中国の「神話」「伝説」「物語」
中国人なら誰でも知っている物語
桃太郎・金太郎・浦島太郎が出てくるケータイ電話のコマーシャルご存知ですね。あれの感想を中国人留学生に聞いても首をかしげます。あのコマーシャルが成り立つのは、日本人なら、あるいは日本で育った外国人なら誰でも知っているということが前提にあるからです。知らなければ、なんであんな恰好をしているのかなあとボンヤリ眺めるばかりでしょう。
こうした国民的常識というのはどこの国にもあります。人は常識にもたれて会話をするのです。この常識を共有していないと会話には参加できません。そうした意味で「中国人なら誰でも知っている物語」は中国語学習者にとって不可欠と言っていいでしょう。
日本人なら誰でも知っている物語は枚挙にいとまがありません。先にあげた三太郎以外にも一寸法師やかぐや姫、織田信長や豊臣秀吉、新選組など歴史上の英雄たち…ではこの逆、中国人なら誰でも知っている物語にはどんなものがあるのでしょうか?それをこれからご紹介していきたいと思います。
中国のテレビドラマを見ていると、こうした物語を知らないと何のことやらさっぱりわからない話が出てきます。
「あの人ったら自分を西王母だとでも思っているのかしら」
「彼女のご主人て典型的な陳士美ね」…
この「中国の物語」のコーナーでこうした物語にちょっと触れておくと、こうした会話を見聞きしても「ああ、あの話か」とピンとくることでしょう。ぜひこうしたピンとくる知識をここで増やしてください。
また、日本語の「故事成語」の中には、中国の物語が由来となっているものが数多くあります。「故事成語」ではそれらについて一つ一つに歴史地図を作って、年表・参考画像などとともに紹介しています。
中国の物語一覧
桃花源記は4~5世紀に陶潜(とうせん)によって書かれた物語です。桃源郷の元となった話です。道に迷った漁師がたどり着いた先には、桃の花が咲く美しい光景が広がっていました。
花木蘭は病弱な父の代わりに戦場に赴いて活躍した女将軍の話です。ディズニーで映画化したことによって世界的に有名になりました。
千年生きた白蛇が人間となって青年と出会います。日本でアニメにもなっており、宮崎駿監督がこのアニメを見て東映動画に入社した話が有名です。
長生殿は玄宗皇帝と楊貴妃の物語を戯曲化したものです。建物の名前でもあります。
覇王別姫は西楚の覇王項羽と、虞美人の別れの場面を描いた京劇の代表演目です。
牡丹亭は昆曲の代表的な演目です。自画像を残し幽霊となった女性の話です。
嫦娥(じょうが)は月の仙女として知られています。嫦娥は夫が西王母からもらった不老不死の薬を一人で飲んでしまい、月で暮らすことになります。
西王母は最高位の女神であり、仙女たちや、食べると不老不死になれると言われる桃園を管理しています。紀元前に書かれた書物では恐ろしい姿として描かれていますが、3~6世紀ごろには美しい女神として描かれ方が変わりました。
麻姑は絵画や物語の中で西王母とともにえがかれることの多い仙女で、西王母に美酒を贈り、西王母から桃を授かるシーンが有名です。
媽祖は1000年以上前の実在の人物ですが、数々の伝説を残し、現在では海の女神として祭られています。船旅をする人たちが安全祈願のために媽祖像を船に乗せていました。
月下老人は縁結びの神様です。唐の時代、ある老人が韋固という男の結婚相手を予言しますが、これに韋固が腹を立ててしまいます。
盤古は中国の神話に出てくる創世の神です。1万8千年もの間、天地を支え広げました。
伏羲と女媧は兄妹とも夫婦ともされ、人類の始祖とされています。
女媧は人類の創造と天地の修復を行ったとされる中国の女神です。
神農は三皇五帝のうちの一人で、中国では農業や医薬の神とされています。
黄帝は『史記』の五帝本紀の最初に出てくる帝王です。中国では人々が自らをこの黄帝の子孫と名乗ることがあります。
陳士美は秦香蓮の夫ですが、出世した後、秦香蓮のことを捨ててしまいます。その後、包拯(包公)によって、陳士美は断罪されることになります。