中国語は難しいか易しいか

中国語は難しいか易しいか

このコーナーを読み始めた方は中国語を勉強している方か中国語に興味を持っている方でしょう。

中国語を始めたけれど先が見えない、続けていればいつか身につくんだろうか?

中国語を勉強してみたいけど、難しいのかなあ?

中国語に興味があるけれど、日本人にとって英語よりはとっつきやすいんだろうか?

ここではそうした疑問を持つ方を対象に私なりの考えをお話したいと思います。日本人が学ぶのに中国語は難しいか易しいか、いくつかの側面に分けて説明していきます。

中国語の「発音」は難しいか・やさしいか

中国語の発音――母音や子音は日本語より多く、つまり日本語にない音が多く、さらには「声調」という中国語独特のイントネーションもあって、習得にはそれなりに時間がかかります。この点は英語と同じです。

ただし発音がうまくなくては中国語を話せないか、といえば英語同様そんなことはなくて、たとえ多少発音に難があってもコミュニケーションは取れます。

うまくなるためには留学する必要があるか、といえばこれも英語同様そんなことはありません。留学しても下手な人はたくさんいますし、留学しなくてもうまい人はこれまたたくさんいます。

要は発音の基礎をきちんと学び、折に触れて練習し、自分の発音を正しい音と比較して絶えず改善していけるかです。これがきちんとできれば、留学しようとしまいと確実にネイティブの発音に近づくことはできます。

ただしネイティブと全く同じ発音になれるか、と言えばそれは不可能に近いです。日本で活躍する外国人タレントさんの日本語に耳を傾けてみてください。どんなに長く日本に暮らし、一生懸命日本語を学び続けている人の日本語でも、聞けばすぐ外国人だとわかります。

ただそれで困るかと言えばそんなことはありません。それで立派に日本語が話せているわけで、外国人としてはその日本語で充分すぎるほど充分です。

中国語の「文法」は難しいか・やさしいか

中国語の文法は易しいか難しいかと言えば、日本人にとっては英語の文法より易しいと思います。中国語の構造は英語に近く、簡単に言えば文構造の大半はSVO(主語+述語+目的語)でできていますが、英語のような複雑なテンス(時制)がなく、主語の運用などが融通無碍で日本語に近く、感覚的に英語よりなじみやすいのです。

ただ学べば学ぶほど、単純な文法ルールが見えにくくなり、そこでなかなか手ごわいと思うようになるかもしれません。でもこうしたことは英語でも日本語でも言えることでしょう。

中国語の「語彙」は難しいか・やさしいか

語彙…要するに単語のことですが、どんな言語でも発音と文法を一通り学び終えたら、あとは語彙をどのくらい増やすかにかかっています。このへんは英語で苦労した方ならおわかりでしょう。辛くても単語をたくさん覚えれば英語のテストの点数がぐーんと上がった経験があると思います。

中国語もまったくこれと同じで語彙を増やせば増やすほど中国語力は上がっていきます。

中国語の強みは漢字を使っているということで、簡体字ですので日本の常用漢字とはやや異なるのですがおおよそわかります。

つまり英語だとたとえば「椅子」とか「学校」とかの日常語彙でもゼロから覚えていかなければなりませんが、中国語の場合「椅子」は「椅子」ですし、「学校」も「学校」です。発音は覚えなければなりませんが、本などを読む場合、日本人なら楽々クリアできる単語が大量にあるのです。

これは単語を覚えていく時のハードルが低いことを意味し、この点で言うなら「中国語は学ぶのに易しい」言葉です。

ただ落とし穴が一つあります。

昔の日本人は中国語はまったく話せませんでしたが、漢籍…中国語で書かれた書物は、返り点などの工夫によって楽に読みこなすことができました。

つまり漢字で書かれた中国語は日本人にとって読むのに楽な言葉なのです。ただし「よく読める」は「よく話せる」「よく聞き取れる」とイコールではないことを肝に銘じておく必要があります。

中国語の「会話」は難しいか・やさしいか

会話力とはコミュニケーション力です。コミュニケーション力にはおおまかにいって(1)「人に伝える力」 (2)「人の話の意図を聞き取る力」 の2つがあります。ここではまず(1)について書き、(2)については次のリスニング力のところで書きましょう。

自分の言いたいことを人に伝える上で最も大切なのは「何を伝えたいのか」という自分の意思の問題です。これは母語の問題ですのでここでは話題にせず、次に「伝えたいことを中国語で述べる」力をつけるのは易しいか難しいかということですが、この力をつけるにはまず「中国語で言える短文を大量にインプットする」ことが大切です。

会話というのは「言いたいことが即座に口から出る」ということですので、そのためには、その一つながりの内容を構成する中国語短文が、口から即座に出るほどに大量に、かつ充分に練習しこなされた形で蓄積されていなければなりません。

旅行会話や簡単な日常会話ならばこの量はわずかで済み、目標が高くなるほど必要インプット量は増えます。つまり中国語会話力をつけるのは簡単かどうかという問題は、目標がどのへんにあるかによるということになります。

この「中国語短文をインプットする…すぐ口をついて出るほど何度も暗記する」勉強は辛いと言えば辛いですが、この勉強こそが外国語学習のだいご味と言えばだいご味です。熱心に取り組めば目に見えて会話力がついていきますので、これを通してだんだん中国語学習の深みにはまっていくかもしれません。

中国語の「リスニング」は難しいか・やさしいか

日本で学習する中国語学習者にとって一番のネックがこれです。語彙力のところでも書きましたが、目で見て即座にわかる言葉はよく知っている言葉と錯覚しがちです。先ほどの「椅子」や「学校」は発音記号で書けば「yǐzi」(イーズ)、「xuéxiào」(シュエシアオ)です。「椅子」や「学校」は一目瞭然でも、「イーズ」や「シュエシアオ」では何のことやらさっぱりわかりません。

ここが日本人学習者の泣き所です。長所が弱みになるのです。

中国に行けばこのさっぱりわからない音の中で暮らすわけですから、音の意味を知るのに必死にならざるを得ません。これが中国留学の大きなメリットです。

つまりリスニング力というものは、日本にいて身につけようというならかなり意識してやらないとなかなか難しいということです。

中国語の「読解」は難しいか・やさしいか

中国語の文法はそう難しくない、語彙の基本は日中同じということになれば、書かれている文章を読むのは英語に比べればずっと易しくなります。

昔の日本人のように話す・聞くはだめでも、本や新聞、ネットの文章が読めればよいということであれば、中国語学習はそんなに大変ではありません。

決め手は語彙力なので、一定量の単語を覚えると同時に、よくわからない漢字一つ一つの意味を調べるという手間をかければ、読書も楽しめるでしょう。