日本のラーメンと中国のラーメン(拉麺・拉面)の違い・特徴

日本のラーメンと中国のラーメン

ラーメンを日本人は「ギョーザ」などと同様中国から伝わった中華料理だと思っていますが、訪日中国人に言わせると「日本の麺料理」であって中国料理ではないとのこと。その日本の麺料理の1つ「ラーメン」は中国人にも美味しいと評判です。

ここでは、日本のラーメン中国のラーメン(拉麺・拉面)の違いと特徴、日本のラーメンが中国で日本料理として人気があるという話などを紹介します。

日本のラーメンの元となった中国のラーメン「拉面(拉麺)」

中国のラーメン(拉麺・拉面)

日本のラーメンと中国のラーメンの違いを紹介する前に、「拉麺」(ラーメン)という漢字の由来と、日本に拉麺が伝わってきた歴史を紹介します。

日本のラーメンの原型となった中国の麺料理のことを、中国では「拉面」、台湾や香港などでは「拉麺」と書きますが、これはもともとは「拉麺」だったのを、20世紀半ばごろに中国が簡体字という簡略化された字体を導入したため中国でのみ「拉面」と書くことになりました。そのため、これらの漢字は料理としては同じものを指します。

「拉麺」とは中国の麺料理の1つで、拉麺の拉とは「伸ばす」という意味、「麺」はもともと「小麦粉」という意味です。麺を作る時、長く伸ばすので「拉麺」と言うのです。この拉麺が幕末から明治にかけてチャイナタウンの中国人を通して伝わり日本の「ラーメン」になったと言われますが、その他の説もあり、はっきりした史実はわかりません。

その拉麺の作り方ですが、お湯を入れてよくこねた小麦粉を長く伸ばし、たたみ、さらに伸ばすという工程を何回か行い、細い麺になったところでやめます。こうした工程を経ることでモチモチした独特の触感が生まれます。この工程はすべて手作業です。

このやり方が、細く切っていく他の中国麺や日本のうどん・蕎麦とは異なります。

拉麺の始まりはハラル食品?

拉麺はイスラム教徒の多い中国西北部で作られるようになり、その多くはイスラム食品、いわゆる「ハラル食品」でした。ただし発祥がイスラム食品だったかどうかはわかりません。

この中国西北部で食べられていた拉麺の中で「蘭州牛肉麺」はとりわけ有名で、牛肉スープに大根や赤いラー油・ニンニクの芽などを入れ、今も「一清・二白・三紅・四緑・五黄」の麺と呼ばれます。

清は「清真」(「イスラム教の」という形容詞)のこと。ちなみに中国語でモスクは「清真寺」、「イスラム教」は「回教」・「伊斯蘭教」・「清真教」などと言います。

白は大根、「紅」は赤を意味し、これはラー油、緑と黄はニンニクの芽のことでしょう。イスラム教徒は豚肉は食べませんが、牛肉は大丈夫です。

蘭州は中国西北部「甘粛省」の省都で、回族(イスラム教徒だが民族としては漢族とほとんど変わらない)が多いことで有名です。

拉麺は中央アジアなどにも伝わり、中央アジアではこの麺を野菜と炒め合わせて「拉条子」と呼んでいるそうです。条または条子は「細長いもの」という意味です。

「蘭州牛肉拉面」は中国では「中華第一麺」、つまり「中国の麺料理ナンバーワン」と呼ばれており、中国各地に「蘭州牛肉面館」(蘭州牛肉拉麺店)があって人気を集めています。中国に行って『蘭州牛肉面』という看板を見つけたら中国風拉麺を食べることができるというわけです。

蘭州の拉麺
蘭州の拉麺。

日本のラーメンと中国の拉麺(拉面)の違い

日本式ラーメンと中国の拉麺(拉面)の決定的な違いは、鹹水(かんすい…アルカリ塩水溶液)を加えるか加えないかという点にあります。これを加えるのが日本のラーメンの大きな特徴で、これによってあのシコシコ感が出てきます。

中国の拉麺はこれがなく、そのため日本のうどんに似た感触です。

日本のラーメンはこうしてこねた小麦粉を伸ばすのですがこの時手作業ではなく「製麺機」を使います。中国から拉麺が伝わったのが比較的新しく、伝来初期にはもう製麺機を使うようになっていたという説があります。

こねて伸ばすという工程が手作業かどうかも日中で異なります。

日本のラーメンは「出汁」にこだわる

日本のラーメン

3つめの大きな違いは日本のラーメンは出汁(だし)にこだわる、ということでしょう。

中国の拉麺類、つまりうどん類は出汁にこだわっているという感じはあまりしません。もちろん牛肉拉麺のように牛肉の出汁が効いて美味しいものもたくさんありますが、それはどんな具を使っているかによって決まる味で、出汁そのものにこだわっているわけではないようです。

そこで辛みの効いている麺のスープは美味しいのですが、辛みが効いていないものは平凡な味であることが多い気がします。もちろん好みによるでしょうが。

中国に進出した日本のラーメン

日本のラーメン

日本のラーメンは「日式拉面」として中国でも人気です。

北京で目にした日式拉面屋さんは「味千拉面」、元は熊本のラーメン屋さんですが経営者は台湾出身者です。1996年に香港に進出、その後破竹の勢いで中国本土にもチェーン店を置き、この中国での味千の経営者は中国人で多額のロイヤル料を日本本社に支払っているということです。

一時は外資による外食産業企業としてトップ4にまで入りましたが、近年は勢いを失っているとのこと。大きな原因としては、スマホによる「オンラインフードデリバリー」、つまりスマホを使った出前…の波にうまく乗れていないことや、中国外食企業の発展もあってそれらの企業との差別化に成功できていないことなどが取りざたされています。

他にもいくつもの日本式ラーメン店が中国に進出していますが、ダントツ人気のスープは豚骨味です。煮干しや昆布など海鮮系の出汁は今一つのようです。

北京で遭遇した味千ラーメンですが、外観の印象は「ラーメン屋さんにしてはおしゃれ・高級感あり」ということで日本人としては違和感がありました。値段が中国麺の店に比べて倍くらい高かったのでさもありなん…と思いました。

中国で日本食は高級料理のイメージで基本どこも高い、日本での「フランス料理」という感じでしょうか。そういう場所で演歌が流れてきたりするのでこれも日本人として違和感ありです。

中国での値段ですが、麺料理は10元(約160円)以下~30元(約480円)くらい、日本式ラーメンは50元(約800円)弱です。麺料理の価格に差がありすぎるのは場所によってまったく異なるからです。場末の食堂で食べるか上海などのショッピングモールで食べるかで値段は大きく異なってきます。場末の食堂は安くて美味しいのですが、衛生面や材料に何を使っているか不安があります。

日本のラーメンは訪日中国人に大人気

日本のラーメン

日本人にとってラーメンとはややわびしいメニューです。

ところが意外なことに、中国人観光客をラーメン店に案内するととても満足してもらえます。中国料理の1つだからでは?と思われるかもしれませんが、日本の中国料理は中国人にまったくと言っていいほど人気がありません。日本の中国料理は日本人の口に合わせて作られており、中国人の口には合わないことが多いのです。

ところがラーメンだけは例外。中国人はラーメンを日本料理の1つとして受け取り、ラーメンは神戸牛やカニしゃぶ、ウナギ、トンカツ、寿司などと同様中国人に喜ばれるメニューなのです。