サンザシ

サンザシ

サンザシはバラ科の植物で、その実を乾燥させたものが薬膳などで使われています。また、中国ではサンザシのお菓子(タンフール)が古くから食べられています。

このページでは、サンザシの効能・栄養・レシピ・サンザシのお菓子・サンザシの伝説などを紹介します。

サンザシとは

サンザシ

サンザシとは、バラ科の植物「サンザシ」の実を乾燥させたもので、漢方薬に使う生薬(しょうやく…薬草を加工せずに使う薬)のことです。

消化不良・胃腸虚弱・下痢・整腸・血圧を下げるなどの薬効があります。

サンザシの効能

サンザシ

生薬であるサンザシの名を聞くと中国人は「消化を助けるもの」というイメージを持つそうです。サンザシは消化を助ける以外いろいろな薬効があり、たとえば抗酸化食品としては30種の果物のうち最も優れており、アンチエイジングフルーツ・抗癌作用を持つフルーツの代表と言われています。

また強心作用や血圧を下げる作用もあり、高脂血症や高血圧症・心臓病などの人は毎日サンザシを15~30グラム煎じてお茶替わりに飲むと良いとも言われています。

ただしサンザシはその栄養成分から流産を誘発する可能性があるので妊産婦は食べすぎてはいけません。

胃酸の分泌も促進させるので空腹の時は避け、また歯を溶かす酸性物質も入っているので食べた後は口をすすいだり歯磨きをした方がいいでしょう。

サンザシの栄養成分

サンザシ

サンザシの主な栄養成分としては、食物繊維・カルシウム・マグネシウム・鉄分・ビタミンA・ビタミンCなどです。

サンザシの主な産地

サンザシの中国での主な産地は山東・河南など中国北方ですが、江蘇・浙江など南方でも作っています。

乾燥サンザシの値段

中国産乾燥サンザシを日本で買う場合500g約2500円~約5000円です。中国で買うなら場所によって変わりますが日本で買う場合の10分の1くらいと思っていいでしょう。ただ安全性を考慮するなら、責任を問えますので日本のきちんとした店を通して買った方が安心です。

品質の良いサンザシの選び方

サンザシを購入する際には、色が鮮やかで艶があるものを選びます。皮に皺があったりカラカラになったものは避けましょう。

サンザシを使った薬膳料理のレシピ

サンザシのスープ

【サンザシのスープの作り方】

乾燥サンザシをよく洗ってタネを取り、鍋に水とともに入れ氷砂糖を加える。クタクタになるまで煮てスープにしていただく。

消化を助け、心臓や血管の障害の改善・動脈硬化の改善・不眠症の改善などに効果があると言われます。

サンザシのお粥

【サンザシのお粥の作り方】

白米100g サンザシ35g 氷砂糖適量

鍋に水を入れ、火にかける。そこに白米を入れ煮立ったら弱火にし20分煮込む。タネを取り除いたサンザシを入れて10分弱火で煮る。砂糖を加えてよくまぜできあがり。

甘いお粥で、これも上記と同様の効能があります。

サンザシと相性の良い食品・悪い食品

サンザシと一緒に食べる際相性の良いものとしては、米・豚のスペアリブ・赤砂糖があります。逆に良くない組み合わせは豚レバー・海産物・きゅうりやカボチャなどです。この組み合わせで食べるとビタミンCを破壊したり、腹痛を起こしたりする可能性があります。

サンザシのお菓子(飴)…「糖葫芦(タンフール)」

サンザシのお菓子

中国人からいただくおみやげにはサンザシを使ったお菓子が多いです。サンザシを練り込んで棒状にしたものやチューインガムに似た形にしたもの。サンザシ餡を使った月餅のようなもの。独特の甘酸っぱさが特徴です。

サンザシのお菓子の中で最も有名なものが糖葫芦(タンフール……サンザシの飴)です。タンフールは乾燥サンザシを使ったお菓子ではなく生サンザシを使ったお菓子で、北京などの冬の風物詩です。

サンザシのお菓子

竹串にいくつか生のサンザシの実を刺し、砂糖を煮溶かした液につけそのまま固めます。果物の入った飴のような感じです。秋から冬にかけて中国の北方を旅行すると、街角でいくつもの赤いサンザシの実をつけた竹串…タンフールを売っています。

買ったら歩きながらほおばります。太くて長い竹串がのどに突き刺さりそうなのでこわごわ食べてみると…甘くておいしいです。ただ甘すぎて1個で充分……。

最近はサンザシだけでなくイチゴなどいろいろな果実のタンフールを売っています。

昔からあるお菓子で、香港・中国合作映画の傑作『覇王別姫 さらばわが愛』(1993年上映  カンヌ映画祭パルムドール受賞)では、20世紀初頭、京劇役者になるための厳しい訓練に耐えかねて脱走した子供たちが、町に出て念願のタンフールを食べる場面が印象的です。彼らにとってこの世で一番おいしい憧れのお菓子であることが伝わってきます。

清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀(あいしんかくら・ふぎ…1906~1967)の弟である溥傑(ふけつ…1907~1994)は日本の華族の娘・嵯峨浩(さが・ひろ…1914~1987)と結婚し、日本の敗戦後長く別れ別れに暮らしますが、やがて1960年代の北京で夫婦二人仲睦まじく暮らします。当時まだひどく貧しかった中国。ある日二人はとても食べたくなってタンフール作りに挑戦、悪戦苦闘の末おいしいタンフールができあがって大喜びしたというエピソードが伝記に書かれています。

タンフールは果実を砂糖蜜でくるむだけですから、これを作るのは一見簡単そうですが実はかなり難しいのだそうです。

サンザシの伝説

サンザシ

サンザシにはこんな話が伝わっています。

ある山に黄という苗字の農家があり、そこの黄おじさんは子供のころから頭がよく仕事もよくできました。勉強したわけでもないのに作物のことをよく知っていて、村人は彼を尊敬し「百事通」と呼んでいました。百事通の黄おじさんは山で採れたものを町に持っていって売り、商売繁盛でとても忙しくなりました。

当時黄おじさんの奥さんは臨月でしたが、おじさんが忙しくてそばにいてやれないまま、子供を産み落とすとそのまま亡くなってしまいました。

おじさんは自分が仕事にかまけて妻の面倒を見てやらなかったことをひどく後悔し、生まれたばかりのわが子を抱きながらオイオイ泣き暮れました。その後は子供を育てるために仕事を減らしましたが、子供が少し大きくなると出費も増え、また外へ働きに出るしかなくなりました。子供をどうしたものか困っていると近所の人が後添えを紹介してくれました。

後添え…子供にとっては継母ですが、この人は最初は子供によくしてくれましたが、やがて夫が留守になるのを見計らうように虐待し始めます。ろくなものを食べさせず山仕事にこき使うようになり、子供は日ごとに衰弱していきました。継母はこの様子を見て「よしよし、これでこのガキは遠からず死ぬぞ」と喜びました。

典型的な白雪姫のお母さんですね。

ところがです。継母が持たせた気持ちの悪い弁当で胃が痛くなった子供は、山の中でおいしそうな野生の果実を発見します。食べてみると甘くて歯ごたえがよくてジューシー!

弁当の中の毒飯を捨ててこれを食べると胃の調子がすっかり良くなりました。

毎日そうしていると衰弱していた子供はどんどん元気になっていき、継母は茫然…これはこの子の亡き母親が守っているのかも…気味が悪くなった継母はその後子供に手が出せなくなりました。

やがて黄おじさんが町から帰ってきて、子供は一部始終を父に伝えます。するとおじさんは子供の手を引いて山に入っていき、その果実を見るや「これはサンザシだ」と言いました。

おじさんはサンザシに薬効があることを知り、これを生薬として病人に売るようになったということです。

その後この性悪女がどうなったかこの伝説は伝えていないのですが…回心して良いお母さんになったのでしょうか。人間そんなに簡単に変わりませんよ。きっと家からオン出されたのだ…と希望的観測をしておきたいと思います。

横道にそれましたがこれが生薬・サンザシ発見の伝説です。

映画『サンザシの樹の下で』

中国映画に『サンザシの樹の下で』(2010年上映)という文革時代を背景にした映画があります。ハンカチかティッシュの箱を持っていないと見られない切ないラブストーリーなのですが、ここでサンザシの木が大きなモチーフとして使われています。

主人公の少女が実習に行った村に咲くサンザシの木は日中戦争時代の象徴的な木です。実習の付き添いだった高校の先生は「本来白い花が咲くサンザシが中国人の血を吸って、この木だけ赤い花が咲く」と生徒たちに説明します。主人公の少女はこれを聞いて「本当に白い花が赤くなるのかな…だったら見てみたい」と思うのです。この少女は18歳ですが、大人の言うとおりに育ってきた純真と言えば純真、幼いと言えば幼い…きわめて政治色の強い時代に純粋培養されたような少女です。

一人の若者が彼女に恋をするのですが、サンザシの花の色を気にし続ける少女に彼は「いつかあの木を二人で見に行こう」と言います。彼は彼女にサンザシの赤い実が描かれた琺瑯(ほうろう)の洗面器やサンザシの赤い色を思わせる生地をプレゼントします。

ラストシーンで哀切なロシア民謡(中国語歌詞では『山査樹』という曲名になっている)が流れる中、村のサンザシの木が映し出されます。その木の花の色は…白いままでした。