クコの実

クコの実

クコ(枸杞)の実はナス科の植物で古くから中国で栄養豊富な漢方薬として用いられてきました。

ここではクコの実の栄養・効能・食べる量の目安・クコの実を使った料理のレシピ・クコ(枸杞)の名前の由来・クコの実の偽物の見分け方・中国に伝わるクコの実の伝説などを紹介します。

クコの実とは

クコの実

クコの実の「クコ」は漢字で枸杞と書きます。ナス科の植物で東アジア(中国~日本)が原産地です。

クコの実を乾燥させたものは漢方薬で生薬(しょうやく…原料のまま、あまり加工せず使う薬材)として使われます。また、クコの実は英語でゴジベリー(goji berry)と呼ばれ、米国などでも栄養食品として知られています。

中華料理のデザートとしてよく出される杏仁豆腐の上にパラパラと乗ってたりする赤い米粒のようなもの…あれが「クコの実」です。食べてみるとわずかに甘味があります。

杏仁豆腐の上のクコの実
杏仁豆腐の上のクコの実。

クコの実の栄養成分

クコの実

クコの実の代表的な栄養素としては、ゼアキサンチン・ビタミンB1・ビタミンB2・ビタミンC・ベタインなどです。ゼアキサンチンは目の網膜に含まれるカロテノイド(天然色素)の一種です。

ベタインは免疫・抗癌作用・アンチエイジングなどの効果がある成分として、近年研究が進められています。

クコの実の効能

クコの実は滋養強壮・疲労回復・めまい・耳鳴り・視力減退の改善などに効果があるほか、肺を潤し咳止め効果もあります。

クコの実を食べる量の目安

クコの実

クコの実の1回に食べる量は6~20グラムが適量です。食べすぎは、中医学で「上火」(便秘・鼻血・口の中の炎症などの症状が出る)という状態になりやすいので避けましょう。

クコの実を使った薬膳料理のレシピ

クコの実のレシピ

クコの実を使った栄養価の高い薬膳料理を下に紹介します。

豚レバーとクコの実のスープ

【豚レバーとクコのスープの作り方】

材料:豚レバー100g クコ15g  調味料(ネギ・ニンニク・醤油・酒・塩など)

1)レバーを薄切りにして熱湯でゆがいておく。

2)水を火にかけ、ゆがいておいたレバー・クコ・調味料を入れて煮込み、最後に味を調える。

ナツメとクコのお粥

【ナツメとクコのお粥の作り方】

材料:白米100 ナツメ20g  クコ15g 赤砂糖適量

鍋の中に全材料を入れて煮込んで粥にし、最後に赤砂糖で味を調える。

※毎日朝食としてこの粥を食べ、1か月続ければ、貧血・肝炎・不眠症・無気力・疲労感・慢性気管支炎などに効果があります。ただし胃酸過多の人には向きません。

クコ(枸杞)という植物

クコ(植物)

クコは冷涼な気候を好み、耐寒力のある植物です。気温が7度くらいになると芽を出します。根が発達していて乾燥に強く、雨の少ない土地でも育ちます。ただ花や実をつける時期は十分な水を必要とします。水のたまる湿地帯などでは育たず、十分に日が当たる場所で元気に育ち、実も大きくなり品質も上がります。

クコの生態分布

クコの実

中国のクコは東北・華北・山西省・陝西省・甘粛省南部・西南・華中・華南・華東など中国全域にあります。また日本など東アジアでも野生のクコを見ることができます。

一方ヨーロッパでは栽培クコのみで野生のクコを見ることはありません。

観賞用植物としてのクコの価値

クコの花

クコは薄紫の可愛い花を咲かせ、真っ赤な果実を実らせるので鑑賞植物として育てることもできます。ただし乾燥や寒さには耐えますが、多雨多湿の土地には適しません。

クコの林業的価値

クコは乾燥に耐えるので砂地でも育ちます。そこで水土保全用の灌木としても適しています。また塩分のある土地でも育つのでそうした場所に植えることもできます。

クコの食用としての価値

クコの実

クコは実を生薬として使うだけでなく、様々な部位を食べることもできます。

若い芽や葉は野菜として食べられ、中国の広東・広西では人気の野菜です。

また各種食品に加工されたり、クコオイル・薬用酒・サプリなどにも使われています。

お粥やデザートに乗せたり、お茶うけなどとしても食べられますが、緑茶といっしょに食べると、緑茶の成分がクコの微量元素を吸収してしまうので避けた方がいいでしょう。

クコ(枸杞)という名称の由来

枸杞(ゴウチー…クコのこと)というこの植物の名前は2000年以上も前の中国の古典『詩経』に出てきます。

李時珍(り じちん 1518~1593…明代の医師・本草学者)は「『枸杞』とは2つの木の名前である。枸の木のように棘があり、杞のような茎がある。そこでこの2つの木を合わせてこう呼ぶ」と言っています。

クコの実の伝説

クコの実

クコの実については下のような伝説が残されています。

唐の時代、ある日シルクロードのかなたから西域商人たちがやってきました。日が暮れて宿に泊まると、若い娘が老人を叱りつけています。商人が娘に近づいて「なんでまたお年寄りをいじめているのだ」と意見すると、娘は「自分の孫を叱っているのに余計なお世話だ」と言い返します。これを聞いてみなびっくり。なんとこの娘は200歳を越しており、老人も90過ぎだと言うではありませんか。

老人が娘に叱られていたのは、一族の掟に従って薬草を飲まなかったから、年を取る前に体が衰え、眼もよく見えなくなったからだと言います。

商人が驚いて、200歳以上だというこの娘に長生きの秘訣を聞きますと、1年中クコの実を服用しているからだと言います。

こうしてクコの実は東方の神薬として中東や西方に伝わったということです。

クコの実は偽物に注意!

中国で売っているクコの実には染色した毒のクコの実があるということですので、おみやげなどに買う時は気をつけましょう。

生のクコの実(乾燥させていないクコの実)は産地によって色合いなどは異なりますが、良いクコの実は色彩が毒々しくなく、光沢があり、しっかりした肉質もあります。

染色されている「毒クコの実」は肉質が薄っぺらで、光沢がなく、色合いだけは鮮やかで、ヘタやガクの部分まで赤く染まっています。染色されたクコの実かどうかは水につければすぐわかるので、水につけたり、手を水で湿らせて触ってみると色落ちします。

毒々しい赤のクコの実は毒クコの実

クコの実はきれいな赤い色をしていますが、中国ではこれを硫黄で燻蒸したり一種の漂白剤などを使って鮮やかな赤のクコの実を売る悪徳商人もいます。

これらのクコの実を食べると腎臓に害があり、急性中毒を起こすこともあります。毒クコの実は毒々しい赤、品のない赤をしており、中国でクコの実をおみやげなどに買う場合はよく吟味する必要があります。

中国では寧夏のクコの実が最高

中国産のクコの実は寧夏回族自治区のものが薬材としては最高だと言われ、値段も高いです。寧夏のクコの実には白い点々があり、これが他の地域のクコの実との違いです。このクコの実は水に入れるとほとんどが浮かび、沈むものはわずかです。

寧夏のクコの実はとても甘いのですが、食べた後のどに多少苦味が残るのが特徴です。

鮮やかな色にするために硫黄で燻蒸したクコの実もありますが、これらは刺激臭があり、口にすると酸っぱく、苦味もあります。

寧夏のクコの実は長年栽培を続けたために土地がやせてきており、そのため小粒になっています。そうした面も考慮した中国各地のクコの実の品質ランキングでは

甘粛省靖遠がトップ 

次が新疆精河

3番手が寧夏の銀川

4番手が寧夏の中寧

となっています。

高価な黒クコの実

クコの実

クコの実は赤い色をしていますが黒いクコの実というのもあり、中国でこれは「柔らかな黄金」と呼ばれ、値段がどんどん上がって1キロ4400元(約70400円)もします。

黒いクコの実は「アントシアン」という色素が含まれていて、これが抗酸化・アンチエイジングなどに効果があると言われています。実験の結果としては、確かにそうした効果はありますが、黒クコの実のアントシアンの含有量はナスの皮・ブルーベリー・ブドウに及ばず、わざわざ高いお金を出して買うほどの価値はありません。

中国以外のクコの実の利用法

クコの実は体に良い食材として海外でも人気でゴジベリー(Goji Berry、枸杞イチゴ)と呼ばれ、クコチャーハン・クコケーキ・クコジャム・クコパック(化粧品)などに加工されています。

クコの実の値段

ドライフルーツのクコの実(中国大陸製)を日本で買うと1キロ2000円ちょっとです。

中国では同30元(約480円)~60元(約960円)で、4分の1から半値で買えます。

台湾の黒いクコの実は500グラム350元(約1400円)…1キロ2800円

台湾の赤いクコの実で有機栽培のものは200グラム369元(約1476円)…1キロ7380円

となっていましたので、大陸のクコの実に比べるとだいぶ高いです。

上記のように中国大陸では毒クコの実が出回っているらしい状況を見ると、おみやげはもちろんのこと、自家用であっても日本のちゃんとした所で買うか、台湾に行った時におみやげとして買ってきた方がよさそうです。

それにしても中国の農作物はなんでこんなに安いのか?これも毒クコの実が出回る原因ではないかと思います。

中国伝統の貴重な薬材・クコの実…作る人も食べる人も納得の値段にして、安心して口にしたいものです。