“洗肺(シーフェイ)”

洗肺(シーフェイ)

洗肺(シーフェイ)とは

洗肺は中国語で「肺を洗う」という意味で「シーフェイ」と読みます。近年中国のツーリストが「洗肺遊」と銘打った旅行コースをうたい文句に集客を図っています。「遊」は「旅行する」という意味で使われています。

なぜ「肺を洗う」のか? もちろんこれは、大気汚染がひどい中国の現状から生まれた発想で、「洗肺遊」は、pm2.5(微小粒子状物質)など肺に入りやすい汚染物質から肺を守りたい現代中国人心理をうまくすくい取ったビジネスです。

中国の大気汚染の実態

中国の大気汚染
中国の大気汚染。

中国のpm2.5の平均濃度は2016年の統計(都市部平均の数値で、WTOによる統計値)で世界ワースト15位(51.0μg/m3)です。ちなみに世界の平均は39.6μg/m3で、ワースト1位はネパール(99.5μg/m3)、ワースト7位(68.0μg/m3)はインド、ワースト115位(18.3μg/m3)はシンガポールで、日本はワースト159位(11.8μg/m3)です。ワースト172位(10.4μg/m3)はスイス、ワースト189位(5.8μg/m3)はニュージーランドでした。汚染度ワーストですから大気のクリーン度ナンバーワンということになります。

リアルタイム大気汚染マップを見てもインドと中国の大気汚染はやはり群を抜いています。

大気汚染と肺がんの関係

中国政府の発表によりますと2015年中国では新たにがん患者が430万人増え、そのうち肺がんの患者は73万人で、世界の肺がん患者の36%を占めているそうです。この原因として喫煙の習慣とともに大気汚染、特にpm2.5汚染が疑われています。微小なため肺に入りやすいからです。

大気汚染から逃れたい

日本も東京など大都会の空気は良いとは感じられませんが、中国からやってくると空気の美味しさを感じるそうです。私も北京を旅行して東京に戻ると、街の空気に透明感があるので驚くことがあります。ずっと曇りガラスを通して景色を見ていたのが、突然磨かれた透明のガラスから街を眺める感じがするのです。

その北京も近年はかなり大気汚染撲滅のために力を入れているようで、冬でも青空が見えるようになってきたというニュースも伝わっています。ニュースになるくらいですから、まだまだということでしょう。

そこで「肺を洗う旅」がブームになるわけです。

「洗肺遊」の行先

海南島
海南島。

ツーリストが打ち出している旅行にたとえば「三亜五日間ツアー…天然の酸素バーを楽しもう」などとあり、中国のハワイ…海南島の原始林を歩く森林浴を目玉にしていたりします。

中国で洗肺遊に適した場所としては、海南島以外にアモイ・麗江・桂林・昆明・シーサバンナー・大理・黄山などがあります。

「洗肺」が「爆買い」に取って代わった?

数年前まで日本に来る中国人観光客はその「爆買い」ぶりで話題になっていましたが、その後中国人観光客の関心はモノからコトに移った、つまり日本でしか味わえないコトを経験したいという人が増えている、と言われています。

そのコトの一つが「洗肺」です。中国人観光客は日本できれいな空気を味わい、「養肺薬品」…肺に良い薬などを買うというのが最近のブームだとか。

なぜか佐賀が人気

佐賀

2019年のゴールデンウイーク、日本では新天皇即位をお祝いして10日間の祝日でしたが、この季節は中国でも5月1日のメーデー(中国では労働節)に合わせてやや長い休暇になることがあり、今年も突然長めの祝日になりました。中国ではいちいち段取りを踏んで法制化されたりしないのです…

そこでこの期間、上海から佐賀への飛行機はほぼ満席だったとか。佐賀県の観光課によると、佐賀にやってくる中国人観光客は、2012年の6020人から2018年には約6万人と10倍に増え、増加率では青森・大分に次ぐ第3位です。

佐賀
佐賀。空気の綺麗さで人気です。

なぜ佐賀なのか…「洗肺」です。中国のネットで見る佐賀紹介の写真には真っ青な空、緑豊かな田園風景、コバルトブルーの海など肺を洗うにはぴったりの映像が。海産物も美味しそうだし、東京のように人でごった返していないし、旅慣れしてきた中国人にはなんとも魅力的な場所なのかもしれません。さらに上海・九州間は東京よりはるかに近く、2時間もかからずにやってくることができます。格安航空も増え、美味しい空気を吸うにはもってこいの場所なのかもしれません。

ちなみにこうした「洗肺族」に人気の薬品としては、小林製薬の「清肺湯顆粒」(中国で紹介されている名前)があります。日本語名は「清肺湯ダスモック」といい、気管支の汚れをきれいにして痰や咳などの症状を治し、呼吸を楽にするという漢方系の薬です。