一挙両得
……『戦国策』とは:戦国時代の遊説の士の言説・策・その他の逸話を国別に編集した書。前漢の劉向の選。
「一挙両得」の由来
まずは「一挙両得」の由来となったお話の年表と歴史地図から紹介します。
「一挙両得」の故事の時代
「一挙両得」の故事の場所
「一挙両得」の故事
司馬錯という戦国時代の秦の将軍が、張儀という戦国時代の遊説家(戦国時代に諸侯などに策を提言し、それを生業とした人)と秦の恵王の前で次のような論争をしました。
司馬錯は我が秦はまず蜀を攻めるべきだと主張し、一方遊説家の張儀は「蜀など攻めずに韓を攻めた方がよい」と言います。
二人の提言を聞いた秦の恵王は、さらなる説明を二人に求めます。
張儀は「まず魏と楚両国と親善関係を結び、そのあと韓を討ってそのまま周を脅迫し、秦が天下を取ったと名乗りをあげるべきです」と主張します。
司馬錯はこれに対し「いやいや、まずは広大な蜀を手に入れて国力の増大を図る方が先です」と主張します。
司馬はさらに「現在秦の土地はわずか、庶民は困窮しております。まずは簡単にできることから始めるべきでしょう。蜀は西の辺鄙なところにあり、ここを奪えば秦は領地が広がり、財も得られ、庶民を豊かにすることも可能です。軍をよくおさめ、庶民に害を与えなければ、蜀は我らに帰順するでしょう。そうすれば天下の人は我々を暴虐とか貪欲とか非難しないはずです。兵を一度動かすだけで名と利の両方が一挙に得られるのです」と王を説得します。
恵王はそれを聞いて「良い意見である」と司馬錯の意見を取り入れ、まず蜀を攻めてこれを滅ぼします。
この「名と利の両方が得られる」という場面の原文に「一挙而名実両附」(一挙に名と実二つとも付く)、すなわち「一挙両附」の言葉が出てきます。意味は「一挙両得」と同じです。
「一挙両得」の文字が初めて出てくる書は『晋書(しんじょ)』ですが、同じ意味で似た言い回しが最初に出てくるのは、この『戦国策』です。
「一挙両得」の関連語
「一挙両得」と同じく『戦国策』がもとになってできた故事成語には、「漁夫の利」「虎の威を借る狐」「隗より始めよ」「蛇足」などがあります。
戦国時代の秦にまつわる故事成語としては、秦の王が有利な立場を利用し「和氏の璧」を奪おうとして失敗した話から「完璧」と「怒髪天を衝く」。秦の戦略が元となった「遠交近攻」、各国が強大化する秦に対抗するため同盟し失敗した「合従連衡」などがあります。
「一挙両得」の中国語
中国語 | 一举两得 |
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ピンイン | yì jǔ liǎng dé |
音声 | |
意味 | 一挙両得。 |
中国語も日本語と同じ言い回し、同じ意味で使います。