伏羲(伏犠)

伏羲(伏犠)

伏羲ふっき伏羲ふくぎ伏犠ふっき庖犠ほうぎ包犠ほうぎとも言われています)は女媧じょかとともに人類の始祖として中国の神話の中で伝わっています。神話の中での伏犠は女媧ほど語られてはおらずやや断片的です。

伏羲とは

伏羲は人間界と天界の間に住む一人の美しい娘が、雷沢のほとりを歩いている時に大きな足跡を踏み、その後産んだ神です。伏羲は、「蛇身人首(頭が人で体が蛇)」や「龍身人首(頭が人で体が龍)」の姿をしています。伏羲と女媧は兄妹とも夫婦とも言われていますが、どちらも神であり、天梯を自由に上り下りすることができました。

天梯とは地面から天に伸びている梯子のことではなく、要するに山や木を伝って天庭に昇っていくのです。こうした場所を知り、こうしたことができるのは神人と仙人、それに巫師の三者だけでした。

この伏羲について、『史記』(司馬遷)では触れられていませんが、『史記』の三大注釈書の一つである『史記索隠』を著した司馬貞が「三皇本紀」を『史記』に補筆し、その中で触れられています。

伏羲と女媧の関係

漢代の石刻画などには、人首蛇身の伏羲と女媧が描かれています。この時代伏羲と女媧は夫婦と見られていたのでしょう。苗(ミャオ)族など南方の少数民族の間では伏羲と女媧は実の兄妹であると同時に夫婦とされています。大洪水があった時この兄弟はヒョウタンに隠れて命拾いをします。他の人間はみな亡くなってしまい、この二人だけが生き残り、こうしてこの二人は人類再生の始祖となります。

人類の祖は女媧なのか、それとも伏羲と女媧なのか?

この二人(二神)が人類の祖であるなら、女媧造人の話はどうなるのでしょうか?女媧が一人で泥から人類を作れるなら伏羲は必要ありません。女媧の神話の方が先にあり、やがて伏羲と女媧二人の人類始祖の話が生まれてきたと言われます。それにしてもこの世界のあちこちに洪水伝説があるのは面白いことですね。

また伏羲は天地を創造した盤古のことではないかという説もあります。

伏羲がもたらしたもの

伏羲は中華民族の祖というだけでなく、さまざまな恩恵を中国文化にもたらしています。まず大自然の様相から八卦(はっけ。易における8つの基本図)を考え出し、文字を作り、網によって魚を捕ることを人間に教えたと『易経』に書かれています。易経は儒教の基本経典ですが、この易経そのものが伏羲によって書かれ孔子が完成させたと言われています。伏羲はまた楽器を作り歌謡も作りました。伏羲という神様は万能の天才ですね。

伏羲の娘

伏羲の娘に宓妃(ふっき)がいます。大変美しい娘でしたが洛水(黄河の支流の一つ。陝西省洛南から河南省に入りやがて黄河に注ぐ)を渡っている時に溺れて亡くなってしまいます。のちに洛水の女神になります。宓妃はまた水神である河伯の妻でもあります。宓妃の美しさは屈原(中国の端午の節句はこの詩人の死を悼む日)や曹植(曹操の五男。詩聖と称される)など詩人によって歌われています。面白いことに宓妃は伏羲の娘とは言われますが、女媧の娘とは言われていません。

太昊陵(伏羲を祀る廟)には今も大勢の人が

伏羲の廟は河南省淮(わい)陽県にあり、国の重要文化財になっています。ここは春秋時代、つまり紀元前に創建され、中国王朝歴代の帝王が数多く訪れています。ここで開かれる廟会(びょうえ)は数千年の歴史があり無形文化財に指定されています。この廟会は毎年旧暦の2月から3月にかけて行われ、一日に八十万人を超える人が訪れるそうです。