大器晩成たいきばんせい

意味
偉大な人物は大成するのが遅いということ。
例文
なかなか芽が出ないって言うけど、僕は大器晩成型なんだ。
出典
『老子』道徳経41章

※老子とは:中国春秋時代・紀元前6世紀の哲学者。「道家」は老子の思想を基礎とし、後の「道教」は老子を始祖とする。神格化され「太上老君」とも呼ばれる。

※『老子道徳経』とは:『老子』または『道徳経』ともいう古代の哲学書。老子が書いたと言われる。全81章。全約5000文字。

「大器晩成」の由来

大器晩成」は『老子道徳経』第41章にある文に入っている言葉です。まずはこの『老子道徳経』が書かれた時代と、これを書いた老子が暮らした場所の歴史地図から見ていきましょう。

「大器晩成」の故事の時代

「大器晩成」の故事の時代(年表)
大器晩成」の故事の時代(年表)。「大器晩成」の元となった話は老子により中国の春秋時代にまとめられました。

「大器晩成」の故事の場所

「大器晩成」の故事の場所(歴史地図)
大器晩成」の故事の場所(歴史地図)。老子は陳の苦県の生まれです。

「大器晩成」の故事

大器晩成

それでは『老子道徳経』第41章の中の「大器晩成」が出てくる文を原文・書き下し文・現代語訳の順に紹介します。この『老子道徳経』はやや難解な哲学書になっています。

「大器晩成」の話の原文

上士聞道、勤而行之。中士聞道、若存若亡。下士聞道、大笑之。不笑不足以爲道。故建言有之。明道若昧、進道若退、夷道若纇。上徳若谷、廣徳若不足、建徳若偸。質眞若渝、大白若辱、大方無隅。大器晩成、大音希聲、大象無形。道隱無名。夫唯道、善貸且善成。

「大器晩成」の話の書き下し文

上士は道を聞きては、勤めてこれを行なう。中士は道を聞きては、るがごとく亡きが若し。下士は道を聞きては、大いにこれを笑う。笑わざればって道と為すに足らず。故に建言けんげんにこれあり。明道はまいきが若く、進道は退くが若く、夷道はらいなるが若し。上徳は谷の若く、広徳は足らざるが若く、建徳はおこたるが若し。質真しつしんかわるが若く、大白たいはくじょくなるが若く、大方たいほうかど無し。大器は晩成し、大音たいおんは希声、大象たいしょうは形無し。道は隠れて名なし。それただ道は、善く貸し且つ善く成す。

「大器晩成」の話の現代語訳

優れた者が道なるものを聞くと、一生懸命それを実践しようとする。普通の者が道なるものを聞くと、存在するのかしないのかよくわからずに首をひねる。愚かな者が道なるものを聞くと大笑いする。愚者に笑われないようでは道とは言えない。

だからこんな言葉があるのだ。「明るい道は暗く見える。前に進む道は後ろに退くかのようだ。平坦な道には起伏を感じる。高い徳はまるで谷のようである。広くいきわたる徳は物足りない。しっかりした徳はだらけているかのようだ。純粋なものは絶え間なく変化する。真っ白なものは黒く見える。大いなる四角には角がない。大器は晩成し、大音はかすかに聞こえ、大いなるかたちには形がない。道は裏に隠れて名前がない。それでも道は力を貸し、完成に導く」

原文の「大器晩成」という言葉の前後に並ぶ四字の言葉はみな相矛盾するものを並べており、この「大器晩成」の「大器」と「晩成」だけは相矛盾するようには見えません。「大器」ですから完成までには時間がかかるのは当然でしょう。と思ったら原義は現在使われている「大器晩成」の意味とは異なるのでした。原義で「大器晩成」は「大きな器は完全な器ではない」という意味なのです。そういう意味だと思って読んでみてもわかりにくい文ですが、要するに「道」なるものは、誰にでも見えたり簡単にわかるようなものではない、ということを言っているわけですね。

老子
老子。大器晩成は『老子』(書物)の中にある話からできた故事成語です。

「大器晩成」の関連語

「大器晩成」の中国語

中国語大器晚成
ピンインdà qì wǎn chéng
音声
意味偉大な人物は大成するのが遅いということ。中国語も日本語と同じ意味です。