“日料” 中国での日本料理・和食
目次
- 1. 中国での日本料理 “日料”
- 2. 日本ではなぜ“料理”が「料理」に?
- 3. 普通「料理」は“菜”
- 4. 居酒屋が中国でも
- 5. 日本色満載の居酒屋
- 6. “日料”の使われ方
中国での日本料理 “日料”
“日料 Rìliào”(日本料理・和食)
中国のテレビドラマを見ていたら“日料”と言っている場面がありました。おそらくは“日本料理 Rìběn liàolǐ”の略です。“日本料理”という中国語は日本語で、中国語の“料理”に本来「料理」という意味はありません。これは「切り盛りする」という意味です。要するに「さばく」とか「あれこれ手配する」とかそんな意味ですね。たとえば“料理后事 hòushì”(葬式を切り盛りする)などという使い方をするのです。日本人はこんな漢字を見たら「料理の跡片付けかな」なんて誤解しますね。誰も葬式のことなんか浮かばないでしょう。
日本ではなぜ“料理”が「料理」に?
そういう意味の料理がなぜ日本では「料理」の意味になったのでしょうか?おそらくもともと料理という言葉には「切り盛りする」つまり「切ったり盛ったりする」という意味があり、これは明らかに「料理」のことです。おそらく昔の中国ではいわゆる料理の意味で料理と言っていたのでしょう。この古い意味が日本に残ったのだと思います。
普通「料理」は“菜”
中国からの留学生がたくさん日本に来るようになって、この「日本料理」が中国にも伝わるようになりました。中国語で「日本料理」は“日本菜 cài”と言いますが“日本料理”と言っても通じるようになったわけです。ただ、なら中国料理も“中国料理”と言って大丈夫かと言うとこれは非常に不自然です。“料理”という言葉は「日本料理」のみ、あるいは外国料理になら使えるかもしれない、というレベルです。たとえば“法国料理 Fǎguó liàolǐ”(フランス料理)ならそれほどの不自然さはありません。でも中国料理はあくまで“中国菜”。四川料理など中国の地方料理も“四川 Sìchuān料理”とは言わず、“四川菜”と言います。
居酒屋が中国でも
日本の寿司屋、ラーメン店に続き、本格的な日本料理を出す店や居酒屋なども中国に進出しています。最近『深夜食堂』という日本のテレビドラマが中国でも人気だそうで、今年はこれの中国版が作られました。第一作を見てみましたが、日本のセットをそのまま中国に持っていったようにそっくりでびっくり。店主も日本の主人公と同じ服装、作務衣というのでしょうか、和服の仕事着を着ています。まるっきりの「日本」で、これで中国で人気が出るの? と思っていたら案の定評判はさんざんです。
日本色満載の居酒屋
日本色100%のテレビドラマではそりゃあダメでしょ、と思っていると、今年人気の上海を舞台にしたテレビドラマにまさに日本の居酒屋が出てくるのです。ここの店主も日本の作務衣姿、しかもこの店、高級店らしく北海道から着いたばかりのウニの刺身なんかを出すんですが、内装まで日本風。「商い中」だの「ランチやってます」だの、壁の至るところに日本の広告やら文字やらゴテゴテ貼られています。つまり日本色100%は視聴率でも商売でもマイナス要因ではないらしい。テレビドラマの中ではここに外資系のCEOレベルが足しげく通ってきて、あの赤い蓋のヤマサの醤油ビンが置かれたテーブルで刺身をつまみにお銚子をあけているんですよ。日本人から見ると同じ日本色でも貧乏くさい日本色でなんかなあ、もうちょっと品よく詫びさびの日本カラーが出せないの? と思うのですが、もしかしてあれが中国人の見る詫びさびなのかも。
“日料”の使われ方
でこの店を指して、登場人物たちが“日料”と言うのです。「和食食べに行こう」とか「あの和食居酒屋に行こう」というような意味でこの言葉を使うのです。たしかに“日本料理”は言葉として長すぎますものね。言葉をそんな風に省略しちゃうの?と思うかもしれませんが、日本語だって「スマートフォン」がいつの間にか「スマホ」ですよ。“日料”の方がまだ原型をとどめています。で、この“日料”ですがまだ“法料”は現れていないようです。つまり中国、特に上海あたりでは、言葉が省略化されるほど和食人気が高い、フランス料理などはまだまだ省略化されるほどの人気をかち得ていないということかもしれません。