ツバメの巣

ツバメの巣

ツバメの巣は中華料理では高級食材として扱われ、古くから食べられてきました。

ここではどのようなツバメの巣なら食べられるのか、ツバメの巣を食用としてきた歴史、料理、栄養などについて紹介します。

ツバメの巣とは

ツバメの巣

ツバメの巣とは、東アジア・東南アジアで古くから食べられてきた高価な食材で、文字通り「ツバメの巣」そのものです。ただし日本で見られるツバメとは異なり、東南アジアなどで見られる「アナツバメ」という種類のツバメの巣で、その巣はほとんどがツバメの唾液からできています。つまり「ツバメの巣」という中国珍味は、「アナツバメの唾液が固まったもの」と言うことができるでしょう。

アナツバメは漢字では「穴燕」と書きます。文字通り穴・洞窟に巣を作るのです。ただし海辺の絶壁の洞穴で、ここに集団で巣を作ります。

一方日本で見られる「ツバメの巣」は泥や枯れ葉などからできていて、巣の材料の唾液率は低く食べられません。

ツバメの巣の産地

ツバメの巣

ツバメの巣の産地はほとんどがインドネシアなど東南アジアです。天然ものだけで養殖はありません。

ただしアナツバメが営巣する岸壁の洞窟を擬して、アパートのような窓のある建物を作ってそこで巣を作らせ、人間が管理するということはしています。というか絶壁の洞穴にあるツバメの巣だけを商売にするのは命がけでしょう。昔はサルを使ったという話もあります。

せっかく作った巣を人間が横取りするって?!!

横取りはするのですが、アナツバメはヒナが育つとその巣を捨てるのでそれを頂戴するのです。次の子育て期が来るとまた新しい巣を作ります。

ツバメの巣の種類

ツバメの巣」には3種類あります。

【ツバメの巣の種類】

1)白「ツバメの巣」…これはツバメの唾液だけでできた巣で白く透明。

2)毛「ツバメの巣」…唾液だけでなくツバメの絨毛も入っている巣。

3)血「ツバメの巣」…唾液成分はなく、未消化の小魚や海藻でできた巣。赤い色をしています。

中国珍味としてのツバメの巣

ツバメの巣

「ツバメの巣」という食材は中国だけの珍味ではなく、東南アジアでもそのほかの国々でも人気のある食材だと言いますからびっくりです。スープの具やデザートとして食べるとか。

中国料理としてのツバメの巣は特に広東料理で食べられます。元や明代に中国に伝わったようですが、清朝時代にはアワビやフカヒレなどと共に豪華な宴席料理に用いられるようになりました。

近年中国政府は公式の宴席で贅沢な料理を出すことへの禁止令を出しましたが、ツバメの巣はフカヒレとともにこの「禁じられたご馳走」に選ばれています。

ツバメの巣の栄養価

ツバメの巣にはタンパク質や炭水化物、ビタミンB1・ビタミンD・ナトリウム・カルシウム・カリウム・マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。

ツバメの巣の薬効

ウイルスなどを防御する・強心降圧作用・肺を潤す・胃弱や多汗、頻尿の改善・免疫力のアップ・骨の成長・美容効果など。

ツバメの巣を食べるといい症状

虚弱体質・肺に問題があって痰や咳が出やすい・喀血や吐血の症状がある・頻尿。

ツバメの巣を食べない方がいい人

風邪をひいて熱があり、悪寒・頭痛・咳などがある人は治りにくくなる。

タンパク質にアレルギーがある人は避けた方がよい。

赤ちゃんは消化力が弱いので食べさせない方がよい。

ツバメの巣を使った料理

ツバメの巣のスープ

清炖燕窩(ツバメの巣の煮込み)

【ツバメの巣のスープの作り方】

1)乾燥させたツバメの巣を2時間に1回水を替えながら6時間ほど水に浸けて戻す。

2)30分ほどとろ火で煮込んで出来上がり。

中華圏の人は一般に、この柔らかく煮込んだ燕の巣をデザートや料理の中に入れて食べます。

本物のツバメの巣の選び方

ツバメの巣
【本物のツバメの巣の選び方】

・ツバメの巣は網の目状になっていて、光の下で見ると半透明になっている。

・ツバメの巣は特有の香りがあるが強烈ではない。

・ツバメの巣を水に浸けて柔らかくなってから糸状のものを引っ張ると延びる。

以上がホンモノのツバメの巣で、上記のようにならなければ偽物の可能性が高い。

こういう情報があるということは「ニセのツバメの巣」が出回っているということでしょう。高価なものですので(日本で買う場合20g前後で6000円くらい)買う時は気をつける必要があります。

ニセモノのツバメの巣の危険性

ニセツバメの巣の危険性ですが、中国で数年前にツバメの巣の抜き取り調査をした際、3万以上もの「赤ツバメの巣」が着色されており、人体に有害な亜硝酸塩がひどいものは350倍も含まれていたということです。中国では「赤」がおめでたい色であるため赤ツバメの巣が好まれ、そのためにこうしたことが行われたのかもしれません。

「白ツバメの巣」の場合は色をきれいな白に見せるために漂白剤が使われている可能性もあるそうです。

中国はツバメの巣の産地ではありませんが、一般消費者に届くまでに流通過程が多く、そこで儲けを多くするために加工する可能性があるのです。

中国での食用ツバメの巣の歴史

ツバメの巣を食べるようになったのは中国では明代と言われています。明代の鄭和(ていわ…明代の武将。7度も大航海をしたことで有名)が中国人として初めてこれを食べ、明の成祖・永楽帝にも献上したと言われています。

ただし唐代にはすでにツバメの巣が中国に入っていたという説もあります。

ともあれ明代にはツバメの巣が皇帝の食事に用いられる「宮廷御膳」に、清代には「貴家珍品」として身分の高い家の宴席用の貴重な食材となっていました。

清代の有名な小説『紅楼夢』の第45回に、ヒロインの病弱な美少女・林黛玉にこれを食べさせたという場面が出てきます。

また中華民国の蒋介石総統夫人・宋美齢(中華圏では女性は結婚後も実家の苗字を名乗り、例えば蒋美齢とはなりません)は106歳という驚異的な長寿をまっとうしましたが、毎日必ず小さなお椀に1杯、氷砂糖を入れた燕の巣スープを食べていたそうです。

ツバメの巣の消費国

ツバメの巣を最もよく食べるのは香港の人で、輸入量の50%は香港、中国大陸も合わせると65%です。

日本でも江戸時代には「燕巣」(えんず)として入ってきており、吸い物などにしていたということです。