寒露の意味・食べ物・歴史と仕組みの図説

寒露

寒露かんろとは二十四節気にじゅうしせっきの1つで、秋分しゅうぶんの次、秋の5番目の節気です。

このページでは寒露の意味、成り立ち、実際の季節感とのずれ、2024年の寒露の日にちと期間、寒露の七十二候、寒露の食べ物や季節の花などを紹介していきます。

なお、2024年の寒露は10月8日となっています。

寒露とは

寒露

白露はくろとは二十四節気にじゅうしせっきの1つで、「地面の露に寒さを感じる時期」を意味します。太陽の位置を表す黄経で195度の時を言い、新暦では10月8日~9日ごろで年によって変わります。

「寒露」のころは気温が2つ前の節気である「白露はくろ」のころより下がっていて、地の露水はさらに冷たくそろそろ霜になりそうな時期です。

寒露は二十四節気の1つ

二十四節気とは古代中国で作られた暦で、日本では平安時代から使われています。上の図のように1年を24等分し、それぞれに名前を付けたものです。

二十四節気は太陽の運行に基づいており、1年で最も昼の長い日を夏至げし、1年で最も昼の短い日を冬至とうじ、昼と夜の長さが同じ日を春分しゅんぶん秋分しゅうぶんとし、この4つを春・夏・秋・冬の中心として決めた暦です。この4つの節気は合わせて「二至二分にしにぶん」と呼ばれています。

二十四節気の仕組み

この二至二分が二十四節気を決めるうえでの基準となっています。

立秋はこの夏至と秋分のちょうど中間の日で、暦の上ではこの日から秋が始まります。

秋の節気は立秋りっしゅう処暑しょしょ白露はくろ秋分しゅうぶん寒露かんろ霜降そうこうとなっており、寒露は秋の5番目の節気です。

また、立春りっしゅん立夏りっか立秋りっしゅう立冬りっとうの4つを「四立しりゅう」と言い、それぞれ春夏秋冬の始まりの日として重要な節気となっており、二至二分と四立を合わせて「八節はっせつ」と言います。

二十四節気の成立時期
二十四節気の成立時期。殷の頃に二至二分、西周の頃に八節、春秋戦国の頃に二十四節気がそれぞれ成立しました。

2024年の寒露はいつ?

寒露の日にちと期間

二十四節気のそれぞれの節気には、その日1日を意味する場合と、次の節気までの期間を意味する場合があります。

2024年の寒露であれば、以下のようになります。

・日付としての2024年の寒露は10月8日。

・期間としての2024年の寒露は10月8日~10月22日まで。

二十四節気と実際の季節感がずれる理由

二十四節気は「実際の季節感とずれている」と感じることがあります。特に立春(2月上旬)、立夏(5月上旬)、立秋(8月上旬)、立冬(11月上旬)の4つの節気はそれぞれ春夏秋冬の始まりを意味しますが、「春というにはまだ早い」などと感じます。

ここではその「実際の気候とずれる理由」について解説します。

春夏秋冬の決め方

二十四節気

夏至は昼の時間の最も長い日、冬至は昼の時間の最も短い日です。

けれども夏至に最も暑くなり、冬至に最も寒くなるかというとそうではなく、実際にはそれより1~2か月ほど遅れて最も暑い日、最も寒い日がやってきます。

ただし二十四節気はこの「夏至を夏の中心」「冬至を冬の中心」そして「昼と夜の長さが同じ春分・秋分を春の中心と秋の中心」として1年を4等分し、春夏秋冬を決めました。

そのため「立春と言われてもまだまだ寒く、冬と感じる」ということが起こります。

日本と中国との気候の違い

また、二十四節気が作られたのは紀元前の中国黄河流域のため、現在の東京の気候とはややずれがあります。

下の地図の中央左にある洛陽らくようが東周時代の首都で、中原ちゅうげんとはこの周辺一帯を指す言葉です。二十四節気はこの中原で作られたと考えられています。

二十四節気が作られた地域の地図

気候の違いについては以下のグラフを見ながら解説します。

二十四節気が作られた地域の地図

上のグラフは二十四節気が作られた中原ちゅうげん から代表して洛陽を選び、東京と年間の平均最高気温を比べたものです。

グラフの6月あたりを見ると、中国には梅雨と台風がないため暑さのピークが日本よりも1~2か月程度早くなっています。この部分が二十四節気と日本の実際の季節とが最も異なる箇所になります。立夏は5月上旬ですが、中国のグラフでは夏の始まりと言われて納得がいくものの、日本のグラフでは夏はもう少し先と感じます。

日本が1月・2月で気温がほぼ変わらず12月はそれより暖かいのに対し、中国では1月が最も寒く2月より12月の方が冷え込んでいます。これも冬の季節感のずれに繋がっています。

節気には日付と期間の2つの意味がある

また、二十四節気の1つ1つには期間としての意味もあるものの、カレンダーやニュースなどではもっぱら日付としての意味で使われています。このことも二十四節気と日本の実際の季節感がずれる要因となっています。

二十四節気と七十二候

七十二候

「二十四節気」は、古代中国で作られた農事を指導するために作られた暦で、春秋戦国時代(BC.770~BC.221)黄河流域で作られたと言われます。中国では暦として月の運行に基づいた「太陰暦」が使われていましたが、これですと実際の季節とズレが生まれてしまうため、太陽の運行の軌跡を24等分した「二十四節気」や、それをさらに約5日ごとに分割した「七十二候しちじゅうにこう」が作られました。このようにして季節の変化をきめ細かくとらえて農事に生かしたのです。

この「二十四節気」は日本では平安時代に取り入れられました。日本と中国とでは位置も気候も異なり、中国の二十四節気は必ずしもすべてが日本の気候に合うものではありませんでしたが、私たちの生活に根付き、大多数の日本人が農業とは無縁になった現代でもテレビのニュースなどで「今日から立春です」などと使われています。

1年には春夏秋冬4つの季節がありますが、古代中国人はそれをさらに24の「節気」に分けました。1年を24に分けるならそれぞれ約15日、その節気にはまたそれぞれ3つの「候」を設け、3×24で72候、約5日で1つの候としてそれぞれの候にその季節の特徴を表す言葉をつけました。

日本は平安時代からこの二十四節気を暦の中に取り入れましたが、これだけでは日本の気候の説明には足りないので、「雑節」というものを設けました。雑節には、節分・彼岸・八十八夜・入梅・半夏生・土用・二百十日などがあります。

さらに「七十二候」については江戸時代の天文暦学者・渋川春海が日本の気候に合わせて改訂版を出し、その後明治時代に「略本暦」が出てそれまでの「七十二候」を大幅に変えました。現在使われている日本の七十二候はこれが元になっており、上の図に書かれているのもこの七十二候です。

なお2016年に中国の「二十四節気」がユネスコの無形文化遺産に登録されました。

寒露の七十二候(日本)

鴻雁来る
鴻雁来る。

日本の寒露の七十二候は以下のようになります。

寒露の七十二候
内容時期
初候鴻雁こうがんきた10月8日頃

10月12日頃
次候菊花きっかひら10月13日頃

10月17日頃
末候蟋蟀きりぎりす10月18日頃

10月22日頃

雁の群れがやってきて、菊の花が咲き、コオロギが戸口でさかんに鳴く声が聞こえる季節です。

菊花開く
菊花開く。

寒露の七十二候(中国)

中国の寒露の七十二候は「鴻雁來賓」「雀入大水為蛤」「菊有黃花」となっていて、「雁がやってきて、雀が海に入ってハマグリとなり、菊が黄色い花を咲かせている」という意味です。雀がハマグリになるというのは不思議な話ですが、雀とハマグリの模様や色が似ているので、昔の中国人は雀が海に入るとハマグリになると考えていたのです。

スズメ
スズメ。
ハマグリ
ハマグリ。言われてみれば似ているような…。

重陽節

中国は節句を旧暦で祝いますので、旧暦9月9日の「重陽節」はちょうど寒露の祝っていました。9という陽の数字が二つ重なるので「重陽」と言います。「じゅうよう」とは読まず「ちょうよう」と読むのは、「重い」ではなく「重なる」という意味からです。

ちなみに中国の四川省に「重慶」という町がありますが、日本で「じゅうけい」と呼ばれているこの町は本来「ちょうけい」と読むべきなのです。というのはこの地は昔「二つの喜びが重なった」ことから「重慶」という名になったからで、「重い喜び」から「重慶」になったわけではないからです。日本人が「じゅうけい」と読もうが「ちょうけい」と読もうが中国人は気にしないかもしれませんが…。

重陽節の習慣

グミの果実
グミの果実。

中国の重陽節では、かつて茱萸(ぐみ)という植物を身につけ、山に登って菊花酒を飲み厄払いをする習慣がありました。やがて重陽節はこの習慣ともども中国の歴史からは消えてしまいましたが、最近「老人節」(敬老の日)として復活しています。この日は高齢者がグループで近くの山までハイキングしたり周囲と交流したりする活動などが行われています。

日本では八十歳を過ぎると自治体から記念品や金一封をもらえたりしますが、中国の敬老の日は老人が心身を鍛える日でもあるようです。これはもともと「重陽節」にあった習慣が今に生かされているということでしょう。ただこの日は祝日ではありません。

寒露の「旬の食べ物」

スダチ

スダチ

スダチの旬は8月~10月ごろ。そうめんに入れたり、サンマやマツタケなどに掛けて食べたりと、晩夏から秋にかけての味覚です。

梨

薬膳では喉が痛いときには梨を食べるといいと言われています。梨の採れる時期は9月~11月。旬の時期は10月です。

栗

栗の採れる時期は8月下旬~10月下旬ごろ。秋の味覚の一つです。

寒露のころはちょうど栗ご飯のおいしい季節になりますね。

栗ご飯

マツタケ

マツタケ

秋の味覚の中でも高価な食材として知られるマツタケは9月~10月に採れます。

マツタケご飯や、マツタケを入れたお吸い物は香りがよく、昔から食べられてきました。松尾芭蕉の俳句などにも登場します。

マツタケご飯

サンマ

サンマ

秋の味覚のうち、魚料理と言えばサンマが思い浮かびます。サンマが獲れる時期は9月~11月。10月頃にはスーパーなどでよく見かけます。

柿

柿には様々な種類がありますが、採れる時期は9月~12月ごろ。旬の時期は10月です。

銀杏

銀杏

銀杏はイチョウの木の実の中にある種子の部分で、9月下旬~11月中旬ごろに採れます。

秋になると茶碗蒸しでよく見かけます。

茶碗蒸し

リンゴ

リンゴ

冬の果物のイメージの強いリンゴですが、実際には寒露のころから収穫が始まります。

寒露の「季節の花」

コスモス

コスモス

コスモスと言えば秋の花ですが、早い種類は7月の下旬ごろから咲いています。主に9~10月に見ごろを迎えます。

キンモクセイ

キンモクセイ

香りの強い花で知られているキンモクセイは、9月下旬~10月中旬ごろに咲きます。

茶の花(チャノキ)

茶の花(チャノキ)

私たちが普段飲んでいるお茶は、緑茶も紅茶も烏龍茶も、すべてチャノキという植物の葉っぱからできています。

このチャノキはツバキ科で、花をつけるのが10月上旬~11月下旬ごろ。寒露の時期あたりから茶畑ではツバキによく似た花が見られるようになります。

寒露の関連ページ

寒露の項は以上で終了となりますが、このサイトでは寒露の1つ前の節気「秋分しゅうぶん」や、寒露の次の節気「霜降そうこう」、また「二十四節気にじゅうしせっき」や「七十二候しちじゅうにこう」についてもリンク先で詳しく紹介しています。