アワビ・干しアワビ 【中国の珍味】
Tweetアワビは中国で豪華な珍味として扱われてきました。ここでは中国の歴史におけるアワビの扱われ方や、干しアワビが日本の熨斗(のし)紙の由来となった話、アワビを使った料理やアワビの栄養などに関して紹介します。
中国の珍味に関しては他にも「中国の珍味・三大珍味」「フカヒレ」「ツバメの巣」「ピータン」などのページで紹介しています。
目次
- 1. 中国珍味の一つ「アワビ」
- 2. アワビの食文化
- 3. アワビの特徴
- 4. アワビの栄養価や薬効
- 5. 生アワビの食べ方
- 6. アワビを使った中華料理
中国珍味の一つ「アワビ」
アワビは高価な海の珍味の一つで栄養豊富、中国では海の「軟黄金」(柔らかい黄金)と呼ばれています。
アワビの中国語名は2つあり、「鮑魚」(乾燥させていないアワビ)と乾鮑(干しアワビ)です。
乾燥させていない生アワビは可食部でタンパク質が24%、干しアワビになると同じくタンパク質40%を含むほかビタミンや微量元素を多く含み、低脂肪で栄養豊富な食品です。
アワビの食文化
中国の場合
中国でアワビは貴人を招いた豪華な宴席に欠かすことのできない食材で、「無鮑不成席」(アワビなしでは宴席が成立しない)という言い方もあるほどです。清代、北京の高級官僚の家だけで受け継がれてきた料理・「譚家菜」で最初に出てくる料理が「紅焼アワビ」です。
油で炒めたあと醤油などで煮込む料理法を「紅焼」と言います。中国語の「焼」は、日本語と異なり「火であぶる」という意味はありません。「火であぶる」意味の中国語は「烤」と言います。中国語の「焼」は、まず油で炒めた後煮込んだり、その逆だったり、やや複雑な工程を持つ料理法です。
また中国語のアワビ・「鮑魚」(バオユィ)は「包余」(鞄の中はお金がどっさり)と音が同じということで「めでたさ」の象徴でもあります。これは中国大陸だけでなく、東南アジアなどの華僑も共通です。
日本の場合
お中元やお歳暮、その他やや改まった贈り物には「のし紙」を付けます。
こののし紙・熨斗紙、もともとは「熨斗アワビ」つまり「細く切ったアワビを干したもの」のことで、かつては祝い事には縁起物として必ず配られ、進物(しんもつ…人様に差し上げる贈り物)にも添えました。これがだんだんと簡略化、やがて図案化され、その図案が印刷された紙・「のし紙」が、正式な贈り物に添えるものとなっています。
でもなぜアワビなのでしょう?アワビは長寿のシンボルだったからとか、皇室での贈答に使われていたから…などの説があります。いずれにしても古代の日本人にとってありがたく貴重で高価な食材だったのでしょう。
アワビは現代中国では豊かさのシンボル、日本では礼のシンボル…ここにも文化の違いが感じられます。
アワビの特徴
生のアワビはミミガイ科の大型巻貝の総称で、成長したアワビの殻は楕円形をしており、長い方は5~20センチ、短い方は3~17センチです。耳のような形をしているので、日本では「ミミガイ」、英語では「sea ear」(海の耳)と呼ばれています。
アワビの生息地は通常水温が比較的低い水深20メートルほどの岩礁で、ワカメ・コンブなど海藻類を食べています。太平洋・大西洋・インド洋などに広く分布していますが、最も良質なアワビは日本産、次いでメキシコ産と言われています。日本産のアワビは江戸時代から中国に輸出されていました。
アワビの栄養価や薬効
アワビの可食部100gあたりの成分は、タンパク質12.5g・脂質0.3g・各種ビタミン・カリウム・カルシウム・リン・鉄など。
中医学では、「明目魚」とも呼ばれ、眼に良いとされています。さらには頭痛・めまい・記憶力減退・高血圧・関節炎・胃潰瘍などに効果があると言われます。
生アワビの食べ方
アワビはコリコリした触感が特徴で、日本では、刺身・磯焼・ステーキ・酒蒸しなどで食べます。日本では新鮮な水産物が手に入りやすいからか、素材を生かしたシンプルな食べ方が多くアワビも例外ではありませんが、中国ではしっかりと火を通し、調味料もいろいろ使って調理します。
アワビを使った中華料理
清蒸鮑魚(アワビの蒸し物)
材料:生アワビ・生姜・ネギ・醤油
1)きれいにさばかれている生アワビをよく洗って皿にのせ、生姜やネギを細切りにしてアワビの上に乗せ、さらに醤油をかける。
2)蒸し物用の鍋に水を入れて火にかけ、蒸気が出てきたらアワビの皿をのせ、8~9割がた蒸しあがったら生姜とネギを取り除く。
3)さらに新しく切ったネギの細切りを上にかけ、熱くした油をアワビの上に回しかけ、最後に醤油を垂らしてできあがり。
やはり中華ですね。日本のシンプルな酒蒸しとはだいぶ違います。
鮑魚炖土豆(アワビとジャガイモの煮込み)
材料:アワビ・ジャガイモ・チキンスープの素・酒・塩・砂糖・八角・山椒・ネギ・生姜・唐辛子
1)きれいにさばかれているアワビをきれいに洗ってさいの目に切っておく。
2)ジャガイモも同様に切る。
3)油を熱くしてからネギ・生姜を入れ、その後唐辛子・チキンスープの素・酒・塩・砂糖・八角・山椒を入れる。
4)上の鍋にジャガイモを入れてさらに炒め、水を加えて弱火で煮込む。
5)最後にアワビを入れて煮込み、やわらかくなったらできあがり。