月下老人

月下老人

月下老人

唐の時代に韋固(い・こ)という人がいました。ある時宋城に旅をし、南店という宿に泊まろうと入っていくと、店先で一人の老人が袋にもたれて座っています。老人は書き物をめくって何かをさがしている様子。なんだろうと思って近づき「何を見ているのですか」と尋ねると、老人は「誰が誰と結婚するか書いてある名簿を見ているのだ」と答えます。「背中の袋には何が入っているのですか」とまた尋ねると「赤いひもが入っている。これで夫婦双方の足を結んでおけば、たとえこの男女が敵どうしであっても、またお互いが如何に遠いところに離れて暮らしていようと、二人は必ず結婚することになるのだ」と言います。

韋固は市場で幼女に会う

韋固はそんなことを聞いてもとても信じられません。とはいえ自分の将来は気になります。それを聞こうと思っていると、老人は体を起こし名簿を持ち、袋を背負って市場に向かって歩いていってしまいました。韋固があとをつけていくと、向こうから三歳くらいの幼女を抱いた盲目の女がやってきます。老人は韋固に「この女の腕の中の幼女こそお前の未来の妻だ」と言います。韋固は腹を立てました。きっと自分にふさわしい妻は目のさめるような美女だなんて思っていたんでしょうね。こんな貧し気な女の子供なんて冗談じゃない!そしてなんと自分の従僕にその女の子を殺すよう命じたのです。ひどい奴ですね!

14年の年月が流れ…

従僕は少女を刺すや一目散に逃げていってしまいました。韋固はかの老人もやっつけてやろうと探すのですがすでにどこにも見当たりません。それから瞬く間に14年の月日が流れ、韋固は相州の長官王泰の令嬢と結婚をしました。結婚したのち、韋固は夫人の眉間に一筋の傷跡があるのを見つけます。わけを尋ねると14年前宋城で乳母に抱かれて市場に行った時、何者かに突然刃物で刺されたのだと言います。韋固はひどく驚き、14年前のできごとを妻と岳父王泰に打ち明けました。この奥さん、離婚を考えなかったんでしょうか?だってひどい男じゃないですか。

自分たちの縁に感謝

こうして彼は初めて、あの時老人が言った話は本当だったことに気づいたのです。結婚の縁というのは本当にずっと前から定まっており、あの老人はまさに結婚をつかさどる神様だったのだ、と。こののち韋固と夫人は前世からの定めである自分たちの縁に感謝し、幸せな日々を送ったそうです。きっと平謝りに謝ったんでしょうね。

南店は定婚店に

その後この話は宋城の長官の耳にも届き、「南店」という旅館の名を「定婚店」に換えたということです。

覚えたい中国語

月下老人 yuèxià lǎorén(月下老人…縁結びの神様)

月下老人は縁結びの神様