節分の歴史と習慣【豆まきと追儺の由来】
「節分」は季節としては二十四節気が由来となっており、豆まきや鬼退治などの行事・習慣としては追儺・大儺が由来となっています。
このページでは「節分」の季節としての由来、行事としての豆まきや鬼退治の由来、恵方巻を食べるときの正確な方角などについて紹介します。
なお、2024年の節分は2月3日となっています。
目次
- 1. 節分とは
- 2. 節分の豆まきとその由来
- 3. 節分の由来「追儺(ついな)」
- 4. 豆をまく理由
- 5. 豆まきのやり方
- 6. 恵方巻の食べ方・恵方の決め方
- 7. 恵方詣り
- 8. 柊イワシ
節分とは
節分は現在では年に1回、立春の前日(毎年2月3日頃)だけの行事となっていますが、本来は年に4回ありました。
日本では平安時代ごろから「二十四節気」と呼ばれる1年を24分割した暦が使われていましたが、この二十四節気では以下の図のように、立春から春が始まり、立夏から夏が始まり、立秋から秋が始まり、立冬から冬が始まります。
節分とは、本来これらの「立春の前日」「立夏の前日」「立秋の前日」「立冬の前日」のことを意味します。
すなわち、節分は年間で、「冬の最終日=大寒の最終日=立春の前日」、「春の最終日=穀雨の最終日=立夏の前日」、「夏の最終日=大暑の最終日=立秋の前日」、「秋の最終日=霜降の最終日=立冬の前日」の4回あります。
これらの春・夏・秋・冬の季節の変わり目に、古い季節の邪気を払い、新しい季節に福を迎え入れるように、様々な行事が行われてきたのが節分です。
もともとは年4回の行事でしたが、立春の前日の節分だけが残り、江戸時代の後期には他の3回の節分はすたれていきました。
立春が旧正月と時期的に近く、古い季節の邪気を払い、新しい季節に備えるという節分の習慣が受け入れられやすかったようです。
なお、誤解されやすいのですが立春が完全な太陽暦であるのに対し、旧正月(必ず新月の日)は太陰太陽暦であるため、この二つは約29.5年に1度しか一致しません。詳しくは「立春」のページで紹介しています。
以上が「季節としての」節分の由来で、古代中国で生まれた二十四節気が元となっています。一方、節分といえば豆まき・鬼退治(鬼やらい)などの行事がありますが、こちらの由来は異なっています。
節分の豆まきとその由来
節分の行事といえば豆まき・鬼退治(鬼やらい)ですが、これは追儺と呼ばれる大晦日に行われていた宮中行事が元になっています。
大晦日が旧暦(月齢を基準とした太陽太陰暦)の旧正月の前日であったのに対し、節分は二十四節気(日照時間を基準とした太陽暦)の立春の前日です。そのため、旧暦であっても大晦日と節分は完全な別物なのですが、どちらも同じ「年の変わり目」ということで、江戸時代に大晦日の行事である追儺をもとにした「鬼やらい(鬼退治・豆まき)」が節分の日に行われるようになったようです。
節分の由来「追儺(ついな)」
追儺という行事は中国で行われていた行事が日本に伝わったものです。中国では追儺のことを「儺」(ヌオ)と言っていました。中国の追儺・「儺」とはどんなものかというと「邪神や疫病を追い払い福を招く祭り」のことで、中国古代において最も頻繁に行われた祭りです。今でも中国全土の多くの場所でこの祭りの痕跡が見られます。
周代(B.C.1046~B.C.256)には庶民による「儺」のほか、朝廷や諸侯による「大儺」がありました。この「大儺」の時、祈祷師は「方相氏」というシャーマン・祈祷師に扮し、手には熊の皮をつけ顔に四つ目の面をかぶって、黒い上着をつけ赤い袴をはきました。その手には矛や盾などの武器を持ち、奴婢たちを引き連れて、家々を回っては叫び声をあげ、たたいたり突いたりしたと『周礼』(しゅらい…儒教における十三経の1つ)に書かれています。
この中国の「大儺」が日本に伝わって「追儺」として宮廷の年中行事になりました。
この追儺は飛鳥時代(6世紀末~8世紀初頭)にはすでに行われていたことが『続日本紀』に記されています。
追儺の行事では、中国と同様「方相氏」と呼ばれる厄払い役とその手下がいて、役人たちがそれに扮し、宮廷内を掛け声をかけて回ったと言います。
方相氏はこれも中国同様、「袍」と呼ばれる赤い長衣を着て、四つ目の面をつけ、右手に矛、左手に盾を持ったと言いますから中国の儀式をそのまま取り入れていたことがわかります。
日本ではこのとき宮廷内の貴族たちが弓を放ったり、振り太鼓を振って、鬼を追い払う方相氏を応援しました。
これが後世の「豆をまいて鬼を追い払う」節分の儀式になったと言われますが、面白いことに日本では、鬼を追い払う方相氏がやがて鬼そのものと化して、追い払われる側になったのです。これは中国では見られない現象で、日本では「方相氏」が葬儀ともかかわったことで、ケガレの対象として忌避されていったのではないか、などと考えられています。
中国の「儺」は清朝末期に廃れ、1949年の新中国成立後は「害ある迷信」と見なされ、中国文化からは消えていきました。
一方日本では、宮廷の行事としての「追儺」はやがて消失し、江戸時代からは「追儺」の行事を源流として持つ「節分」の行事が盛んになっていきました。この節分は豆まきの行事として今も各家庭で、特に子供のいる家庭で行われています。
伝統文化が主として子供たちを楽しませる行事になっているという点では「七夕」と似ています。
豆をまく理由
節分といえば豆まきですが、なぜ豆で鬼を追い払うのでしょうか。
これにはいくつかの説があります。
・中国の医薬書に大豆は鬼毒に効果があると書かれていたことから。
・「魔滅」と言って、魔物を滅するという意味から。
・「魔目」と言って、鬼の目を打つという意味から。
いずれにしろ、豆には鬼を追い払う力があると信じられてきました。
もともとの中国での「大儺」でも五穀(諸説ありますが『周礼』をもとにするのであれば麻・黍・稷・麦・豆)を用いて厄除けを行っており、これが日本の「追儺」に取り入れられたようです。
豆まきのやり方
・節分の前日に福枡と呼ばれる枡に豆を入れ、神棚にお供えしておきます。
・節分の日に福枡を持ちながら、戸や窓を開けて「鬼は外」と唱えながら家の外に豆をまきます。
・今度は戸や窓を閉めて「福は内」と唱えながら家の中に豆をまきます。
・何度か「鬼は外」「福は内」を繰り返して豆まきが終わったら、歳(年齢)の数だけ豆を食べると健康になると言われています。
恵方巻の食べ方・恵方の決め方
節分の近くになるとスーパーやコンビニなどで恵方巻が売られるようになります。
恵方巻は節分の日に「恵方」を向いて無言で食べると福が訪れると言われていますが、この「恵方」とは歳徳神と呼ばれるその年の福を司る神様がおられる方角のことで、毎年変わります。(※2019年の恵方は下のほうにある図の緑の矢印、甲の方角、北を0°としたときの75°になります)
古代中国では年を表したり方角を表したりするのに、「十干」と呼ばれる十種類の記号(「甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸」)を使っていました。
かつて日本でもこの十干を使って「甲の年」というように、その年を表現していました。「恵方」はこの十干に対応して決まります。
十干は記号であり様々なものに使われていたため、方角を表すのにも使われていました。そのため同じ漢字が出てきてわかりにくいのですが、「二十四山(二十四方)」と呼ばれる360°を24に分割した方角の呼び方があります。
「二十四山」は十干のうちの8種類と、「十二支」と呼ばれる12種類の記号、「八卦」と呼ばれる8種類の記号のうちの4つを使って方角を表現したものです。
「恵方」は年によってこの「二十四山」のうちの4種類「甲・丙・庚・壬」の方角のうちのどれかになります。
「甲・己」の年(図の緑の矢印)は「甲」の方角(75°)、「丙・辛・戊・癸」の年(図の茶色の矢印)は「丙」の方角(165°)、「乙・庚」の年(図の紫色の矢印)は「庚」の方角(255°)、「丁・壬」の年(図の紺色の矢印)は「壬」の方角(345°)になります。
なお、十干は10種類のため、西暦の下一桁と毎年同じものが一致し覚えやすくなっています。
具体的には以下の表のようになります。
十干 | 西暦の 末尾 | 近い年 | 方角 | 方位角 |
---|---|---|---|---|
甲・己 | 4・9 | 2024 | 甲 | 75° |
丙・辛 戊・癸 | 1・6 3・8 | 2023 | 丙 | 165° |
乙・庚 | 0・5 | 2025 | 庚 | 255° |
丁・壬 | 2・7 | 2022 | 壬 | 345° |
恵方参り
この「恵方」ですが、以前は「恵方参り」という行事が広く行われていました。
節分ではなく旧正月に行われていた行事なのですが、自宅から恵方の方角にある神社に初詣に行くというものでした。
自宅から恵方の方角には遠くまで行かないと神社がない時などは、いったん近所にある神社が恵方に見える地点まで移動してから、恵方にある神社に向かって歩き始めればそれでもいいと言われていたようです。
「恵方巻」を食べるという習慣は、かつてはごく一部にしかなく、最近になってスーパーなどが盛り上げようとして始めたと言われますが、「恵方」を縁起のいいものとしてとらえる習慣は古くからあったようです。
柊イワシ
節分の日には、イワシの頭を柊に刺して玄関に飾るという習慣があります。
鬼が嫌う臭いものである「イワシの頭」と、鬼の目を刺す棘のある「柊」という2つの物を合わせることで、鬼を追い払おうとして始められたと言われています。
豆まきほどメジャーではありませんが、節分近くになると大き目のスーパーや百貨店などでは飾り物を見かけます。