年画、武強年画、鳳翔年画があります。
有名な年画
年画は版画ですから同じものがたくさんあります。中国料理店などで壁に貼られているものを見た方もいるかもしれません。非常に素朴な、カラフルで田舎っぽい、それがとても中国的な感じでなおかつ可愛らしく、芸術とは言い難いものですが魅力があります。そのうち有名なものとその名前、またそこに描かれた寓意などを紹介しましょう。
『多福多寿多子』
丸々と太った童子が右に桃、左にコウモリを持ち、傍らにはザクロ、そして鶴が舞っているという図柄です。桃は長寿、コウモリは福、ザクロは多子(子供がたくさん生まれること)、鶴は吉祥を意味しています。
『連年有余』
丸々と太った童子が鯉を抱き、傍らには蓮の花が咲いているという図柄です。鯉は利益の利と同音で、蓮の年は連年、つまり年々に通じます。今年も来年もずっと衣食が有り余る年でありますように、という願いがこめられています。
『揺銭樹』
上に揺銭樹(金の成る木)があり、この樹の枝一杯にお金がぶらさがっています。下には聚宝盆(中からいろいろな宝が出てくる盆)があり、そばにお金を入れる倉、お金をかき集める人、老財主がいます。この年画はかつて農家では春節に必ず貼ったと言われます。
『大竈王』
竈(かまど)の神様の図です。中国の春節は旧暦12月23日の送竈の祭りから始まります。竈の神様は玉皇大帝(道教の最高位の神)から派遣され1年間家にとどまります。そして12月のこの日、この家に住む人々の1年間の暮らしぶりや生き方の結果を報告するために天界に戻ります。この送竈の儀式の時、家人は玉皇大帝に悪口を言われないよう神前に料理やまんじゅうなどを供え、さらにはこの神様の口に飴を塗って送り出します。竈神は元日の朝になると再びこの家にやってきます。この年画は竈の上に貼って家の守護神とします。
現代の年画
年画は今も作られており、その一部は展覧会や美術書などでも見ることができます。ただこうしたものからは庶民の素朴な祈りはあまり感じられません。むしろ年画に触発された新しい美術ジャンルのように感じられます。
年画という寓意(比喩・たとえ)に満ちた「お札(ふだ)」は美術と宗教、迷信が混然一体となった魅力的な存在です。