蘇軾

蘇軾

蘇軾(そ・しょく…1036~1101)は宋を代表する詩人です。号を東坡(とうば)といい、蘇東坡としても知られています。

蘇軾とは

蘇軾は『七歩詩』の曹植と同様、家族3人みな高名な文人として文学史にその名を残しています。父蘇洵(そ・じゅん)は唐宋八大家(とうそう はちたいか…唐から宋にかけての高名な文人・韓愈、柳宗元、欧陽脩、蘇洵、蘇軾、蘇轍、曾鞏、王安石の8人のこと)の一人、弟蘇轍(そ・てつ)も唐宋八大家の一人であり、北宋で宰相の地位にまで上り詰めた政治家でもあります。この蘇家の父子3人は「三蘇」とも呼ばれています。

蘇軾もまた若くして科挙に合格し大臣を務めた人ですが、才能豊かな人でその書・詩・文すべて一流、さらには東坡肉(トンボーロウ…豚の角煮)という料理を編み出したと言われます。

ちなみにこの東坡肉、台湾の故宮博物館に『肉形石』として彫刻作品が展示されていて、どこから見てもホンモノそっくり、白菜の彫刻品とともに大人気です。

蘇軾

宋代の詩は唐代の情的な詩に比べて理性的、分析的と言われます。また唐代の詩に比べて日常的な小さな世界を詠う傾向があるとも言われます。

さて蘇軾の詩ですが、日本で有名なものとしては『春夜』(七言絶句)の第1句がよく知られています。では原文・書き下し文・現代語訳を下に挙げましょう。

『春夜』の原文

春宵一刻値千金

花有清香月有陰

歌管楼台声細細

鞦韆院落夜沈沈

『春夜』の書き下し文

春宵しゅんしょう一刻いっこくあたい千金せんきん

花に清香せいこう有り月に陰有り

歌管かかん楼台ろうだいこえ細細さいさい

鞦韆しゅうせん院落いんらくよる沈沈ちんちん

『春夜』の現代語訳

春の夜は短い時間も千金の価値がある

花の清らかな香りがただよい月はおぼろに霞んでいる

歌や音曲の聞こえていた楼台も今は静まり

ブランコが庭にのこされて夜は更けていく

美しい春の宵を詠った詩です。突然ブランコが出てきてびっくりしますが、ブランコは中国の北方に暮らした民族が発明したものだそうで、漢代には朝廷に取り入れられて皇帝の長寿を祈るものとなりました。そのころは「千秋」と呼ばれていましたが、朝廷と関わる言葉なので畏れ多く、後にこれをひっくり返して「秋千」と呼ぶようになり、やがて女官たちが清明節に遊ぶ道具となりました。この詩でもイメージとしては美しい女官たちが戯れていたブランコであって、子供たちが昼間遊んでいたブランコではありません。

この詩では難しい漢字が使われていますが、中国では今もブランコのことを「秋千」と呼びます。