中国の農業
Tweet中国の農業はどんな状態なのか、あまり良い情報は流れてきませんがその実態はどんなものなのか、ここでは中国の農業の収入や農村の状況などについて紹介します。
目次
- 1. 中国の農村・農業・農民
- 2. 中国の純農業収入
- 3. 中国の都市と農村の格差は大きすぎる!
- 4. 中国の農村の現状はなぜ生まれたのか
- 5. 何のための戸籍制度
- 6. 農村や農業の荒廃
- 7. 発展を遂げた農村も
- 8. 今後の中国農業
中国の農村・農業・農民
中国の「農村・農業・農民」問題は「三農問題」として、中国では1990年代後半から政治的、社会的にクローズアップされてきました。
21世紀初頭、湖北省のある地方書記が当時の首相に「農民は本当に苦しんでおり、農村は本当に困窮しており、農業は本当に危険である」という内容の手紙を出したことで、農村問題が大きく取り上げられるようになりました。
この問題をひとことで言うと、農民は農業で食べていけずに困窮し、都市住民が享受している基本インフラ…医療・教育・年金などが得られず、都市と農村の格差が広がっているということです。
中国の純農業収入
中国の純農業収入(平均月収)は2016年のデータで約952元(約1万4300円)。上海のホワイトカラーの平均月収と比べると10%以下となります。
日本では沖縄の平均年収が低すぎるとして問題になっていますが、東京と比べた場合沖縄の平均年収は約7割です。いかに中国の都市・農村間の収入格差・経済格差が大きいかがわかります。
中国の大都市に住むホワイトカラーの平均収入が、農村の農民に比べて10倍以上というのはどうみても同じ国民とは思えません。
中国の都市と農村の格差は大きすぎる!
中国の農村は中国の都市と比べ、特に日本人がよく旅行する北京・上海・広東・深圳などの大都市に比べるとあまりに大きな格差が存在します。
それは日本人が想像するような経済格差だけではありません。
たとえば教育格差…都市と農村では一般に教える科目が異なります。都市では小学校でITまで教えているのに、農村ではその大部分が国語・算数・体育だけ。
農村には図書館のような文化的施設がほとんどなく、両親は都市に出稼ぎに行っていて帰ってくるのは春節の時だけ。農村に残された祖父母によって育てられるのですが、甘やかされがちで子供たちに学習意欲がなかなか育ちません。
中国で農村出身者が環境を乗り越えようとするなら、都会の一流大学に入る必要があるのですが、上記のような状況もあってそうした大学に占める農村出身者は2%と言われています。では中国の人口における農村出身者の割合は…というと5~7割を占めているのです。
こうした教育格差のほか医療のレベルもまったく異なり、年金にも大きな格差というより制度的な差別が存在します。
この結果多くの農村は経済的・文化的・社会的な貧困状態に置かれ、都市住民からは差別的なまなざしを受けています。
中国の農村住民は中国という国家の中の2級市民的存在で、中国の中に「農村」という名の植民地があるとまで言う人もいます。
中国の農村の現状はなぜ生まれたのか
格差というには大きすぎるこのような状況はなぜ生まれたのか。根本的な原因は中国の戸籍制度にあります。
中国はその国土を都市と農村(「鎮」という区分もあり、ここは農村の中の町なのですが、これをデータによって都市に加えたり、農村に加えたりしています)に分け、新中国成立後の1958年時点で、それぞれの場所で生まれた人にその土地の戸籍を与え、教育や医療、年金など社会保障はその戸籍のある地域で受けることになります。
その子供や孫は親を通して最初の戸籍を受け継ぎ、戸籍に変更の自由は基本的にありません。ただ高度な学歴や職歴などを持つ人のみ厳しい審査によって都市戸籍に移ることができます。いわば海外からの移民チェックです。高ポイントを持っていれば移民が可能なのです。
近年この移民チェックを少しゆるめていこうという動きはありますが抜本的なものではなく、農民の不満の「ガス抜き」が目的ではないかと言われています。
何のための戸籍制度
中国の戸籍制度は単なる登録のためというより、一種の身分制度であり、その身分によって享受すべき権利の内容が極端に異なるというのが中国の大きな問題であり、中国の農村や農民の苦痛の原点です。
こうした制度は何のために行われたかというと、都市住民の食の供給や社会保障の安定のためと言われています。つまり中国の圧倒的多数を占める農村の住民たちの権利は最初から除外されていたことになります。また農民たちを団結させて自分たちの権利に目覚めさせないためという話も最近読みました。ここまでくると正に植民地における住民対策に似てきます。
農村や農業の荒廃
中国の学歴と地域との関係を調べた文章を読んだことがありますが、それによると大卒以上の高学歴者は圧倒的多数が都市に住み、農村にはきわめてわずかしかいないことがわかります。
中国の農村における農薬の過度の使用などの問題はこうしたことと関係があります。
また政府から与えられる土地がきわめて少ないため、それだけで食べていけないのは上記の収入からもわかります。こうして農村に住む若い人々は都会に流れて出稼ぎ者になり、農村はますますさびれていきます。
発展を遂げた農村も
このように大きな問題をかかえた農村ですが、一部の農村はやり手の指導者(一般に役人)によって村ぐるみで一大企業となり、大発展したところもあります。最も有名なのは「華西村」で、村人はこの企業の社員となり豪邸や外車が無料で配られたりしました。ただ最近は手を伸ばしすぎて先行きが危ぶまれ、またこの指導者の子供たちによって権力が独占され、一種の独裁王国のようになっているという話も聞きます。
この華西村はすでに農村というより都市化している所ですが、農村としての景観を生かしつつ観光によって魅力的な場所になっている農村もあります。ただしこれらの例はその他の広大な農村地域の状況に比べれば極めて稀な例と言えるでしょう。
今後の中国農業
社会主義を標榜し誇りとする中国において、またその憲法でも国民のさまざまな権利を認めている中で、かくも極端な違憲状況に置かれている中国の農村と農民たち。
彼らを支えるものは「拝金主義」、ひたすら金を稼ごう、金さえ稼げれば勝ちだという意識のように見えます。
中国の食がかなり危険な状態にあるのは、これにかかわる農民たちの拝金主義が原因の一つでしょう。
中国のレストランで真っ赤な人参や緑色すぎるピーマンなどを食べる時、おもわず不安がこみあげてきます。中国人学生からその親が送ってきたスマホの写真を見せてもらったことがあります。そこに写っていたのは巨大なキュウリで、「1週間前に買ったキュウリを台所に置いておいたらこんなになった!」というコメントがついていました。いったいどんな農薬を使えばこうしたことが起こるのでしょうか?
中国人観光客が日本が好きな理由の一つが「安心して食べることができる」ということだそうです。
中国の農業を信頼できる農業にするには、そこで働く農民たちを大切にすることでしょう。国民としての基本的な権利を都市住民と同等にし、人としての誇りを持つようにならなければ中国の農業に未来はない、と私は感じます。