じゅうよくごうせい

意味
柔よく剛を制すとは、しなやかで柔らかいものが強く硬いものを制すること。転じて、弱い者が強い者を打ち負かすことも意味する。
例文
会社で実権を握っているのは実はあのおとなしそうな奥さんなんだ。社長を裏で上手にコントロールしている。柔よく剛を制すってやつさ。
出典
三略さんりゃく
……『三略』とは:中国の兵法書。太公望たいこうぼうが書き、神仙である黄石公こうせきこうが選したと言われる。後世の人が太公望や黄石公に仮託して書いた偽書とも。

「柔よく剛を制す」の由来

まずは「柔よく剛を制す」の由来となったお話の年表と歴史地図から紹介します。

「柔よく剛を制す」の故事の時代

「柔よく剛を制す」の故事の時代(年表)
柔よく剛を制す」の故事の時代(年表)。中国の周の時代の出来事です。

「柔よく剛を制す」の故事の場所

「柔よく剛を制す」の故事の場所(歴史地図)
柔よく剛を制す」の故事の場所(歴史地図)。西周時代の非常に小さい国、杞の国での話です。

「柔よく剛を制す」の故事

柔よく剛を制す

柔よく剛を制す」この言葉のいわれは『三略』という兵法書にあります。

原文、書き下し文、現代語訳で読んでみましょう。

「柔よく剛を制す」の原文

軍識曰、柔能制剛、弱能制強、柔者徳也、剛者賊也。

弱者人之所助、強者人之所攻。

柔有所設、剛有所施、弱者所用、強者所加。

兼此四者、而制其宣。

「柔よく剛を制す」の書き下し文

軍識ぐんしきいわく、柔く剛を制し、弱能く強を制すと、柔は徳なり、剛は賊なり。

弱は人の助くる所、強は人の攻むる所なり。

柔は設くる所有り、剛は施す所有り、弱は用うる所有り、強は加うる所有り。

の四者を兼ねて、其のよろしきを制す。

「柔よく剛を制す」の現代語訳

戦いについての予言の書・『軍識(ぐんしき)』にこう書いてあります。

「柔は剛を抑え、弱は強を制す」と。

柔とは他者を包み育てる徳であり、剛とは他者を傷つける悪である。

弱者は人が助けようとするが、強者は人が攻め込もうとする。

柔、剛、弱、強ともにそれぞれ用いるべきところがある。この四者を兼ねてその場に応じ自在に用いることが大切なのである。

原文は柔の方が剛より良いと言っているのではなく、柔・剛・弱・強それぞれ使うべきところでうまく使いなさい、と言っています。

押すだけでも引くだけでもなく、押したり引いたり、臨機応変にやりなさい、と。

いつも強面(こわもて)でも駄目だし、引いてばかりも駄目だということです。

「柔よく剛を制す」の関連語

「柔よく剛を制す」と同じく兵法書がもとになってできた故事成語には、「呉越同舟」「風林火山」「彼を知り己を知れば百戦殆からず」などがあります。

「柔よく剛を制す」の中国語

中国語柔能制刚
ピンインróu néng zhì gāng
音声
意味柔よく剛を制す。

中国語も日本語と同じ意味です。

つまり日中ともに原文の言わんとするところから離れ、弱いものが強い者に勝つ、という意味で使われています。