和して同ぜず

意味
なごやかに協調はするが、相手におもねってむやみに同調することはない、ということ。
例文
なんでもかんでも人に合わせることはないのよ。「和して同ぜず」と言うでしょう。
出典
『論語』子路しろ

※『論語』とは:孔子と彼の高弟の言行を記録した書。

※子路とは:B.C.543~B.C.481 孔門十哲の一人。孔子の弟子の中では『論語』に登場する回数が最も多い。

「和して同ぜず」の由来

和して同ぜず」という言葉は孔子とその弟子の言行を記した『論語』子路篇にあります。まずはこの故事ができた時代の年表と歴史地図から見ていきましょう。

「和して同ぜず」の故事の時代

「和して同ぜず」の故事の時代(年表)
和して同ぜず」の故事の時代(年表)。孔子は春秋時代に活躍しました。

「和して同ぜず」の故事の場所

「和して同ぜず」の故事の場所(歴史地図)
和して同ぜず」の故事の場所(歴史地図)。孔子は魯の国の出身です。

「和して同ぜず」の故事

和して同ぜず

「和して同ぜず」の原文

子曰、君子和而不同、小人同而不和。

「和して同ぜず」の書き下し文

子曰く、君子は和して同ぜず。小人は同じて和せず。

「和して同ぜず」の現代語訳

孔子がこう言います。「立派な人物は人と協調はするが、人に媚びたり流されたりはしない。つまらない人物は人に媚びたり流されたりはするが、人と協調することはない。」

この言葉、本来は「君子」と「小人」の違いを表した言葉でもあるのでした。そして「君子」として生きよ、と孔子は諭しているわけです。

中国語では「君子」と「小人(しょうじん)」がよく対になって出てきます。日本語でも「女子と小人養い難し」(女性と小人は近づけると図に乗るし、遠ざけると恨むので扱いにくい)などと言ったりします。これも『論語』にある言葉です。中国語をそのまま訳した言葉で昔から使われているのですが、この中の「小人」の意味が中国語と日本語ではややずれます。

どうずれるかというと、中国語の「小人」は日本語よりずっとキツイのです。日本語に訳すならば「ゲス」に相当するでしょう。日本語の「小人」はゲスというより、君子のような徳は持たない一般の人、くらいのニュアンスです。そして現代日本語から「小人」はすでに消えてしまい、これら中国伝来の故事の中にのみ残っています。

現代中国語の中では「小人」はいまだに残りよく使われます。「ゲス」として使われているのです。ですから日本に来た中国人がバス乗り場などで「大人〇〇円、小人半額」などと書いてあるのを見るとゲラゲラ笑います。中国語で「大人」は「おとな」という意味を持つとともに、「君子」に近い意味も持ちます。「小人」には「子供」という意味がないので、「君子からはお金を高く取って、ゲスは半額にするのか」ということになるわけです。

「和して同ぜず」の関連語

「和して同ぜず」の中国語

中国語和而不同
ピンインhé ér bù tóng
音声
意味なごやかに協調はするが、相手におもねってむやみに同調することはない、ということ。

中国語も意味は同じです。