良薬は口に苦し

意味
効果のある薬は苦いものだ。自分のためを思っての忠告は、ありがたいが耳に痛い。
例文
嫌われるのを承知で忠告しているんだよ。良薬は口に苦しって言うだろう。今回は僕の言うことを聞いてくれ。
出典
孔子こうし家語けご

※『孔子家語』とは:『論語』から漏れた、孔子一門の説話を集めたものと言われる。

孔子とは:B.C.552~B.C.479 春秋時代の思想家・哲学者。儒家の始祖。魯国昌平郷(現在の山東省曲阜)出身。

※『論語』とは:孔子とその高弟の言行を、孔子の死後弟子たちが記録した書物。儒教の「四書」の一つ。

「良薬は口に苦し」の由来

良薬は口に苦し」は孔子の説話が元となってできた故事成語です。まずはこのお話の年表と地図から見ていきましょう。

「良薬は口に苦し」の故事の時代

「良薬は口に苦し」の故事の時代(年表)
良薬は口に苦し」の故事の時代(年表)。孔子は春秋時代に活躍しました。

「良薬は口に苦し」の故事の場所

「良薬は口に苦し」の故事の場所(歴史地図)
良薬は口に苦し」の故事の場所(歴史地図)。孔子は魯の国の出身です。

「良薬は口に苦し」の故事

良薬は口に苦し

『孔子家語』の中には以下のような話があります。

孔子先生はこのようにおっしゃいました。

良薬は口に苦いが病によく効く。忠言は耳に痛いが行いをただすのによく効く。

殷の湯王と周の武王はあれこれ王に忠告する臣下がいたので栄えたが、夏の桀王と殷の紂王は唯々諾々と王に従う臣下のみだったので滅んでしまった。

君主に、これをいさめる臣下なく、父に、これをいさめる子なく、兄に、これをいさめる弟なく、士に、これをいさめる友なければ、過失を犯さずに済む人間などいないのである。

だから私はこう言うのだ。君主が道を踏み外した時は臣下がこれを引き戻し、父が道を踏み外した時は子がこれを引き戻し、兄が道を踏み外した時は弟がこれを引き戻し、自分が道を踏み外した時は友がこれを引き戻すのだ、と。こうすれば国家から危険や滅亡の兆しは消え、家からは道徳の乱れという悪が消え、父子や兄弟が道を踏み外すことなく、こうして交友が絶えることがなくなるのだ。

※「夏」は実在したか不明な王朝です。『史記』の中では「殷」の前の王朝として扱われています。

ところで良薬は本当に苦いのでしょうか?中国の薬、当然漢方薬です。飲み方としては薬草を煎じて飲みます。胃の薬として使われている「センブリ」は猛烈な苦みがありますが、すべてが苦いとは限りません。中には甘いものもあります。「漢方薬は苦い=良薬」と思われているふしがありますが、これはこのことわざが影響しているのかもしれません。

「良薬は口に苦し」の関連語

「良薬は口に苦し」の中国語

中国語良药苦口
ピンインliáng yào kǔ kǒu
音声
意味日本語と同じで、忠告は耳に痛い。

中国語ではこの故事にある「忠言は耳に痛い」(“忠言逆耳”)と対で用いることが多いです。