食指が動く
※春秋左氏伝とは:孔子の編纂と言われる歴史書『春秋』の注釈書の一つ。『左伝』『春秋左氏』『左氏伝』ともいう。他の注釈書に『春秋公羊伝』『春秋穀梁伝』がある。
※春秋とは:中国春秋時代(B.C.700頃~B.C.403頃)に関する編年体(起こった出来事を年代順に記す体裁)の歴史書。儒教では孔子の手によるものとされ、経書(儒教で重視される文献の総称)の一つ。
※宣公とは:宣公(生年不詳 - B.C.591)は魯(B.C.1055~B.C.249 周・春秋・戦国にわたって存在した国。首府は曲阜…現在の山東省にある)の第21代君主(魯の君主の爵位は侯爵)。
「食指が動く」の由来
「食指が動く」は中国の春秋時代の出来事が元になってできた故事成語です。また「食指」とは中国語で人差し指の意味です。この故事は『春秋左氏伝』に出てくる話が元になっているため、まずはこのお話の年表と歴史地図から見てみましょう。
「食指が動く」の故事の時代
「食指が動く」の故事の場所
「食指が動く」の故事
「食指が動く」の由来となった話は短いので原文・書き下し文・現代語訳を紹介します。
「食指が動く」の話の原文
楚人献黿於鄭霊公。公子宋与子家、将入見。子公之食指動。以示子家曰、他日、我如此、必嘗異味。及入、宰夫将解黿。
「食指が動く」の話の書き下し文
楚人、鄭の霊公に黿を献ず。公子宋と子家、将に入りて見えんとす。子公の食指動く。以って子家に示し曰く、「他日、我此の如く、必ず異味を嘗ぜん。」入るに及びて、宰夫将に黿を解せんとす。
「食指が動く」の話の現代語訳
楚の人が、鄭の霊公にすっぽんを献上しました。公子(貴族の子)である子公と子家が、ちょうどそのとき霊公の屋敷を訪れようとしていました。その時子公の人差し指がぴくりと動いたので、子公は子家にそれを示してこう言いました。「私の人差し指がこうなる時は必ず珍味にありつけるんだ」。二人が霊公の屋敷に入ると料理人がちょうどすっぽんをさばいているところでした。
ここで中国語の指の名前を紹介しましょう。
日本語で親指、人差し指、中指、薬指、小指は、中国語ではそれぞれ大拇指、食指、中指、 无名指、小指と言います。日本語と同じ名前は中指と小指だけで、残りはそれぞれ異なり、特に違うのが人差し指と薬指です。中国語で人差し指を「食指」と呼ぶのは、食べ物をつかむ時必ず使う指だからだそうです。中国語の薬指は「名無しの指」という意味です。ところで日本語ではなぜ薬指を薬指と言うのでしょうか?いろいろないわれが伝えられていますが、昔薬を水に溶かしたり塗ったりする時に使ったからと言われます。