窮鼠きゅうそねこ

意味
窮鼠猫を噛むとは、弱いものでも追いつめられると異様な力を発揮して反撃してくる、ということ。
例文
あの人が部長をパワハラで訴えたって?それはまさしく「窮鼠猫を噛む」だね。
出典
桓寛『塩鉄論えんてつろん
……『塩鉄論』とは:B.C.81(前漢)に当時の朝廷で開かれた塩や鉄の専売制をめぐる議論の記録。桓寛(B.C.60年代の官僚)がまとめた。

「窮鼠猫を噛む」の由来

まずは「窮鼠猫を噛む」の由来となったお話の年表と歴史地図から紹介します。

「窮鼠猫を噛む」の故事の時代

「窮鼠猫を噛む」の故事の時代(年表)
窮鼠猫を噛む」の故事の時代(年表)。中国の前漢時代の出来事です。

「窮鼠猫を噛む」の故事の場所

「窮鼠猫を噛む」の故事の場所(歴史地図)
窮鼠猫を噛む」の故事の場所(歴史地図)。前漢時代の首都長安で行われた議論が元となってできました。

「窮鼠猫を噛む」の故事

窮鼠猫を噛む

窮鼠猫を噛む」という良く知られた言葉は、『塩鉄論』というあまりなじみのない本から取られています。

この本は、前漢時代に塩や鉄の専売制をめぐって行われた論戦の記録をまとめたものです。いわば紀元前の朝廷会議録です。

前漢武帝の時代には匈奴きょうどという強大な外敵がいて、こことの戦いで国庫は乏しくなってしまいました。そこで塩とか鉄とか、生活に欠かせない物品を国が買い上げ、この値段が急騰したところで売りに出し、その利益で財政を立て直そうとしたのです。実際この方法は効き目があって、漢の財政は持ち直します。

けれども生活必需品を安い時に買って値段が上がると売りに出して儲けようとはあこぎな話ではあります。しかも国が民間の商人とライバル関係になるわけですから、当時の儒学者たちは眉をひそめました。が、財政は逼迫、そこでどうすべきか朝廷での議論が起きたわけです。

この会議録に「窮鼠猫を噛む」が出てきます。その部分を原文・書き下し文・現代語訳で紹介しましょう。

「窮鼠猫を噛む」の原文

死不再生、窮鼠噛狸、匹夫奔万乗、舍人折弓、陳勝呉広是也。

「窮鼠猫を噛む」の書き下し文

死して再び生きざれば、窮鼠狸を噛み、匹夫万乗を奔り、舍人弓を折る、陳勝、呉広これなり。

「窮鼠猫を噛む」の現代語訳

殺されるとなれば、追いつめられたネズミは狸に噛みつくし、庶民は皇帝から逃げ、臣下も弓を折って戦いをやめるでしょう。秦末に起きた陳勝・呉広の反乱がまさにその例です。

「猫」は原文では猫ではなく狸になっています。この狸はいわゆる日本のタヌキではなく「狸猫」つまりヤマネコのことです。

「窮鼠猫を噛む」の関連語

「窮鼠猫を噛む」と同じく前漢時代の話がもとになってできた故事成語には、「塞翁が馬」「朝令暮改」「百聞は一見に如かず」などがあります。

「窮鼠猫を噛む」の中国語

中国語穷鼠啮狸
ピンインqióng shǔ niè lí
音声
意味窮鼠猫を噛む。

日本語と同じ意味ですが、こちらも猫ではなく「狸」になっています。