白茶
Tweet白茶は中国茶の一種で、弱発酵茶です。
ここでは白茶の作り方や効能、産地、有名な白茶である「白毫銀針」にまつわる話やその飲み方などを紹介していきます。
目次
- 1. 白茶とは
- 2. 白茶の製造工程
- 3. 白茶の効能
- 4. 白茶の産地
- 5. 有名な白茶
- 6. 「白毫銀針」のいわれ
- 7. 白毫銀針の入れ方
- 8. 茶葉の入った蓋つき茶碗で飲む中国茶の飲み方
白茶とは
白茶は、「白毫」と呼ばれる白い産毛が生えた葉で作られる半発酵茶(発酵度10%)です。
日本では聞きなれないお茶の名前ですが、実は中国では昔からあるお茶で、北宋第8代皇帝・徽宗(きそう 1082~1135年 芸術的な才能に恵まれていたが政治的には無能だったことで有名)は白茶の銘品「白毫銀針」(はくごう ぎんしん)を愛飲していたそうです。
また「白牡丹」(はくぼたん)という白茶は今香港で人気だとか。
白茶とお茶の種類
白茶は弱発酵茶ですが、中国茶は発酵の度合いなどによって以下の図のように緑茶・白茶・黄茶・青茶・紅茶・黒茶の基本6種類に分類されています。
お茶の種類について詳しくは「お茶の種類と歴史」のページで紹介しています。
白茶の製造工程
白茶の製造工程は、萎凋(いちょう)と乾燥の2工程です。
「萎凋」とは、葉を摘んだ後、室内または室外で晒して水分を飛ばし、少し発酵を進めることです。室内か室外かは天候によって決められます。曇りや雨なら室内、春や秋の晴れた日なら室外で行います。
「乾燥」とは、茶葉の余分の水分を蒸発させることですが、白茶の場合「烘焙」(ほうばい)という方法でゆっくり乾燥させます。
「箱詰め」とは、できあがった白茶を箱詰めすることですが、この時「烘焙」した茶は水分を吸収しやすいので、箱詰め前に2度目の「烘焙」をして水分を飛ばします。
白茶の効能
白茶はほとんど加工をしないので、茶葉の栄養の大部分が損なわれずに残っています。白茶に多く含まれるポリフェノールは天然の抗酸化剤で免疫力を高め、心血管を保護します。また白茶の中には人体が必要とする活性酵素があり、脂肪の分解や代謝を促進します。
またインシュリンの分泌をおさえ、血液中の余分な糖分を分解し、血糖値のバランスを整えるという作用も持ちます。
夏に白茶を常用すると暑さ負けを防いでくれますが、これは白茶に含まれる多種のアミノ酸が体熱を冷ましたり解毒作用を持つからです。
白茶の産地
白茶の産地は福建省です。「白毫銀針」の産地は、福建省の福鼎や政和、「白牡丹」の産地も同じく福建省の福鼎、政和、建陽、松渓など。
有名な白茶
白毫銀針
白毫銀針(はくごう ぎんしん)の茶葉原料はすべて新芽で、針のようにまっすぐに作られています。茶葉の色が銀のように白いことからこう名付けられ、「白い衣装をまとった輝く美女」とも形容されています。
この茶葉にお湯を注ぐと茶葉は上下に動き、茶湯の色は淡いオレンジです。
特徴的な香りを持ち清々しさを感じます。
味わいは爽やかでわずかに渋みがあります。
この茶葉は保存がきき、2~3年以上経ったものが美味しいと言われています。
白牡丹
この茶葉で入れたときの様子がつぼみが開くようであることから「白牡丹」と名付けられました。芽が太く葉もふっくらしています。茶葉の芽と葉で花の形を作っています。
お湯を注いだときの湯の色は透明感のあるオレンジ色です。
香りは清々しさがあります。
味は爽やかでやや甘味があります。
この茶葉も長くおくほど品質が良くなります。2~3年以上経ったものが美味しいと言われています。
新工芸白茶(新白茶)
新工芸白茶(しんこうげい はくちゃ)は略して「新白茶」とも呼ばれます。ベースの作り方は白茶と同じですが、萎凋のあとに軽く揉み込む工程を入れます。
「福鼎大白茶」や「福鼎大毫茶」という品種の芽や葉で作ります。
湯を注ぐとオレンジ色になります。香りは清々しく、濃厚な味です。
「白毫銀針」のいわれ
白茶が作られるようになったいわれとして、こんな伝説が残っています。
昔むかし、福建省政和一帯では旱魃で雨が降らず、疫病がいたるところで猛威をふるっていました。山の上にある龍井という井戸ばたにいく株かの仙草が生えていて、この草の汁は万病に効くと言われていました。多くの勇敢な若者がこの仙草をさがそうと山に入っていきましたが、戻ってきた者はひとりもいませんでした。
この地に志剛、志誠、志玉という3人兄妹がいました。3人は相談して順番に山に仙草を探しに行くことにしました。まず上の兄が山のふもとまで行くと、一人の老人が通りかかって「仙草は山の上の龍井のそばに生えているが、山に登るときは前だけを見て後ろを振り返ってはならぬ。振り返ると仙草を探し出すことはできない」と教えてくれました。志剛は一気に山の中腹まで登ると、山中石がごろごろしていて何ともいえない恐ろしい空気が漂っています。そこに突然「まだ登るつもりか」という大声が響いてきました。志剛が驚いて振り返ると、たちまちにして石と化してしまいました。
2番目の志誠が続いて仙草をさがしに出かけましたが、山の中腹でこれまた後ろを振り返り同じように石と化してしまいました。
仙草さがしの重い役目は下の妹・志玉に課されました。彼女もまた山に行く途中で白髪の老人に出会いました。老人は同じように決して後ろを振り返ってはいけないと言って彼女に焼餅を1つくれました。志玉がお礼を言って前に進むと石がごろごろしている岩場に出て、あの恐ろしい声が聞こえてきました。志玉は焼餅で耳をふさぎ決して振り返ろうとはしませんでした。そしてとうとう山の頂上の龍井にやってくることができました。彼女は仙草の芽と葉を採り、井戸の水を仙草にふりかけますと、仙草に花が咲き実がなりました。志玉はそのタネを採ると一目散に山を駆け下りました。
家に戻ってくると志玉はこのタネを山の斜面に播きました。やがてタネからは芽や葉が生えて立派な木が育ちました。
村人を救おうと仙草を採りに行きおおぜいの若者が犠牲になって、最後に一人の少女が持ち帰ったタネこそが実は茶の木だったのです。この茶の芽と葉からやがて「白毫銀針」という名茶が生まれたのでした。
かつての茶づくりの苦労と茶が薬草だという意識があったことがしのばれる伝説です。
白毫銀針の入れ方
それではこの貴重なお茶、中国ではどう飲まれているのかを見てみましょう。
なお、中国の茶器の名前と使い方に関しては「中国茶」のページで詳しく紹介しているので、そちらをご覧ください。
1:茶器を用意し、お湯を沸騰させておく(80度くらいに冷ましたものを使う)。
2:茶碗にお湯を少量入れて温めておく。
3:茶葉を適量茶碗に入れる。
4:茶碗の3分の1までお湯を注ぐ。
5:茶碗を軽く回して茶葉を蒸らす。(このため蓋つきの茶碗がよい。その場合蓋も温めておく)
6:茶碗の7分の1までお湯を注いでできあがり。
つまり急須を用いずに茶碗にそのまま茶葉を入れて飲むのです。
そうすると茶葉が邪魔で飲みにくいわけですが、これはどうしているのでしょうか。中国人の飲み方を見ているととても上手に飲んでいます。では次に飲み方について紹介しましょう。
茶葉の入った蓋つき茶碗で飲む中国茶の飲み方
1:一方の手に茶碗を、もう一方の手は蓋を押さえます。茶碗の下に茶托がある場合は茶托ごと持ちます。
2:蓋に当てた手の親指と中指で蓋をずらして、表面に浮いている茶葉をよけます。
3:茶碗を持ち上げてゆっくりと飲みます。
この時茶湯が熱いと「フ―っと」吹くのは日中ともに同じですが、面白いことに日本人は湯にまっすぐ息をかけ、中国人は頭を左右に揺すりながら息をかけます。
なぜ頭を揺するのか聞いてみたことがあるのですが、葉が浮いているからそれを左右にどかすためだとそうです。では蓋によってすでに葉がじゃまにならず、なお熱いときは日本人のような息の吹き方をするのか…残念ながら茶に関してはまだ観察ができていません。
ただ熱い麺を食べる時も中国人は頭を左右に揺すって息をかけるので、茶の場合も葉をよけるためではなく全体を冷まそうとしているのではないか、という気がします。