風林火山ふうりんかざん

意味
風林火山とは、武田信玄の軍旗に書かれた『孫子』の言葉。またその軍旗のこと。
例文
あの人のふるまいは正に「風林火山」、はやきこと風のごとく、しずかなること林のごとく、侵しかすめること火のごとく、動かざること山のごとしだ。
出典
『孫子』軍争篇
……『孫子』とは:古代中国・春秋時代の兵法書。呉の武将・孫武そんぶの著。
……軍争とは:戦闘の心得のこと。

「風林火山」の由来

まずは「風林火山」の由来となったお話の年表と歴史地図から紹介します。

「風林火山」の故事の時代

「風林火山」の故事の時代(年表)
風林火山」の故事の時代(年表)。『孫子』は春秋時代に書かれました。

「風林火山」の故事の場所

「風林火山」の故事の場所(歴史地図)
風林火山」の故事の場所(歴史地図)。孫子は呉の国で活躍しました。

「風林火山」の故事

風林火山

日本の戦国武将・武田信玄の軍の旗印として有名な「風林火山」ですが、これは元々『孫子』の中に出てくる言葉です。

『孫子』の軍争篇で孫子は、戦術の基本は敵をあざむくことだ、と言っています。そしてその行動は変幻自在のものでなければならない、と。

風のように行動したかと思えば、林のようにシーンと静まり返り、燃え上がる火のように襲いかかったかと思えば、山のように微動だにしない。

ここがいくさでの変幻自在を説いた「風林火山」の部分です。

さらに、人にまったく察知されないように身を潜めたかと思うと雷鳴のように行動を起こす、と続きます。

風林火山の原文は以下のとおりです。

風林火山の原文

疾如風

徐如林

侵掠如火

不動如山

風林火山の書き下し文

はやきこと風のごとく、しずかなること林のごとく、侵しかすめること火のごとく、動かざること山のごとし

「風林火山」と旗印

武田信玄といえば上杉謙信。武田信玄の軍旗が「風林火山」ならば、上杉謙信の軍旗は?「毘」です。謙信は毘沙門天(びしゃもんてん)への信仰が篤く、そこから取られた旗印です。毘沙門天は仏教における武神です。

では徳川家康の旗印は?

「厭離穢土(おんりえど) 欣求浄土(ごんぐじょうど)」です。

「汚れた土地を厭い離れて、きよらかな浄土を求める」という意味でかなり仏教的、戦いとは無縁の言葉のようですが、今川義元の側について敗北した時、先祖の墓の前で切腹しようとして寺の住職にこの言葉で引き留められたのだそうです。「戦いで汚れた土地を浄土にするのがあなたの使命だ」と。

それ以来この言葉が徳川家康の旗印となりました。

その後日本は家康によって統一され平和な数百年が続いたのですから、まさにこの旗印どおりになったわけです。

「風林火山」の関連語

「風林火山」と同じく『孫子』がもとになってできた故事成語には、「呉越同舟」「彼を知り己を知れば百戦殆からず」などがあります。