孟母断機もうぼだんき

意味
学業を途中でやめてはいけないということ。または学業を途中でやめてはいけない、と身をもって教える教育ママのこと。
例文
お子さんが黙って塾をやめたんで、彼女怒って長年勤めた会社やめちゃったんだって。「孟母断機」って言うけどあそこまでしなくてもねえ…。
出典
烈女伝れつじょでん』孟母断機
……『烈女伝』とは:女性の史伝を集めた歴史書。前漢の劉向の選。女性の理想像を書いている。

「孟母断機」の由来

「孟母断機」の故事の時代

「孟母断機」の故事の時代(年表)
孟母断機」の故事の時代(年表)。中国の戦国時代の出来事です。

「孟母断機」の故事の場所

「孟母断機」の故事の場所(歴史地図)
孟母断機」の故事の場所(歴史地図)。孟母たちは魯の国のすうという都市で暮らしていました。

「孟母断機」の故事

孟母断機

「孟母断機」の話は漢文の教科書に、「孟母三遷」とともによく載っています。この話を原文・書き下し文・現代語訳で紹介しましょう。

「孟母断機」の故事の原文

孟子之少也、既学而帰、孟母方織。問曰、 「学何所至矣。」

孟子曰、 自若也。

孟母以刀断其織。

孟子懼而問其故。

孟母曰、

子之廃学、若吾断欺織也。 夫君子学以立名、問則広知。 是以居則安寧、動則遠害。

今而廃之、是不免於廝役、而無以離於禍患也。 何以異於織績而食、中道廃而不為。

寧能衣其夫・子、而長不乏糧食哉。 女則廃其所食、男則堕於脩徳、不為窃盗、則為虜役矣。

孟子懼、旦夕勤学不息。 師事子思、遂成天下之名儒。

「孟母断機」の故事の書き下し文

孟子のわかきとき、既に学びて帰るに、孟母まさに織る。

問いていわく、 「学いずれに至る所ぞ」と。

孟子曰く、「自若たり」と。

孟母刀を以つて其の織を断つ。

孟子おそれて其の故を問ふ。

孟母曰く、

「子の学を廃するは、吾の斯の織を断つが若きなり。 れ君子は学びて以て名を立て、問ひて則ち知を広む。 是を以つて居れば則ち安寧にして、動けば則ち害に遠ざかる。 今にして之を廃するは、是れえきを免れずして、以つて禍患より離るる無きなり。 何を以つて織績して食するに、中道にして廃して為さざるに異ならんや。 いずくんぞ能く其の夫・子に衣せて、長く糧食に乏しからざらしめんや。 女則ち其の食する所を廃し、男則ち徳を脩むるをおこたれば、窃盗を為さずんば、則ち虜役と為らん。」と。

孟子おそれて、旦夕学に勤めてまず。 子思に師事し、遂に天下の名儒と成れり。

「孟母断機」の故事の現代語訳

孟子が少年であった頃、勉強を終えて家に帰ると、孟子の母親がちょうど機織りをしていました。

母親が孟子に「勉強はどこまで進みましたか」と尋ねると

孟子は「いや別に。相変わらずです」と答えました。

すると母親は刃物を取り上げるや、織っていた織物を断ち切ってしまいました。

孟子がこわごわとその理由を尋ねると、

「お前が学問をやめてしまうことは私がこの織物を断ち切ってしまうのと同じ!

君子たるもの、学問で名を立て、いろいろ人に尋ねて見識を広めるべきだというのに!

そうしてこそ家にいる時は心穏やかに、外であれこれ活動する時には災難を遠ざけることができるというもの。

こんな中途半端な時期に学問をきちんとおさめないなら、いずれ人に使われ、災難にも遭うに違いない!

いいですか、お前の今は、機織りで暮らしを立てている私がそれを途中で投げ出してしまうようなもの。そんなことをしたら、旦那さんにも子供にも衣服を着せられず、ろくなものも食べさせてはやれません。

女性が機織りで生計を立てるのをやめたり、男性が徳をおさめることをやめるたりするなら、いずれ泥棒になるか下僕にでもなるしかないんですよ!!!」

孟子は母の剣幕に恐れをなし、朝に晩にひたすら学問に打ち込むようになりました。

やがて子思に師事し、ついには立派な儒者になったのです。

孟母というか猛母です。

たった一人で働きながら子供を育てる、無事に育つかどうか、まともに育つかどうか、そのプレッシャーは大きかったことでしょう。

この話に出てくる「ちゃんと勉強しないと災難に遭う」というフレーズが気になります。

途上国で暮らした人が、先進国との違いについて「しょっちゅう事故が起こる、しょっちゅう犯罪に巻き込まれる、しょっちゅう大病を患う」と言っていたことを思い出します。

二千年以上も昔、こうした災難も頻繁に起き、頑張りぬかないと、みじめな下働きになるしかなかったのでしょう。

孟母の思いは実を結び、孟子は立派な儒者になるのですが、大人になっても孟子は孟母からあれこれ耳の痛いことを言われていたようです。

「孟母断機」の関連語

「孟母断機」の中国語

中国語孟母断机
ピンインMèng mǔ duàn jī
音声
意味日本語と同じ意味ですが、いわゆる成語としては使われていません。