日本の宴会と中国の宴会の違い 乾杯やお酒の習慣、マナーなど
中国人との付き合いで欠かせないものの一つは宴会です。宴会は日本にだってありますからたいして変わらないと思うかもしれませんが、似ているようで違うところがたくさんあります。
このページでは、中国の宴会の習慣や、中国語による「乾杯」などの表現について紹介していきます。
中国語による食事の場面の挨拶については「中国語で「いただきます」「ごちそうさま」などの食事の挨拶」のページで紹介しています。
中国語の挨拶全般に関しては「中国語の挨拶160」のページにまとめてあります。
目次
宴会の最初の挨拶
まずは集まって簡単な挨拶、これは日中とも同じ、話のつまらなさも一般には同じです。日中両国人が集まっての宴席ですと、挨拶のパターンもほぼ決まっているので、通訳養成教室での通訳練習はまずこれから覚えていくほどです。日中とももう少しジョークセンスを磨いた方がいいと思うのですが…。
中国の乾杯は一気飲み
次に乾杯。中国の乾杯は、互いの健康や事業の発展を祝して「杯を干す」、つまり日本で言う「一気飲み」です。中国語では“干杯gānbēi”と書きます。日本の乾杯は同じく互いに祝福し合って「杯をぶつけること」、中国語で言う“碰杯pèngbēi”(杯をぶつける、という意味)です。飲み干す必要はありません。
中国での本当の乾杯とは飲み干すこと
最近の中国の宴会やパーテイでは、みんな一緒にやる「乾杯」の場では日本のような“碰杯”も増えていて必ずしも飲み干す必要はなくなっているようです。それでも中国における「本当の乾杯」は「飲み干すこと」であることに変わりはありません。
中国では飲み干すことが敬意を表す
そうした「乾杯」はどんなふうにやるかというと、宴たけなわになった頃、グラスを抱えてお世話になっている相手、あるいはお世話になりそうな相手のところに行き、「敬意を表してまずは一杯」(“敬你一杯”)と言いながら自分のグラスを一気に飲み干します。「飲み干す」ことで敬意を表すのです。自分のグラスが空だったらテーブルの上のお酒を手酌でついでかまいません。
敬意を表された相手もともに飲み干す
敬意を表された相手は黙って見ていてはいけません。一緒に自分もグラスのお酒を飲み干します。そうでないと相手の敬意を一方的に受けているだけ…偉そうな感じになってしまいます。相手が敬意を表してくれたら、こちらも相手に敬意を表すのです。
日本は相手についであげることが敬意
これが日本ですと相手の席に移動して、「おひとつどうぞ」と言っておちょこにお酒をついであげるんですね。すると相手は「いやあ、これはこれは」と言って飲み干し、今度は先についでくれた相手に「では一杯」とかなんとか言ってついであげる。つまり日本では「相手の杯にお酒をついであげる」ことが敬意の表れなわけです。中国では「相手の前で飲み干す」ことが敬意の表れで、そのポイントは「飲み干す」ことなのです。
飲み干すお酒のアルコール度
中国では「飲み干す」がいかに大事かがわかります。でその一気飲みのお酒のアルコールはいかほどかというと、宴席では一般に“白酒”という蒸留酒が出されますから大変です。最低でも40度近くあります。私が以前おみやげにいただいた白酒は「五糧液」と言って四川省の名酒ですが60度でした。お酒を飲まない私はこのお酒の価値がわからず周囲にわかる人もいず、お料理にちょっと使ったくらいで結局は処分してしまいました。実は飲むと口に香りが広がるすばらしいお酒だそうです。まったく猫に小判でした…(くださった方ごめんなさい)
中国駐在員は肝臓を壊す
こういうアルコール度の高いお酒で一気飲みをするんですから、日本の駐在員は大変です。中国に駐在していて肝臓を壊したという話はよく聞きます。こういうお酒で宴会をする中国人はお酒が相当強いのかというと、やはり人それぞれのようです。お酒に自信のない人はお酒を飲む前にちゃんと食べておくとか、おしぼりなどに少しずつお酒をこぼしておくとかして自衛するという話を聞いたことがあります。日本人は飲む前にちゃんとものをお腹に入れておかないからすぐ酔ってしまう、という話も聞きました。
中国では宴席で酔いつぶれるのは大NG!
私が見た日中混合の宴会でこういう強いお酒が出された場合、1時間も経たないうちに日本側はおおよそみなつぶれてしまいます。中国側は全員しゃんとしています。それもそのはず、中国でお酒の席で酔いつぶれるのはタブーです。すごくみっともないことで、後々まで「あの人はね…」と言われてしまいます。これも日本とは大違いですね。日本でお酒の席での見苦しいふるまいは大目に見てもらえますから。
マイペースで飲む人と酔いつぶれるまで飲む人
お酒に弱い人はどうしたらいいのか?飲めませんと逃げまくるか?マイペースでいくか?最近はマイペースも許されているようですが、ただやはり豪快に乾杯をやらないと本当の意味での仲良しにはなれないようです。要するに「腹を割って付き合おうとしないヤツだ」認定されてしまうのです。飲めない日本人が頑張って飲んで酔いつぶれ寝込んでしまったのを、周りの中国人が「コイツ良い奴だなあ」という目で見ていたなんていう話を聞いたことがあります。ポイントは心なんでしょうね。「知らんよ、自分は自分だ」というオーラと、「仲良くなりたいんだ」というオーラとでは当然後者が好かれるわけです。
宴席では「みんなと仲良くなりたいんだ」オーラが大切
もっとも以上の話は基本男性で女性はまた別だと思います。ただ夫婦で宴席に出て、ご主人はマイペース型、周りの空気に知らんぷりのご主人に「なんだかなあ」と思った奥さんが一生懸命みんなとお酒を酌み交わすと、みんなは大喜びだったという話を聞いたことがあります。こちらも「みんなと仲良くなりたいんだ」オーラがみなの心を打ったということでしょう。
ホントに飲めない時
だからお酒が飲めなくてジュースだけでもポイントはこの心でしょう。どうしてもお酒はダメな場合“以茶代酒yǐ chá dài jiǔ”(お酒の代わりにお茶で)などという言い方もあります。“对酒过敏duì jiǔ guòmǐn”(アルコールアレルギーなんです)なんていう逃げ方もあります。ちなみにまったくの下戸(げこ)の場合“我不会喝酒 Wǒ bù huì hē jiǔ”(お酒は一滴もダメなんです)と言います。“会”という助動詞の代わりに“能”という助動詞を使い、“我能喝酒Wǒ néng hē jiǔ”と言うと「私はかなりイケル口です」となってしまいます。
もてなす料理はアツアツのものをたっぷり
さて以上お酒について長々書きましたが、次に料理です。中国の宴会でもてなす側の原則は料理はたっぷり、大盤振る舞いです。日本人がもてなす側の場合、おいしいものを品よくちょっとずつなんて考えがちですが、相手が中国人の場合これは通じにくいです。アツアツの料理を大皿一杯、その大皿をテーブルの上所せましと並べまくる、これが基本です。おいしそうなところを相手の取り皿に取ってやり、みんなでワイワイガヤガヤ大声でしゃべりながらムシャムシャと食らう、これが基本です。楽しそうで美味そうでしょう?
中国ではけち臭いのはNG
大事なのはけち臭くならないこと。これ、日本文化を知らない中国人に対してはとても大事だと思います。「もてなす」「ご馳走する」という言葉を使う以上けち臭いのはNGです。相手が外国を知っている知識層などの場合また別かもしれませんが。
もてなされるのが日本人の場合
もてなされる側が日本人の場合、中国人に比べると食が細い人が多いし、ムシャムシャ食らうという食べ方はちょっとね…という人も多いことでしょう。この場合も大事なのは心でしょう。もてなされることに感謝の心があれば食が細くても嫌がられることはないと思います。量が多すぎて食べきれない、と言えばもてなしてくれた相手のメンツを立てることにもなります。
宴会での支払いは?
さて最後に支払いですが、これは当然もてなしてくれた側が払います。万に一つも割り勘はありません。もちろん今回相手がもてなしてくれたなら次は自分がもてなす側になるわけで大きな意味では割り勘ですが、1回の食事の際日本のように1円単位まで割り勘にするなんてことはまず絶対にありません。最近日本の企業ではお得意さんなどを宴席に招いた際、「ご馳走になりました」サインを相手方からもらう、という話を聞いたことがあります。これを経理に渡すんだそうです。この話をしてくれた友人に、そんなことしてお客さん、気を悪くしないの?と聞くと、相手企業も同じようにやっている、よくわかっているから大丈夫なんだとか。このやり方ですと賄賂や不正の入るスキなどまったくないでしょうが、中国社会では絶対に広まらないだろうなと思います。