荒唐無稽
『書経』…「無稽」の典拠
……『荘子』とは:荘子(荘周)の著書とされる思想書。内篇七篇・外篇十五篇・雑篇十一篇の三十三篇から成る。このうち内篇のみが荘子本人の手によるものものされ、外篇・雑篇は弟子や後世の手によるものと見られている。「天下」は雑篇にある。
……『書経』とは:中国最古の歴史書。『尚書』とも言う。儒教では孔子が編纂したと言われる。五経の一つ。
「荒唐無稽」の由来
まずは「荒唐無稽」の由来となったお話の年表と歴史地図から紹介します。
「荒唐無稽」の故事の時代
「荒唐無稽」の故事の場所
「荒唐無稽」の故事
「荒唐無稽」のうち、「荒唐」は『荘子』天下から取られています。荒唐とは「限りなく大きい」という意味です。
「無稽」は『書経』から取られています。無稽は「根拠がない」という意味です。
「荒唐」の由来
『荘子』天下篇の中で
「荘周その風を聞きてこれを悦び、謬悠の説、荒唐の言、端崖の無きの辞を以てす」
とあります。
「荘子はその説を聞いて喜び、とりとめのない説、大ぼら、口から出まかせ、糸口がとらえられない言葉を使って述べた」
と言っているのですが、この中にある「荒唐の言」が「荒唐無稽」の由来の一つになっています。
この「とりとめのない…」以下は「荘子哲学」を貶めているように読めますが、そうではなく良いものだと言っているのです。荘子は「無為自然(自然のままに生きる)」がモットーでしたから、根拠があったり理にかなっているのは自然ではなく荘子の好みではありませんでした。逆に「荒唐の言」こそ好みだったわけです。
「無稽」の由来
『書経』では
「無稽の言は聴くこと勿れ(根拠のない話は聞き入れるべきではない)」
とあります。この「無稽の言」は「荒唐の言」とは異なり、マイナスイメージの言葉として使われています。
プラスイメージの言葉「荒唐の言」とマイナスイメージの言葉「無稽の言」が一つになった言葉が「荒唐無稽」ですが、「荒唐無稽」という言葉自体は悪い意味として使われています。
「荒唐無稽」の関連語
「荒唐」と同じく『荘子』がもとになってできた故事成語には、「朝三暮四」「井の中の蛙」「余地」「大同小異」などがあります。
「無稽」と同じく孔子に関連する故事成語には、「不惑」「温故知新」「和して同ぜず」「過ぎたるは猶及ばざるが如し」「有終の美」「良薬は口に苦し」「水清ければ魚棲まず」などがあります。
(荘子の生涯や思想、著作『荘子』の中にある名言などについて詳しく紹介しています。)
(孔子の生涯や思想・名言などについて詳しく紹介しています。)
「荒唐無稽」の中国語
中国語 | 荒诞无稽 |
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ピンイン | huāng dàn wú jī |
音声 | |
意味 | 荒唐無稽。 |
意味は日本語と同様です。
中国語にも「荒唐無稽」という言葉もあるのですが、普通は「荒誕無稽」と言います。「誕」には「誕生日」という意味もありますが、「でたらめ」という意味もあります。