有終の美を飾る

意味
最後までやりとげ、立派な成果をあげること。
例文
彼はもうじき定年だけど、最後にこの仕事を完成させて有終の美を飾ったね。
出典
詩経しきょう』大雅・蕩

※『詩経』とは:周代に作られた中国最古の詩編。西周時代に当時歌われていた民謡などを孔子が編集したと言われる。現行本『詩経』は毛亨・毛萇が伝えたものなので『毛詩』とも呼ばれる。

この詩編の構成は

「風(ふう)」…各地の民謡を集めたもの

「雅(が)」…朝廷の宴席などで奏した音楽の歌詞

「頌(しょう)」…朝廷の祭祀に用いた廟歌の歌詞

から成っている。

「有終の美を飾る」の由来

有終の美を飾る」は『詩経』の中にある滅びゆく周王朝について述べた部分が元となってできた故事成語です。まずはこの故事の年表と地図から見ていきましょう。

「有終の美を飾る」の故事の時代

「有終の美を飾る」の故事の時代(年表)
有終の美を飾る」の故事の時代(年表)。『詩経』は中国の西周時代にまとめられたと考えられています。

「有終の美を飾る」の故事の場所

『詩経』の中で、衰退していく周王朝について有終の美を飾ることのむずかしさがうたわれていますが、その部分が「有終の美を飾る」の元となりました。ここでは衰退する前の周(西周)の地図と、衰退した後の周(東周)の地図を紹介します。

「有終の美を飾る」の故事の場所(西周時代)
「有終の美を飾る」の故事の場所(西周時代)。
「有終の美を飾る」の故事の場所(春秋時代)
「有終の美を飾る」の故事の場所(春秋時代)。周は小国になりました。

「有終の美を飾る」の故事

有終の美を飾る

では『詩経』にある歌を紹介しましょう。

原文は『詩経』大雅・蕩と名付けられた詩です。この詩は全8章で、「有終の美を飾る」はこの第1章の最後に出てきます。ただこの言葉と同じ文字は出てきません。

「有終の美を飾る」の原文

蕩蕩上帝、下民之辟。

疾威上帝、其命多辟。

天生烝民、其命匪諶。

靡不有初、鮮克有終

「有終の美を飾る」の書き下し文

蕩蕩たる上帝、下民のよこしま

疾威たる上帝、その命は多く辟。

天の烝民を生ずる、その命はまことあらず。

初めあらざるなし、克く終わることすくなし。

「有終の美を飾る」の現代語訳

君主が放蕩で礼法を無視している。

彼はしもじもの者たちの君主である。

暴虐の君主の下す政令はみなよこしまである。

天は民を生んだが、その命はまことに信じられぬ。

およそ初めは良いが最後まで全うする者は少ない。

原文の最期にある「鮮克有終」が「有終の美」の元になった言葉です。

この歌は西周が滅びようとするのを周の文王に託し、殷の紂王になぞらえて傷み歌ったものとされています。

「有終の美を飾る」の関連語

「有終の美を飾る」の中国語

中国では「有終の美」ということばはありませんが、以下のように言うと同じ意味になります。

中国語善始善终
ピンインshàn shǐ shàn zhōng
音声
意味首尾一貫してりっぱにやる。有終の美を飾る。