フカヒレ

フカヒレ

中国の珍味・高級食材として有名なフカヒレについて、中国で歴史的にどう扱われてきたのか、加工方法、料理、栄養などについて紹介します。

フカヒレとは

フカヒレ

フカヒレのスープ」という中華料理のメニュー・珍味について聞いたことのある人は多いと思います。

フカヒレとは、サメのヒレ…尾びれ・背びれ・胸ヒレ・尻ビレ・腹ビレの部分…を乾燥させたものです。

サメにはいろいろな種類がありますが、このうちフカヒレに使われるサメは、ヨシキリザメ・ジンベイザメ・ウバザメ・アオザメ・イタチザメなどです。

サメなのになぜ「フカ」? サメは日本の地域によってフカとかワニと呼ぶようで、昔、中国から初めてこの食品が入ってきたときの地域の言葉がそのまま食品名になったのではないでしょうか。いまさら「サメヒレ」では怖くて食べられない感じです…

中国珍味・フカヒレの歴史

フカヒレのスープ

フカヒレは中国では唐や宋の時代から食べられてきました。

この時代、中国と隣接するベトナムから中国の皇帝にフカヒレが贈られました。皇帝はこれがどういうものかよくわからず、朝廷の調理師に渡しただけで、皇帝が食べる御前料理とはなりませんでした。

その後明朝になって、鄭和がアフリカまで大航海する中でフカヒレに出会い、これがただの魚のヒレから高級食材となるきっかけだったと言います。

李時珍(明代の医師・薬草学者)はその著『本草綱目』で、フカヒレについて「サメの背や胸にあるヒレは味が良く、南方の人はこれを珍重している」と書いています。

清朝の乾隆帝の時代にフカヒレは大流行します。役人の世界でも庶民でもフカヒレは宴席に欠かせないものとなって現代に至ります。

フカヒレの加工方法

フカヒレの加工方法

あの恐ろしいサメが、フカヒレというコラーゲンたっぷりの美味しくて高級な食材になるまでの工程は以下のとおり。

【フカヒレの加工方法】

1)晩秋になると寒風の中2~3か月天日干しにしますが、まんべんなく乾燥させるために2~3日に1度ひっくり返します。

2)その後表面の皮・骨を手作業で取り除きます。

3)茹でた後、真空パックや冷凍品にします。

フカヒレ料理・フカヒレスープ

フカヒレのスープ
【鱼翅汤(フカヒレスープ)の作り方】

中国語で「フカヒレ」は「魚翅」と言います。「湯」はスープのこと。

1)フカヒレを熱湯につけて柔らかくもどす。

2)鶏肉をよく洗い、生姜といっしょに水に入れ煮立たせ、アクを取り除いた後、戻したフカヒレを入れて2時間煮込む。

3)塩で調味しできあがり。

シンプルですが、いろいろなアレンジ法があります。

フカヒレの栄養素と効能

フカヒレの栄養素としては、タンパク質・亜鉛・ビタミンB12などです。フカヒレと言えば美容に良いとされるコラーゲンがたっぷり、と言われていますが、このコラーゲンはタンパク質の一種で、肌の水分や弾力性増加に効果があるとされています。

表舞台から消えつつある「フカヒレ」

フカヒレ

美味しくて栄養価も高いフカヒレですが、クジラ・イルカなどとともに欧米社会から追放の憂き目に遭い、さらには中国政府による近年の「公的な宴会における贅沢禁止法」、さらには中国人の食生活の変化により、いずれ中国珍味としてのフカヒレは中国の表舞台からは消えていくことでしょう。

これまでの「フカヒレ漁業」では、高値で取引される「ヒレ」を獲って残りは捨ててしまうことが多く、ヒレを失ったサメはえら呼吸ができずにそのまま死んでしまいます。この残酷さやフカヒレ漁業によるサメの激減により、アメリカでは2010年にアメリカ領海内における「フカヒレ漁業禁止法」を可決、違反すると多額の罰金が科されます。

フカヒレでアルツハイマー?

ヒレだけを獲って後は捨ててしまうという漁法や、サメの激減、中国における贅沢禁止法によるフカヒレ追放等、逆風が吹き荒れるフカヒレですが、それに追い打ちをかけるように、近年、フカヒレとサメの軟骨には神経毒が含まれ、この毒がアルツハイマーやパーキンソン病を発病させる可能性があるとの研究結果が発表されています。

これが確実な結果なら大事件ですが、その後の発表はありません。本当にそうなる確率が高いのであれば、フカヒレの食用は禁止すべきでしょう。続報を待ちたいところです。

中国で流通する人工フカヒレ

また中国では、高価なホンモノのフカヒレに替えて人工フカヒレも作られていますが、中国でこの人工フカヒレからカドミウムやメチル水銀が許容量を超えて入っていたというニュースもあります。

日本におけるフカヒレ

フカヒレご飯

実は日本はフカヒレ加工において世界一の品質を誇っています。

日本でフカヒレは江戸時代からアワビやナマコとともに明や清に輸出されていました。

東日本大震災の被災地・気仙沼は世界有数のフカヒレ産地です。ここはマグロの延縄漁業(はえなわぎょぎょう…縄をかけて魚を獲る)が有名でマグロが目的なのですが、たくさんのサメが同時に引っかかって獲れ、これをまるごと活用しているということです。

サメの身はかまぼこ・はんぺんなど練り物に、皮は革製品に、骨はサプリメントに、ヒレはフカヒレへと、世界でも珍しいサメの総合活用漁業がなされています。

気仙沼のフカヒレは加工技術が優れているため高級品として扱われています。

ただしこのサメ漁業もたとえばイギリスのメディアによって叩かれており、今後世界からクジラ・イルカ同様の扱いを受けないかどうか懸念されるところです。

一方「欧米人は鶏・豚・牛をまるごと利用しているのか?」と、肉だけ食べて内蔵は捨てる欧米式食肉活用に疑問を投げる日本人もいます。

基本魚をあまり食べず、大きな魚をペット視する欧米人の自分たちの価値観にのみ偏った一方的主張やダブルスタンダードには不愉快さや怒りを覚えますが、中国では欧米化した香港人を中心にこれに賛同する傾向があります。日本への「クジラ叩き」の激しさを見て、自分たちの「文明度の高さ」をアピールしたいのかもしれません。