中国人が好きな花

中国人が好きな花

中国では梅・ハス・牡丹などの花が好まれていますが、これらの花が愛されている理由や、中国十大名花、花に関する日本と中国での文化の違いなどを紹介します。

中国人が好きな花

桜の花

日本人が好きな花と言えば…桜でしょう。桜を見るのが嫌いという日本人はほとんどいないのでは?3月の中頃から「今年の桜は…」と桜の開花時期の予報が始まると、日本人はなんだか心がはずんできます。ああ今年も春が来るのだなあ、美しい桜を見ることができるのだなあ…と。おおみそかに紅白歌合戦を見る人は少なくなっても、桜を楽しみにする人が減るとは思えません。何なのでしょう、桜に寄せるこの日本人の思い入れとは…?

梅の花

中国にそうした花、桜ほどの国民的人気を博する花はあるかと言えば…思い浮かびません。もちろん中国人に同じことを聞けば、きっと少し考えたあと「梅、ハス、牡丹…」といくつかの花名が挙がることでしょう。ただそれでは梅の時期におおぜいが梅を見にいくか、牡丹の花を見に行くかと言えばそのような習慣はありません。

ですから中国人はなぜ日本人があんなに桜に夢中になるのかとても不思議です。でも日本にやってきて満開の桜を目にした中国人は、日本人と同様魅了されるようで、今では中国人も桜の開花に合わせて日本にやってくるようになりました。そして中国にも何か所か桜の名所があることが知られ、そうした場所ではやはり桜のお花見が始まっています。

梅・ハス・牡丹…

中国人が愛する花として、なぜ梅・ハス・牡丹などの花の名が挙がるのか…これは歴史や古典と結びついているからです。

梅の花

梅の花
梅の花。

たとえば梅の花と言えば「梅花香自苦寒来」(梅の花の香りは辛い寒さを耐えたからこそ)という言葉があります。梅の花は精神的な強さの象徴なのです。

ハスの花

蓮(ハス)の花
蓮(ハス)の花。

ハスには「出淤泥而不染」(泥土の中で育つのに汚れに染まらない)という言葉があり、高貴な品性を示します。

牡丹

牡丹
牡丹。

牡丹は中国人が昔から最も愛した花の一つで「花中之王」(花の王者)と呼ばれます。

こうして梅やハスの花、牡丹の花は昔から多くの文人墨客が詩や詞の中で歌い描いてきました。

中国十大名花

中国には十大名花と言われる花もあります。

まず梅の花、そして牡丹の花、ハスの花、そして菊、蘭、月季花(バラの一種)、つつじ、ツバキ、金モクセイ、水仙です。

蘭の花

蘭については孔子が「芝蘭は深い谷に育ち、見る者がいないからと言って香りを放たないということはない。君子のような花だ」と称えたと言います。

現代中国で愛される花

バラの花

現代中国で若い人に愛される花と言えば「バラ」です。玫瑰(メイグイ・まいかい)と書きます。野ばらではなく大きくゴージャスな花です。中国ではバレンタインデーに男性が女性にこの花を贈ります。そこで2月14日に近づくとバラの値段は急騰し、この日の夜になると値段は急降下。この夜の時間帯に花屋からバラを送らせひどく奥さんを怒らせてしまった男性の話がテレビドラマにありました。

一方菊の花は日本と同様お墓参りに持っていく花という感覚があります。誰かにプレゼントするにはふさわしくありません。

十大名花には入っていませんが、桃の花も中国人から愛される花です。桃の花は男女間の愛情を意味し、「桃花運」と言えば異性運のことです。

ジャスミン茶に使うジャスミンは「茉莉花」(モーリーホア・まつりか)と呼ばれ、香りが愛される花です。

中国のお花見

中国でも始まったお花見、日本ではブルーシートで場所取りをし、桜の下でお弁当を食べたりお酒を飲んだり、歌や踊りも入ってにぎやかですが、中国ではこうした習慣はまだありません。ただ最近中国で話題・問題になっているお花見行為があり、それは桜の木に登ったり、枝を揺らして写真を撮るという行為です。主に「おばさん」と呼ばれる年齢層の女性たちが行うようでヒンシュクを買っています。中国ではスマホを使ったSNSが子供から老人まで全年齢層に広まっており、写真を撮って知り合いに送る行為がエスカレートしているようです。日本でもお花見の場でこのようなことをする中国人がいてテレビで報じられ、このことが中国に伝わって、中国の恥になるようなことはしないよう旅行者には注意喚起がされています。

素朴な草花を愛する日本とあでやかな花を愛する中国

大和なでしこという言葉があります。日本女性を表す言葉です。サッカーのなでしこジャパンはここから名づけられました。

ナデシコの花
ナデシコの花。

中国人から見ると、ナデシコなどという草花はとても花とは言えないようなもので、なんであんな花が日本女性を表すものとして選ばれたのか不思議だそうです。そう言われて写真を見ると確かに可憐ではありますが素朴な花です。

こうした花を愛でた日本人の祖先の感性はステキだと思うのですが、中国人にこの感性をわかってもらうのは難しいかもしれません。

今の中国人が愛する花は牡丹やバラやユリのような、香り高くゴージャスで美しい花です。もちろん日本人もこうした花は好きですが、日本女性の代名詞としては牡丹やバラやユリではなく、山道にひっそりと咲き道行く人がふと目を止めるようなナデシコであって良かったと感じるのです。

中国女性の代名詞としてはどんな花がいいか、中国人に聞いてみると面白いかもしれません。

花を愛でる文化

庶民が花を愛でるという文化は社会が安定し人々が豊かになり心に余裕ができて生まれ、広がっていくものでしょう。

以前ヨーロッパに行った人が、色とりどりの花が民家の窓辺を飾る写真を撮ってきて「ヨーロッパは美しい…」と、大勢の日本人(特に女性たち)はため息をもらしました。それから数十年、今や日本の住宅は色とりどりの花で飾られるようになり、中国人がそれを見て「日本は本当にきれいだ!」と言ってくれています。

こうした中国人がやがて中国に、庶民が花を愛でる文化というものを伝えていくのかもしれません。