虎の威を借る狐
※『戦国策』とは:戦国時代の遊説の士の言葉、国策、献策などを国別にまとめたもの。前漢の劉向の撰。
※遊説とは:春秋戦国時代には各国で諸子百家と呼ばれるさまざまな学派が生まれたが、そうした者の中で自分の弁説で政治を動かそうと諸国を巡ることを遊説という。
「虎の威を借る狐」の由来
「虎の威を借る狐」は『戦国策』の楚策に出てきます。まずは戦国時代の年表と、歴史地図を見てみましょう。
「虎の威を借る狐」の故事の時代
「虎の威を借る狐」の故事の場所
「虎の威を借る狐」の故事
「虎の威を借る狐」の由来となった文は短いので原文、書き下し文、現代語訳を紹介しましょう。
「虎の威を借る狐」の話の原文
虎求百獣而食之、得狐。
狐曰、
子無敢食我也。
天帝使我長百獣。
今子食我、是逆天帝命也。
子以我為不信、吾為子先行。
子随我後観。
百獣之見我、而敢不走乎。
虎以為然。
故遂与之行。
獣見之皆走。
虎不知獣畏己而走也。
以為畏狐也。
「虎の威を借る狐」の話の書き下し文
虎、百獣を求めて之を食らい狐を得たり。
狐曰く、
子敢えて我を食らうこと無かれ。
天帝我をして百獣に長たらしむ。
今子我を食らわば、是れ天帝の命に逆らうなり。
子我を以つて信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。
子我が後に随いて観よ。
百獣の我を見て、敢えて走らざらんやと。
虎以つて然りと為す。
故に遂に之と行く。
獣之を見て皆走る。
虎獣の己を畏れて走るを知らざるなり。
以つて狐を畏ると為すなり。
「虎の威を借る狐」の話の現代語訳
トラが獲物を探している時キツネを捕まえ、これを食べようとしました。キツネは「あなたは私を食べるわけにはいきませんよ。なぜなら私こそ天帝が百獣の王としてこの世に遣わされたものなのですから。あなたが私は食べたら、天の命令にそむくことになりましょう。もしそんなことは信じないとおっしゃるなら、私のあとについてきてみてください。百獣たちは私を見てみな逃げていってしまうでしょう」と言いました。トラは「わかった」と言い、キツネとともに歩いていきました。百獣はその様子を見てみな次々に逃げ去っていきます。しかしトラはそれらが自分を恐れて逃げていくことに気づかず、キツネを恐れて逃げていくのだと思うのでした。
「虎の威を借る狐」の関連語
「虎の威を借る狐」と同じく『戦国策』が元になってできた故事成語には、「蛇足」「漁夫の利」「隗より始めよ」「一挙両得」などがあります。
「虎の威を借る狐」の中国語
中国語 | 狐假虎威 |
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ピンイン | hú jiǎ hǔ wēi |
音声 | |
意味 | 権力者の威勢を借りて威張ること。 |
意味は日中同じですが、成語が少し違います。“假”はここでは「借りる」「依る」という意味です。