中国語通訳という仕事 【業務内容・報酬・通訳になるためには】

中国語通訳

このページでは、中国語の通訳の種類(技能)、通訳の仕事内容、収入、通訳になるための方法、通訳の向き不向きなどについて紹介します。

中国語通訳とは

中国語通訳とは日本人と中国人の間に立って、日本語を聞いたらそれを中国語にして伝え、中国語を聞いたらそれを日本語にして伝え、両者のコミュニケーションを図る仕事、またはその仕事に従事する人のことです。

通訳の技能

通訳の技能に同時通訳と逐次通訳があります。同時通訳とはある言語を瞬時に別な言語に通訳することで、通訳時間のロスが減りますので便利ではありますが、難易度の高い通訳です。逐次通訳とはある言語による話を途中で切りながら、別の言語に通訳することです。同時通訳に比べて難易度は下がりますが、ある程度の長さの話を記憶しておく必要があり、また通訳分の時間的ロスが発生するなどのマイナス面があります。

一般に同時通訳は国際会議などの通訳に使われ、逐次通訳はそれ以外のさまざまな場面で使われますが、逐次通訳者として仕事をしていても、たとえば工場内で仕事内容のビデオを流された時などにはそれを同時で通訳したり、大勢の日本人への説明の場に中国人を一人案内した場合、耳元で同時通訳(これをウィスパリング…ささやき…と言います)をすることもあります。

中国語通訳の業務内容

中国語通訳の業務・仕事の中身については

・国際会議などの同時通訳

・テレビのニュースなどの放送通訳

・専門業務に関する通訳

・法廷通訳

・医療通訳

・代表団に随行する通訳

・観光案内に付随する通訳

・ボランティア通訳

など多岐にわたります。これらのおおよその通訳業務について簡単に説明しましょう。

国際会議などの同時通訳

日中2か国または日本を含めた数か国が集まる会議で行う同時通訳業務のことです。通常会議場の中に小さなブース(小部屋)があり、ここにはガラス窓がついていて会場の発言者の様子を見ることができます。また音が入ってきたり漏れたりしない密閉空間になっていて、音はマイクやイヤフォンを通して流れます。発言者のマイクを通した音は通訳者のヘッドフォンから入り、通訳者の通訳音声は会議場の人々のヘッドフォンを通して耳に入るようになっています。

通訳形式は「同時通訳」で、これは耳に入ってきた言語を瞬時にもう一つの言語に通訳していく通訳です。日本語と中国語では語順が異なりますから、瞬時に通訳していくのはかなり難しいですがこれをやりとげ、なお大勢の聴衆の耳にわかりやすい日本語を届けるのですから高い通訳力が求められます。

テレビのニュースなどの放送通訳

中国語のニュース音声に日本語の同時通訳をかぶせていく番組がありますが、あのときの通訳が放送通訳です。中国語のニュース画像・音声は事前に与えられ、それを日本語に翻訳し、番組ディレクターなどがその日本語を修正した上で画像と音声に合わせて流していきます。一般には会議通訳・同時通訳など高い技量を持った通訳者がこうした仕事を依頼されています。

専門業務に関する通訳

企業内の業務に関する通訳です。普通は外部のフリーランス通訳者に委託するのではなく、企業内の日本人スタッフが業務に携わりながら通訳業務も行います。その場合通訳の技量はあまり高くないことが多く(中検3級レベルくらい)、それ以上のレベルの通訳が必要な時は通訳・翻訳を主な業務とする中国人スタッフが担当したり、フリーランス通訳に依頼したりします。

法廷通訳

中国人被疑者が裁判にかけられた時に行う通訳です。中国人被疑者には重い地方なまりがあることが多く、また通訳の誤解や間違いは判決に直接かかわるので非常に難しい通訳です。厳しい判決が出た場合恨まれたりすることもあると聞きます。年々国際化が進む中で高い技能を持つ法廷通訳者の養成が求められています。

医療通訳

今中国の富裕層の間では日本で医療を受けることが一種のブームになっていると聞きます。中国の医療システムの不備もあってこの傾向はこれからも続いていきそうです。ただしこの通訳も誤訳は命にかかわってきますので高い技能が必要です。

代表団に随行する通訳

今から約20年ほど前、21世紀の入り口あたりまで、中国人の来日は訪日団・視察団など日本側のインビテーション(招待状)を持つ代表団に限られたいたと言っても過言ではありません。今でもこうした代表団の派遣による訪日は各業界で行われていると思います。これに随行する通訳は一般にフリーランス通訳者に依頼され、代表団と行動を共にして、その日程にあるさまざまな交流行事に付き添います。通訳業務としては、空港への出迎え、歓迎宴会でのスピーチや宴席での通訳、表敬訪問通訳、各種業務通訳、さまざまな施設や観光地案内、見送りなど多岐にわたります。通訳として必要な業務のオンパレードと言ってもいいかもしれません。難易度は代表団のレベルによりますが(国家派遣か民間派遣かなど)、日夜生活を共にして気心がわかりますので、その日初めて出会った人と行う業務通訳などよりはやりやすいかもしれません。

観光ガイドに付随する通訳

現在たくさんの中国人が日本観光に訪れていますが、その際中国語によるガイドが必要になってきます。この仕事は日本の事柄を中国語で説明するので通訳とは言えませんが、まず日本語である程度の原稿を作りそれを中国語に直して説明する、あるいは中国人観光客から質問が出た場合、それを観光地の日本人に聞いてそれを通訳するなどある種の通訳能力が必要になってきます。観光客は仕事ではなく遊びに来ているので多少へたな中国語でもそう問題にはなりませんが、人を楽しませる必要があるので業務通訳とは違った難しさがあります。

ボランティア通訳

各地方自治体には通訳ボランティアの募集がいろいろあります。オリンピックや民間団体による国際会議、さらには観光案内業務でも無料でガイドをしてくれるボランティアが求められることもあります。通訳業務にはまだ自信がない時はこうしたボランティアで経験を重ねることもいいかもしれません。ただしこれはもろ刃のやいばでもあって、通訳の場でボランティアが増えれば増えるほど通訳の仕事は減るというジレンマがあります。通訳は経験がものをいう世界なので、お金にならない仕事をしない限りレベルアップはできないとなると、家族の支援がある人しかめざせないことになります。通訳者には女性が多く男性が少ないのはまさにそうした傾向を物語っています。

中国語通訳になるための勉強法と教室

通訳になるためには二つの方法があって、一つはもともと高い日本語能力を持っている人が長年中国で暮らすなどして母語に近い中国語能力を身につけること。こうして二つの言語に熟達した人は特別な勉強をしなくても通訳になれる潜在力を持っています。経験を重ねることですぐれた通訳者になりえます。

もう一つは専門の学校に通って訓練すること。この場合も中国語以前に高い日本語能力があり、さらに中国留学などを通して高いリスニング力を持っていることが条件になるだろうと思います。というのは日本人に求められる通訳能力は一般に中国語から日本語であって、中国語を聞き取れるかどうかが重要なポイントだからです。

中国に留学するチャンスがなく、それでも中国語通訳になりたい場合はかなり厳しいレッスンが必要になるでしょう。大量の中国語短文のインプット・日中両語の短文置き換え練習…つまり日本語を聞いたら瞬時に中国語にする、中国語を聞いたら瞬時に日本語にするという練習・最低1万語の単語量・スピーチなど型のある文章や実際の通訳の現場で使われた文章を使った練習などをしていきます。こうした訓練は通訳になった後もこの仕事を続ける限り必要になります。

中国語通訳の仕事と報酬

中国語のフリーランス通訳の仕事は通訳派遣会社に登録し、そこからの仕事の依頼を待つのが基本です。またクライアント(通訳を頼んできた人や会社)に仕事ぶりが気に入られれば次の仕事に結びついたりします。基本人脈が大切な世界です。そういう意味では仕事を探す際の透明性はあまりないと言っていいでしょう。

通訳の報酬はさまざまです。私が以前やっていた時の報酬は、業務通訳で半日3万円、全日6万円、代表団随行通訳や観光ガイド通訳は1日3万円程度でした。また観光の通訳ガイドは最近どんどん安くなっていて、ひどい場合は1日1万円という話も聞きます。

中国語通訳に向く人・向かない人

どんな仕事もそうですが、通訳という仕事にも向き不向きがあります。中国語通訳(日本人)の場合、一番大切なのは高い日本語能力とリスニング能力を兼ね備えていることです。高い日本語力がないと聞き取れても充分伝えることができません。逆に聞き取れなければ高い日本語力も力を発揮できません。この二つが充分な人は通訳向き、不充分な人は不向きだと言えるでしょう。また通訳に失敗はつきものです。心臓の強い人は通訳向き、挫折に弱い人は不向きです。

通訳の喜びと今後

以前中国に行った時入ったデパートで、日本人の親子が日本語で一生けん命デパートのスタッフに話しかけていました。「絵本を買いたいの。え・ほ・ん」…ゆっくり話せば日本語でも通じると思ったのでしょうか?相手は目を白黒させて困っていました。

そこで「通訳しましょうか」と声をかけたらとてもとても喜んでくれました。売り場まで来てほしいと言われましたが、この日は早じまいだとデパートのスタッフに言われそこで別れました。

あの時の日本人親子の喜びようは忘れられません。ああ通訳って本当に必要なんだ、としみじみ思ったことでした。

今このくらいの内容でしたらスマホアプリが解決してくれるかもしれません。そしてどんどんそういう方向に技術は進化していき、いずれ通訳という仕事は人間の手を離れるでしょう。それまであと30年もかからないかもしれません。

それを考えると仕事としての通訳の将来性には疑問符がつきます。もちろん通訳になれるくらいの中国語力を持っていれば、今の中国の勢いを見ていれば今後さまざまな可能性が広がることでしょう。通訳をめざす勉強はいずれ必ず生かされることは確かだと思います。